相手の妻との交渉〜不倫夫への求償金回収までのトータル期間(約3〜6ヶ月)

【本記事の監修者】
弁護士 井上 正人(大阪弁護士会所属 / 登録番号:第43449号 / 夕陽ヶ丘法律事務所 代表弁護士)
※本記事は、貞操権侵害(独身偽装被害)における不法行為責任(民法709条)、裁判例の慰謝料算定基準、および相手の妻からの不貞請求防御実務に基づきわかりやすく解説しています。

Q 独身だと騙されて交際していた既婚者から、相手の妻を通じて高額な慰謝料を請求されました。こちらからも既婚男性へ求償金を請求したいのですが、妻との示談から夫からの回収が完了するまで、全体でどのくらいの期間がかかりますか?
A 相手の妻との交渉開始から、不倫夫に対する求償金の回収(最終着金)までのトータル期間は、およそ3ヶ月〜6ヶ月程度が標準的な目安となります。事件の複雑さや相手方の対応によって前後しますが、法的な手続きをスムーズに進めることで早期解決を目指します。

独身と偽って交際・性交渉を行う「独身偽装」の被害に遭った上、相手の妻から突然不貞慰謝料を請求されるという「ダブルトラブル」に直面される方が増えています。こうした事態に巻き込まれた場合、精神的なショックが大きいだけでなく、金銭的な負担をいかに最小限に抑えるかが重要となります。


1. 独身偽装交際とダブルトラブルにおける「求償権」の基本

既婚者と知らずに交際していた場合、本来であればあなた自身も「貞操権の侵害」の被害者であり、相手の男性に対して損害賠償請求(民法709条)を行う余地があります。しかし、相手の妻から見ればあなたは「不倫相手」として映るため、まずは妻側からの高額な慰謝料請求への対応が急務となります。

妻に対して支払った、あるいは支払うことになった慰謝料のうち、本来は不倫の主たる原因を作った男性が負担すべき割合(通常は2分の1程度が目安となります)については、後日、その男性に対して求償権(きゅうしょうけん)として請求することができます。


2. トータル期間の全体像:約3〜6ヶ月の標準タイムライン

妻との交渉から、不倫夫からの求償金回収までのプロセスは、大きく分けて以下の4つのステージで進行します。

ステージ1:ご相談・受任から相手の妻との交渉(1ヶ月目)

弁護士が代理人に就任し、相手の妻(または妻側の代理人弁護士)との交渉を開始します。

  • 独身と偽られていた客観的な証拠(マッチングアプリのプロフィール、独身と発言していたLINE履歴など)を整理します。
  • 妻側からの請求額の減額交渉、および「あなたが既婚者である事実を知らなかったこと(善意無過失)」主張し、必要最小限の和解を目指します。
  • 交渉がまとまれば、清算条項を含んだ示談書(合意書)を締結します。

ステージ2:示談成立と慰謝料の支払い(1〜2ヶ月目)

妻との間で合意した慰謝料の支払いを行います。

  • この際、後日の求償権の行使を有利に進めるため、示談書の条文設計には専門的な法知識が必要不可欠となります。
  • 支払が完了した段階で、妻との間の紛争は完全に解決(クリア)となります。

ステージ3:不倫夫に対する求償金請求の通知(3〜4ヶ月目)

妻との解決後、あるいは並行して、独身偽装を行った不倫夫に対して求償金の請求を行います。

  • 妻に支払った慰謝料の負担割合に基づき、求償金の支払いを求める内容証明郵便等を送付します。
  • 不倫夫が任意の支払いに応じるか、減額を求めて交渉に持ち込むかの協議を行います。

ステージ4:求償金の回収・最終着金(4〜6ヶ月目)

不倫夫との間で合意に至れば、指定された口座へ求償金の入金(最終着金)が行われます。

  • 万が一、不倫夫が支払いに応じない場合は、求償金請求訴訟(裁判)への移行を検討しますが、多くの場合は話し合いによる和解や一括・分割での回収で決着します。

3. スムーズな解決とトラブル防止のための重要ポイント

上記の3〜6ヶ月という期間を確実に、かつ有利に進めるためには、いくつかの注意点があります。

感情的な直接連絡を避ける

妻に対してご自身で弁明の連絡を入れたり、不倫夫に対して怒りに任せて連絡を取ったりすることは、かえって事態を悪化させる原因となります。第三者や法的な専門家を挟むことで、冷静かつ迅速な事実認定が可能になります。

証拠の保全を徹底する

独身偽装の事実や、既婚者であることを知らなかったことを証明するためには、交際当時のやり取りや記録が決定的な証拠となります。メッセージアプリのデータなどは削除せず、確実に保存しておきましょう。

示談書の文言に細心の注意を払う

妻との示談書や、不倫夫との合意書を作成する際、将来の求償権に関する権利を誤って放棄させられてしまうケースがあります。専門知識を持たずにサインをしてしまうと、後から夫へ求償金を請求できなくなるリスクがあるため、必ず事前に弁護士等の専門家にリーガルチェックを依頼することをお勧めします。


4. まとめ:適切な期間管理と法的サポートで負担を最小限に

既婚者による独身偽装交際と、それに伴う妻からの慰謝料請求は、精神的・経済的に大きな負担を伴うトラブルです。相手の妻との交渉から不倫夫への求償金回収までには約3〜6ヶ月の標準的な期間を要しますが、各ステージで適切な証拠の整理と正確な法的アプローチを行うことで、不当な負担を軽減し、正当な解決を実現することが可能です。複雑な交渉や示談書の作成に不安がある場合は、早めに専門家へ相談することをお勧めします。

弁護士 井上正人

この記事の監修

弁護士 井上 正人
(いのうえ まさと)

大阪弁護士会所属(登録番号:43449)
弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表

相続や遺産分割、借金問題、既婚者との男女トラブルなど、日常の不測の事態に直面した皆様の心理的なご負担を少しでも和らげ、円満な解決を導くためのサポートを徹底して行っています。どんな小さなお悩みでも、まずは当事務所の事務スタッフがLINEのチャットにて丁寧にお話をお伺いいたしますので、どうぞお気軽にご相談ください。

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