不貞行為のトラブルにおいて、配偶者や関係者が責任逃れのために突然海外赴任や単身での海外逃亡(高飛び)を図るケースが散見されます。残された側としては「海外に行ってしまったら連絡がつかない」「慰謝料を全額支払わされるのではないか」と非常に大きな不安を抱えることになります。
本記事では、海外逃亡した不倫夫に対して、日本国内に残された資産からどのように求償や差押えを行っていくべきか、法的な実務の観点から詳しく解説します。
1. 海外逃亡した夫に対する法的責任と「求償」の仕組み
不貞行為は、夫婦の共同生活の平和を害する不法行為(民法709条)です。これによって妻が受けた精神的苦痛に対しては、不倫をした夫と相手の女性(または男性)が共同不法行為者として連帯して慰謝料を支払う義務を負います。
内部負担割合に応じた求償権
連帯債務の関係にあるため、被害者である妻は夫または不倫相手のどちらに対しても全額の慰謝料を請求できます。しかし、最終的な負担(内部負担割合)については、夫婦関係を破綻させた主たる責任がどちらにあるか等によって分かれます。
- 不倫を主導した夫の負担割合が大きいケース
- 相手が独身を偽って巧妙に夫を誘惑したケース(貞操権侵害や騙された側面がある場合)
妻が不倫相手から全額の慰謝料を受け取った場合、あるいは不倫相手が全額を支払った場合、不倫相手は夫に対して自己の負担部分を超える金額について求償権(返還請求権)を行使することができます。また、妻自身が夫に対して離婚に伴う財産分与や慰謝料請求を行う場面でも、国内資産の確保が極めて重要となります。
2. 日本国内に残された資産の特定と保全
夫が海外に逃亡したからといって、国内の資産が自然になくなるわけではありません。多くの場合、銀行口座や不動産、勤務先からの退職金などがそのまま残されています。これらをいかに迅速に差し押さえるかが勝負となります。
差し押さえの対象となる国内資産の例
夫が海外へ行った直後であっても、以下のような国内資産は強制執行の対象になります。
- 国内の銀行預貯金口座:給与の振込口座や貯蓄用口座に残高がある場合、預金債権の差押えを行います。
- 不動産(自宅やマンション):夫名義の持ち家や土地がある場合、競売を申し立てるための差押え登記を検討します。
- 退職金・給与債権:国内の勤務先がまだ籍を有している場合、将来発生する退職金や未払い給与に対する差押えが有効です。
財産開示手続や第三者からの情報取得手続
夫の国内資産の全容が不明な場合であっても、弁護士会照会(185条照会)や民事執行法に定める「第三者からの情報取得手続」を活用することで、国内の金融機関における口座情報や不動産、勤務先に関する情報を法的に取得することが可能です。これにより、逃亡後であっても隠された資産を特定できるケースが多くあります。
3. 海外にいる夫への送達と実務上の留意点
国内の資産に対して強制執行を行うためには、原則として夫に対して裁判所の命令や訴状、調停申立書などの法的な書面が「送達」されている必要があります。
- 海外に居住地(居所)が判明している場合は、外交ルート(外務省を経由した嘱託送達)や郵便送達を利用します。
- 居所が不明であっても、日本国内の最後の住所地に宛てた公示送達の手続きを進めることで、法的な手続きを進行できる場合があります。
海外にいるからといって泣き寝入りする必要はありません。連絡が取れない状況を悪用されないよう、専門家の力を借りて適切な法的ステップを踏むことが不可欠です。
4. ダブルトラブル(不当な請求)を防ぐための弁護士の役割
不倫夫が海外に逃げた場合、残された妻に対して不倫相手が「夫に騙されていた」「自分も被害者だ」と主張し、高額な慰謝料を押し付けてくるケース(いわゆるダブルトラブル)が多発します。
弁護士や専門家を活用することで、以下のような多角的なアプローチが可能となります。
- 不当な高額請求からの防御:不倫相手からの過剰な請求に対し、法的根拠に基づいた減額交渉を行います。
- 国内資産の優先的確保:夫の海外逃亡に惑わされず、日本国内に残された資産からの回収・求償の道筋を立てます。
- トータルサポート:離婚手続き、財産分与、慰謝料請求、そして海外逃亡夫への対応まで、一貫した代理人業務を提供します。
夫の海外逃亡や国内資産の差押え、求償問題でお悩みの方は、一人で抱え込まず早めに専門家へご相談ください。