【弁護士による適正な示談交渉のメリット】これらが欠けると紛争が再燃した際に再度の法的措置が困難になるリスクがありますが、専門弁護士が代理人として法的効力の高い和解契約書を作成することで、再発防止の抑止力を高めつつ、精神的負担を最小限に抑えて迅速な解決を図ることが可能です。
ネット上の誹謗中傷や風評被害において、発信者情報開示請求や損害賠償請求を進めると、加害者側から「裁判ではなく、示談で解決したい」と申し出があるケースが多く存在します。
裁判(訴訟)を起こさずに早期解決を図れる点は大きなメリットですが、ここで適当な内容の示談書を交わしてしまうと、「お金を払ってもらった後にまた同じ嫌がらせをされた」「別の掲示板に悪口を書かれた」といったトラブルが再発した際に、法的措置を再び取れなくなるリスクが生じます。
今回は、弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所の実務経験に基づき、加害者との示談(裁判外和解)において絶対に欠かすことのできない5つの必須条項について詳しく解説します。
ネット誹謗中傷の示談交渉における基本スタンス
誹謗中傷の被害に遭ったとき、被害者が求めるものは「金銭的な賠償」だけではないはずです。多くの場合、「二度とこのような書き込みをしてほ安心したい」「自分の名誉を回復したい」「心からの謝罪がほしい」という願いがあるでしょう。
裁判手続き(損害賠償請求訴訟)は公的な解決手段として有効ですが、解決までに数ヶ月単位の時間がかかり、精神的な負担も大きくなります。そのため、お互いの合意文書(示談書・和解契約書)を適切に作成できるのであれば、裁判外での示談解決は非常に合理的な選択肢となります。
ただし、その前提として「加害者が二度と裏切らない仕組み」と「法的効力の高い条文」が示談書に記載されていることが絶対条件です。次の項目から、具体的に盛り込むべき5つの条項を一つずつ見ていきましょう。
示談書に盛り込むべき必須の5つの条項
誹謗中傷の示談書を作成する際、以下の5つの要素は実務上、必ず網羅しなければならない核となります。
1. 謝罪条項(謝罪文の交付・謝罪意思の確認)
金銭の支払いだけでなく、加害者自身の口または文書によって、自身の行為が不法行為であることを認めさせることが精神的な救済につながります。
- 加害者が自身の行った誹謗中傷行為(事実無根の投稿、名誉毀損など)を明確に認めること。
- 被害者に対して心からの謝罪の意を表明すること。
- 必要に応じて、特定の文面による「謝罪文」を書面やメール(あるいは指定の方法)で交付させること。
実務上は、示談書の冒頭部分で「被告(加害者)は、原告(被害者)に対し、インターネット上の掲示板において〇〇と投稿した行為が、名誉毀損およびプライバシー侵害に該当する違法な行為であることを認め、深く謝罪する」といった文言を入れます。
2. 損害賠償金の金額と支払方法
誹謗中傷によって受けた精神的苦痛に対する慰謝料だけでなく、発信者情報開示請求にかかった弁護士費用や調査費用など、被害者が被った実費の全額または一部を加害者に負担させます。
- 支払うべき損害賠償金の総額を明確に数字で記載する。
- 振込手数料の負担者をどちらにするか明記する。
- 万が一、支払期日までに振込みがなされない場合の遅延損害金(年〇%など)の利率を定めておく。
「お金がない」という理由で減額を求められるケースもありますが、被害の悪質性や開示請求に要したコストを考慮し、安易な減額には応じない姿勢が重要です。
3. 分割条件と失効条項(期限の利益喪失)
加害者が一括での支払いが困難な場合、分割払いを認めることがありますが、ここに大きな落とし穴があります。
分割払いに応じる場合、「一度でも支払いを怠ったときは、残金全額を一括して直ちに支払わなければならない」という旨の、いわゆる「期限の利益喪失条項」を必ず設定してください。
- 毎月の支払日(例:毎月末日までに)と金額、振込先口座を詳細に指定する。
- 「分割金の支払いを一度でも遅滞したときは、何らの催告を要せず、当然に期限の利益を失い、直ちに残り全額を一括して支払う」と明記する。
この条項がないと、加害者が数ヶ月払った後に連絡を絶った場合、再び残額を回収するための裁判を起こす手数が二度手間になってしまいます。
4. 再投稿禁止特約および違約金設定
誹謗中傷の示談において最も重要なのが、「二度と同じような書き込みをしない」という再発防止の約束と、それに違反した場合のペナルティです。
口頭や「もうしません」という誓約だけでは、加害者が匿名性の陰に隠れて再びアカウントを変えて嫌がらせを行うリスクを防げません。
- 今後、インターネット上において、被害者に関する誹謗中傷、社会的評価を低下させる情報の投稿、および第三者に行わせる行為の全面的な禁止。
- もし上記条項に違反した場合には、1回(または1日)につき金〇〇万円の違約金を直ちに支払う義務を負うというペナルティの明記。
- アカウントの自主削除や、関連する過去の残存データの完全消去の義務付け。
違約金の存在は、加害者に対する強力な抑止力となります。法外な金額設定は裁判所で減額される可能性もありますが、実損害とは別に「心理的・金銭的ペナルティ」として機能する適切な金額を設定することが不可欠です。
5. 清算条項(紛争の完全な終了)
示談交渉がまとまり、お金のやり取りが終わった後に、加害者側から「やっぱりあの時の慰謝料は高すぎたから返してほしい」「別の件でも言い分がある」と言い出されたり、逆に被害者側から「精神的被害がまだ残っているから追加で請求する」と蒸し返したりすることを防ぐための条項です。
- 「本示談書に定めるもののほか、本件に関し、被害者および加害者の間には、何らの債権債務が存在しないことを相互に確認する」と記載する。
- 「今後、本件に関して、互いにいかなる名目においても追加の請求(裁判上の請求を含む)を行わない」と明記する。
この清算条項が入ることによって、今回の誹謗中傷トラブルに関する「完全かつ最終的な解決(法的決着)」が法的に裏付けられます。
示談書を作成・締結する際の注意点
ここまで解説した5つの必須条項を盛り込んだ示談書を作成するにあたり、いくつかの重要な実務上の注意点があります。
- 加害者の身元を確実につかんでおく
示談書を交わす相手の本名、住所、連絡先が虚偽であれば意味がありません。開示請求の手続きを経て正式に特定された氏名・住所・連絡先であることを、本人確認書類(運転免許証のコピーなど)の提示等で必ず確認してください。 - 公正証書(こうせいしょうしょ)の活用を検討する
高額な損害賠償金の分割払い合意や、相手の支払い能力に不安がある場合は、通常の私製示談書ではなく、公証役場で「強制執行認諾文言付公正証書」を作成することをおすすめします。万が一、加害者が支払いを滞らせた際、裁判を起こさずにすぐ給与や預貯金の差し押さえ(強制執行)が可能になります。 - 感情的にならず、法的な正当性を維持する
被害者ご本人が直接加害者と交渉すると、怒りや感情が先走ってしまい、不利な約束をしてしまったり、逆に脅迫罪に問われかねない言動をしてしまったりする危険性があります。
弁護士に示談交渉を依頼するメリット
ネット誹謗中傷の示談書作成や交渉を弁護士に依頼することは、被害者の方にとって多くのメリットをもたらします。
まず、加害者と直接連絡を取る必要が一切なくなるため、精神的なストレスから完全に解放されます。加害者からの言い訳や逆恨みのメッセージに悩まされることがなくなります。
次に、法律の専門家が作成するため、今回紹介した必須5条項の抜け漏れがなく、法的に有効で強制力のある示談書(あるいは公正証書)を確実に作成できる点です。個人でインターネット上のテンプレートを組み合わせて作った場合、いざという時に法的な効力が弱く、泣き寝入りになるケースも少なくありません。
また、発信者情報開示請求から損害賠償請求、示談交渉、合意書締結までをワンストップで代理人として行うことで、最も妥当で有利な賠償額を引き出す可能性が高まります。
まとめ
ネットの誹謗中傷や風評被害の加害者との示談は、単に「お金を払ってもらって終わり」ではありません。「謝罪」「賠償金」「分割条件」「再発防止(違約金)」「清算条項」という5つの必須要素を確実に網羅した示談書を交わすことによって初めて、真の平穏と安心を取り戻すことができます。
弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所では、数多くのネット誹謗中傷・風評被害の解決実績を有しており、加害者との示談交渉や法的書面の作成をトータルでサポートしております。
「加害者から示談の申し出があったがどう対応すべきか分からない」「自分で作った示談書の内容に不安がある」「確実に再発を防ぎたい」とお悩みの方は、ぜひ一度、当事務所の弁護士までご相談ください。あなたの尊厳と平穏な日常を取り戻すため、全力でサポートいたします。