独身だと騙されて交際させられた挙句、相手の妻から寝耳に水の慰謝料請求を突きつけられる——。近年の相談現場において、こうした「ダブルトラブル」の被害が急増しています。
特に悪質なケースでは、妻側から高額な慰謝料だけでなく、「弁護士費用もそちらで全額負担しろ」と強要され、泣く泣く支払わされる方が後を絶ちます。
1. 妻へ支払わされた「弁護士費用」の法的性質とは
不貞行為(不倫)に基づく損害賠償請求において、裁判所が認める「弁護士費用」の扱いは特殊です。通常、裁判上の請求では、認められた慰謝料額の約10%程度が「弁護士費用相当額」として加算されるのが実務の傾向です。
しかし、今回のケースの背景には、そもそも男性が「独身である」と偽って交際・性交渉を重ねていたという重大なだまし討ち(貞操権侵害)が存在します。
被害者が直面する二重の経済的負担
- 被害女性は、男性の嘘によって不倫関係に引きずり込まれました。
- その結果、妻から「夫を奪った加害者」として扱われ、法的な紛争に巻き込まれました。
- 自分で弁護士を立てて抗弁する費用だけでなく、示談交渉の条件として「妻側の弁護士費用」まで肩代わりさせられた場合、これは完全に男性の欺瞞(ぎまん)行為によって発生させられた不法行為上の損害そのものです。
2. 求償金と「貞操権侵害に基づく損害賠償」の違い
通常、不貞行為は「共同不法行為」とされ、被害を受けた配偶者(妻)に対しては、不倫相手と夫の双方が連帯して全額の責任を負います。そのため、どちらか一方が全額を支払った場合、もう一方に対して自分の負担割合分を求める「求償権(きゅうしょうけん)」を行使できます。
しかし、独身偽装交際においては、構図が大きく異なります。
独身偽装交際における真の加害者は誰か
- 妻から見た表面上の責任:あなたと男性が共同で妻の平穏な婚姻生活を害した。
- 内実の真実:あなたは男性の「独身であるという嘘」の最大の被害者であり、不倫関係を主導し欺いたのは他ならぬ男性である。
したがって、あなたが妻に支払った金銭(慰謝料+妻の弁護士費用など)は、本来であれば「欺瞞に満ちた交際を強いられたことによる損害(貞操権侵害・不法行為)」として、全額を男性に対して賠償請求すべき性質のものです。
3. 弁護士費用を上乗せして請求するための実務アプローチ
妻への支払いを完了させた後、あるいは交渉を並行して行う中で、男性に対してこれらの支出を請求していくには、法的に緻密な構成が必要です。以下のステップで法的責任を追及します。
ステップ1:支払った費用の根拠と領収書の保全
- 妻側との間で交わした合意書(示談書・和解書)
- 妻側の弁護士を指定口座に振り込んだ際の振込明細
- これらの書類は、男性に対する損害賠償請求の動かぬ証拠となります。絶対に破棄せず保管してください。
ステップ2:民法709条に基づく損害賠償請求(求償+貞操権侵害)
- 単なる求償権の主張にとどめず、「被告(男性)の独身偽装の不法行為(民法709条)によって、本来支払う必要のなかった慰謝料および弁護士費用を余儀なく支出させられた」という構成で請求書(内容証明郵便)を送達します。
- 判例実務上も、加害者の詐術によって被害者が被った経済的損失(紛争対処費用を含む)は、不法行為と相当因果関係のある損害として認められる余地があります。
ステップ3:法的プレッシャーをかけた交渉・訴訟提起
- 男性が「自分も妻に払っているから関係ない」「弁護士費用まで払ういわれはない」と逃避的な態度をとる場合、法的な請求書のドラフト作成や、弁護士名義での法的督促を通じて、裁判に発展した場合のリスク(遅延損害金や追加の弁護士費用の負担)を直視させます。
まとめ:泣き寝入りせず適切な法的アプローチを
独身だと騙されて心身を傷つけられた上に、予期せぬ妻からの請求、さらには相手の弁護士費用まで負担させられるという二重・三重の苦しみは、決してあなたが背負うべきものではありません。
妻への支払いに応じた後であっても、独身偽装を行った男性に対しては、貞操権侵害や不法行為に基づく損害賠償として、支払った慰謝料や弁護士費用を上乗せして請求できる法的道筋があります。「自分が支払ったお金は、あの男に全額請求できるのだろうか」「示談書の条項に不備がないか不安だ」と感じたときは、一人で抱え込まずに専門家へ相談し、適切な証拠を揃えた上で正当な金銭的負担の回収を目指しましょう。