認知された子の「遺産相続権」:既婚男性が将来亡くなった際の本妻の子との同等権

【本記事の監修者】
弁護士 井上 正人(大阪弁護士会所属 / 登録番号:第43449号 / 夕陽ヶ丘法律事務所 代表弁護士)
※本記事は、貞操権侵害(独身偽装被害)における不法行為責任(民法709条)、裁判例の慰謝料算定基準、および相手の妻からの不貞請求防御実務に基づきわかりやすく解説しています。

Q 独身と偽って交際していた既婚男性との間に子どもが生まれ、相手が認知をしました。将来、その男性が亡くなった場合、子どもにはどのような遺産相続権が発生するのでしょうか?本妻の子どもと比較して不利にならないか心配です。
A 法律上の「認知」がなされている場合、その子どもは父親に対して法律上の親子関係を持ちます。したがって、婚姻関係のない男女の間から生まれた子(非嫡出子)であっても、本妻との間の子ども(嫡出子)と全く同等の法的相続分を有します(民法900条)。

独身偽装交際や不貞関係の末に子どもが生まれ、父親がその子どもを「認知」したケースでは、将来の遺産相続を巡って深刻なトラブルに発展することが少なくありません。

1. 認知された子どもの法的地位と相続権の基本

既婚男性が独身と偽って交際し、生まれた子どもを認知した場合、その子どもは法律上どのような権利を持つのでしょうか。民法の規定に基づき、その基本を押さえておきましょう。

認知の効果と法律上の親子関係

父親が子どもを「認知」すると、父親と子どもの間に法律上の血縁関係(親子関係)が正式に発生します。

婚姻関係にない男女間に生まれた子ども(非嫡出子)であっても、認知されることによって、法律上の相続人としての資格(相続権)を得ることができます。

本妻の子ども(嫡出子)との同等性

かつては民法において、非嫡出子の相続分は嫡出子の相続分の2分の1とされていましたが、最高裁判所の違憲決定および民法改正(平成27年法律第94号)を経て、現在は嫡出子と非嫡出子の法定相続分は完全に同等となっています。

つまり、法律上は、本妻との間の子どもであっても、独身偽装交際の末に生まれた認知された子どもであっても、相続における権利の重みに違いはありません。

2. 具体的な相続割合(法定相続分)の計算方法

父親が亡くなった際の遺産分割において、認知された子どもが具体的にどの程度の割合を相続できるのか、典型的なケースを例に解説します。

基本的な法定相続分(民法第900条)

例えば、被相続人(父親)に以下の家族構成がある場合の法定相続分は以下の通りです。

  • 配偶者(本妻):2分の1
  • 子ども全員の合計:2分の1

この「子ども全員の合計2分の1」を、本妻との間の子どもの人数と、認知された子どもの人数で均等に分け合います。

具体例:本妻との子2人、認知された子1人の場合

  • 配偶者(本妻):2分の1
  • 本妻との子A:6分の1 (2分の1 × 1/3)
  • 本妻との子B:6分の1 (2分の1 × 1/3)
  • 認知された子C:6分の1 (2分の1 × 1/3)

このように、認知された子どもであっても、父親の実子である以上は、他の子どもたちと全く同じ割合で遺産を請求する権利を持っています。

3. 相続発生時に起こりやすい「ダブルトラブル」と懸念点

法的には同等の権利が認められているものの、実際に父親が亡くなった際、認知された子どもやその母親が直面する現実には多くのハードルが存在します。

本妻側との感情的対立と連絡の遮断

独身偽装交際の事実が発覚している場合、本妻側にとって認知された子どもの存在は寝耳に水であり、非常に大きな衝撃と怒りを伴うものです。

父親が亡くなった際、本妻側が遺産分割協議への参加を拒否したり、連絡を一切断ったりするケースが後を絶ちません。

遺産隠しや事後的な不利益の危険性

父親が存命中は経済的な援助(養育費など)を受けていたとしても、父親が亡くなった途端に、本妻側が遺産を隠したり、認知された子どもの存在を無視して遺産分割協議を進めてしまったりするリスクがあります。

法律上の権利があっても、それを適切に行使するための手続きを知らなければ、正当な相続分を受け取れないおそれがあります。

4. 将来の相続権を確実に守り、実現するための対策

認知された子どもが将来、正当な遺産相続権を行使し、自身の生活基盤を守るためには、生前から死後にかけて適切な法的手続きと対策を講じることが不可欠です。

認知届の確実な提出と戸籍の確認

まずは、父親によって子どもが確実に「認知」されているかどうかがすべての前提となります。

出生届と同時に、あるいは認知届(胎児認知または事後認知)が正式に受理され、子どもの戸籍に父親の名前が記載されているかを確認してください。

遺言書の活用

父親自身が、自身の死後に家族間の紛争を防ぎ、認知された子どもにもしっかりと財産を残したいと望む場合、遺言書(公正証書遺言など)を遺してもらうことが最も確実な対策となります。

遺言書によって特定の財産を遺贈・相続させる指定をしておくことで、遺産分割協議での無用な衝突を避ける助けになります。

弁護士による法的サポートの重要性

父親の逝去後、本妻側との交渉が必要になった場合、当事者間だけで話し合うことは精神的にも法的にも極めて困難です。専門的な知識と交渉力を持つ弁護士を代理人に立てることで、遺産分割協議や調停をスムーズに進めることが可能になります。

まとめ

認知された子どもには、本妻の子どもと全く同等の遺産相続権が法律上認められています。

しかし、独身偽装交際という複雑な背景が絡み合う事案では、相続の発生時に本妻側との深刻な感情的対立や連絡拒絶、遺産隠しといったトラブルが生じやすいのが実情です。法的に正当な相続分を確実に確保するためには、生前からの認知の確認や遺言書の活用はもちろんのこと、相続開始後も迅速に戸籍調査や遺産分割協議の対応を行う必要があります。複雑な相続問題や本妻側との交渉でお困りの際は、法的な専門知識を持つ弁護士へ早めにご相談ください。

弁護士 井上正人

この記事の監修

弁護士 井上 正人
(いのうえ まさと)

大阪弁護士会所属(登録番号:43449)
弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表

相続や遺産分割、借金問題、既婚者との男女トラブルなど、日常の不測の事態に直面した皆様の心理的なご負担を少しでも和らげ、円満な解決を導くためのサポートを徹底して行っています。どんな小さなお悩みでも、まずは当事務所の事務スタッフがLINEのチャットにて丁寧にお話をお伺いいたしますので、どうぞお気軽にご相談ください。

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