【弁護士の解説】従来のような複雑なIPアドレスのログ保存や複数回の裁判手続きを経ず、非訟手続による迅速な特定が期待できますが、加害者がアカウント登録時に電話番号やメールアドレスを入力・認証していることが前提となります。誹謗中傷や名誉毀損、プライバシー侵害でお悩みの方は、ログが消去される前に一刻も早く弁護士へご相談ください。
X(旧Twitter)上で誹謗中傷や名誉毀損、プライバシー侵害の被害に遭ったとき、加害者を特定して法的責任を追及するために「発信者情報開示請求」を検討される方が増えています。
その際、被害者の方が最も気になるポイントの一つが「相手の電話番号やメールアドレスまで分かるのか」という点ではないでしょうか。
かつての法制度やXの仕様では、IPアドレスやタイムスタンプを辿る複雑な手続きが必要であり、メールアドレスや電話番号の開示は非常に困難でした。しかし、近年の法改正によって状況は大きく変化しています。
ここでは、弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所の弁護士が、Xの開示請求における電話番号やメールアドレスの開示可否について、法改正のポイントや実務上の流れを交えて分かりやすく解説します。
2022年法改正前後の変化:電話番号は開示されるようになったか
結論として、現在の法律と実務においては、条件が揃えばXから電話番号やメールアドレスが開示されるケースがあります。
従来の開示請求が抱えていた大きな壁
従来、日本の法律(旧プロバイダ責任制限法)のもとでは、SNS等の運営会社(海外法人であるX社など)に対して発信者の情報を求めようとすると、主に「IPアドレスとタイムスタンプ」の開示が中心でした。運営会社からIPアドレスが開示された後、そのIPアドレスを契約している「プロバイダ(ドコモ、ソフトバンク、au、光回線の事業者など)」を特定し、改めてそのプロバイダに対して「氏名や住所」の任意開示や裁判を起こすという、いわゆる二段階の裁判手続を経る必要がありました。
このプロセスには多くの時間とコストがかかり、その間にプロバイダ側でログが消去されてしまうというリスクも存在していました。また、この段階でもメールアドレスや電話番号が必ずスムーズに手に入るとは限らない状況でした。
「発信者情報開示命令」の新設によるスピード化
こうした被害者救済の遅れを解消するため、2022年10月に改正プロバイダ責任制限法(現在の「情報流通プラットフォーム対処法」)が施行され、新たに「発信者情報開示命令」という非訟手続(裁判所の手続の一種)が創設されました。これにより、裁判所を介したスピーディーな手続が可能になり、プラットフォーム事業者(X Corp.など)が保有している「アカウント登録時のメールアドレスや電話番号」といった連絡先情報が、適切な要件を満たせば直接的に開示対象として認められる道が開かれました。
X(旧Twitter)の開示請求で「電話番号・メールアドレス」が開示される条件
Xに対する開示請求で必ず電話番号やメールアドレスが手に入るわけではありません。開示が認められるためには、いくつかの重要な条件を満たす必要があります。
- 権利侵害の明白性: 投稿内容によって、名誉権やプライバシー権などの法的権利が明らかに侵害されていること
- 正当な理由(必要性): 損害賠償請求や差止請求を行うために、その情報が必要不可欠であること
- 対象アカウントが登録していること: アカウント作成時やその後に、当該電話番号やメールアドレスが登録・認証されていること
特に3つ目の条件が実務上重要です。Xでは、メールアドレスだけでなく電話番号を登録していなかったり、偽りの情報や既に使われていない古い情報が登録されていたりする場合があります。その場合、プラットフォーム側に情報が存在しないため、開示を求めることが物理的に不可能となります。
電話番号やメールアドレスが判明した後の展開
X側から無事に電話番号やメールアドレスが開示された場合、その後の法的手続や解決への道筋はどのように変わるのでしょうか。
氏名・住所までの特定がスムーズになる可能性
電話番号やメールアドレスが判明すると、その連絡先を管理している携帯電話会社やプロバイダ(通信事業者)を特定しやすくなります。通信事業者は契約者の「氏名」や「住所」といった厳密な個人情報を保有しているため、次のステップとしてそれらの情報の開示請求や特定を行うことで、加害者の身元にたどり着く確率が大きく高まります。直接的な示談交渉の可能性
裁判手続や弁護士を通じた通知により、判明したメールアドレスや電話番号をもとに連絡先を割り出し、裁判外での示談交渉(損害賠償請求や謝罪広告の要求など)に持ち込めるケースもあります。ただし、ご自身で直接連絡を取ることは感情的なトラブルに発展するリスクが高いため、必ず弁護士を代理人として立てて交渉を進めることを強く推奨いたします。Xの誹謗中傷で開示請求を進める際の注意点
実際にXの投稿に関して開示請求を検討される際は、以下の点に十分注意してください。
- 証拠の保全が最優先: 相手が投稿を削除したり、アカウントを非公開(鍵垢)・削除したりする前に、該当するポスト(ツイート)の画面スクリーニングやURLの保存、タイムスタンプの記録を行ってください。
- タイムリミット(ログ保存期間)の存在: プロバイダが保有する通信ログやログイン履歴には保存期間(通常数ヶ月程度)があり、時間が経つとデータが消去されてしまいます。迅速な対応が不可欠です。
- 専門家への早期相談: 近年の法改正により手続は合理化されたものの、裁判所への申し立てや海外法人であるX Corp.を相手にした法的手続は極めて専門的です。ネット中傷に強い弁護士に早い段階で相談することが、成功への近道となります。
まとめ
X(旧Twitter)の開示請求において、かつてはハードルが高かった「電話番号」や「メールアドレス」の開示は、2022年の法改正以降、要件を満たせば現実的な選択肢として認められるようになっています。
しかし、相手がどのような情報を登録しているか、投稿内容が法的に権利侵害と認められるかなど、クリアすべきハードルは専門的かつ多岐にわたります。
弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所では、XをはじめとするSNSの誹謗中傷・風評被害対策、各種発信者情報開示請求に関して豊富な実績がございます。誹謗中傷にお悩みの方、加害者の特定や法的措置をご検討の方は、どうぞお気軽にご相談ください。