【法的措置と弁護士への相談】誹謗中傷や悪質な口コミによる被害を解決するには、プロバイダ責任制限法に基づく発信者情報開示請求で加害者のIPアドレスや氏名を特定し、損害賠償請求や刑事告訴を行うのが有効です。泣き寝入りせず、まずは弁護士へご相談ください。
インターネット上の掲示板やSNS、Googleマップの口コミなどで、心ない誹謗中傷や悪質な書き込みに悩まされる方が増えています。こうした被害に遭った際によく耳にするのが「名誉毀損(めいよきそん)罪」と「侮辱(ぶじょく)罪」という二つの犯罪です。
どちらも他人の名誉を傷つける行為ですが、法律上は明確に区別されています。それぞれの違いを正しく理解することは、加害者に対して法的責任(刑事告訴や損害賠償請求)を追及する上で非常に重要です。
本記事では、夕陽ヶ丘法律事務所の弁護士が、名誉毀損罪と侮辱罪の違いや、2022年7月に施行された侮辱罪の厳罰化(法改正)のポイントについて分かりやすく解説します。
1. 名誉毀損罪と侮辱罪の基本的な違い
刑法上、人の名誉を傷つける犯罪として「名誉毀損罪(刑法第230条)」と「侮辱罪(刑法第231条)」が規定されています。
共通点として、どちらも「公然と(不特定または多数の人が認識できる状況で)」行われる必要があります。例えば、2人きりのメッセージアプリでのやり取りや、誰にも見られない手紙の中であれば、原則としてこれらの犯罪は成立しません。
しかし、以下のような決定的な違いがあります。
名誉毀損罪とは(事実の摘示がある場合)
名誉毀損罪は、「公然と事実を指摘し、人の社会的評価を低下させた場合」に成立します。
ここでいう「事実」とは、真実であるか嘘であるか(真偽)を問いません。たとえ本当にあったことであっても、他人の社会的評価を低下させるような具体的な事柄をネット上で暴露すれば、名誉毀損罪に該当する可能性があります。
- 名誉毀損の具体例:
- 「あの病院の院長は過去に医療ミスを隠蔽した」とネット掲示板に書き込む
- 「この会社の社長は横領前科がある」とSNSで拡散する
侮辱罪とは(事実の摘示がない場合)
侮辱罪は、「事実を挙げずに、公然と人を侮辱した場合」に成立します。
具体的な事実(過去の行動や事件など)を示さず、単に相手を蔑む言葉や悪口を浴びせる行為がこれに該当します。
- 侮辱罪の具体例:
- 「バカ」「死ね」「クズ」といった暴言をSNSのコメント欄に執拗に書き込む
- 「仕事ができない無能人間だ」と大勢の前で罵倒する
2. 2022年7月施行:侮辱罪の厳罰化と法改正のポイント
かつて、侮辱罪の法定刑は「拘留(30日未満)または科料(1万円未満)」と非常に軽く、ネット上の悪質な誹謗中傷に対して抑止力が十分に機能していないという問題がありました。
しかし、SNSにおける誹謗中傷が社会問題化したことを受け、2022年7月に刑法が改正され、侮辱罪の罰則が大幅に引き上げられました。
改正前後の罰則の比較
- 改正前: 拘留(30日未満)または科料(1万円未満)
- 改正後: 1年以下の懲役もしくは禁錮、もしくは30万円以下の罰金、または拘留もしくは科料
この法改正により、侮辱罪にも「懲役刑」が追加され、公訴時効もこれまでの1年から3年に延長されました。これにより、警察が本格的な捜査(発信者情報開示請求や家宅捜索など)に動きやすくなり、ネット上の悪質な誹謗中傷に対しても厳正な処罰を下す環境が整いました。
「事実を書いていないから、ただの悪口だから警察は動かないだろう」という軽い気持ちで行われた誹謗中傷であっても、現在は逮捕や前科がつく重い犯罪となっています。
3. ネット誹謗中傷で被害者が取るべき法的手段
ご自身や自社がネット上で誹謗中傷の被害に遭った場合、泣き寝入りする必要はありません。名誉毀損や侮辱にあたる書き込みに対しては、主に以下の法的アプローチをとることができます。
- 投稿の削除請求: サイト管理者やホスティング事業者に対し、名誉毀損や侮辱にあたる違法な投稿の削除を求めます。任意での削除に応じない場合は、裁判所を通じた仮処分申し立てを行います。
- 発信者情報開示請求(犯人の特定): 投稿者を特定するため、プロバイダ責任制限法に基づき、サイト運営者(IPアドレス等の開示)および経由プロバイダ(氏名・住所等の開示)に対して情報の開示を請求します。
- 損害賠償請求・刑事告訴: 特定した加害者に対し、慰謝料などの損害賠償を請求します。また、悪質なケースでは警察に刑事告訴を行い、刑事責任を追及します。
これらの手続きは専門的な法律知識と迅速な対応が不可欠です。特に発信者情報開示請求には「アクセスログの保存期間(通常数ヶ月)」という時間的制限があるため、被害に遭ったら一刻も早く弁護士に相談することが重要です。