仕事が忙しくて土日は会えない」と言い訳されていた場合の過失認定回避

【本記事の監修者】
弁護士 井上 正人(大阪弁護士会所属 / 登録番号:第43449号 / 夕陽ヶ丘法律事務所 代表弁護士)
※本記事は、貞操権侵害(独身偽装被害)における不法行為責任(民法709条)、裁判例の慰謝料算定基準、および相手の妻からの不貞請求防御実務に基づきわかりやすく解説しています。

Q 「仕事が忙しくて土日は会えない」「休日出勤や出張が多い」と言われて交際相手が既婚者だと気づけませんでした。相手の配偶者から不貞慰謝料を請求されていますが、過失を認めずに回避することはできますか?
A 相手が「土日も仕事」「出張が多い」と嘘をついて独身を偽装していた場合、客観的に既婚者と見抜くことが困難であった事情を適切に立証できれば、過失なし(不法行為責任なし)として慰謝料請求を退けられる可能性があります。

「交際相手から『土日は仕事が忙しい』『休日出勤や出張が多い』と言われ、それを信じ切っていた。ある日突然、その相手の配偶者から高額な不貞慰謝料を請求されてしまった……」 このような相談が、数多く寄せられています。

既婚者が独身と偽って交際していた場合、騙された側もダブルトラブル(不貞の責任追及と、自身が受けた貞操権侵害被害の交錯)に巻き込まれるケースが後を絶ちません。今回は、土日に会えない言い訳をされていた場合に、既婚者であることに気づかなかったこと(過失の不存在)をどのように立証し、不当な慰謝料請求を回避するかについて、法的観点から詳しく解説します。

1. 既婚者からの不貞慰謝料請求における「過失」の法的意味

民法709条に基づく不貞慰謝料の請求において、肉体関係を持った第三者が責任を負うのは、その人が「相手が既婚者であることを知っていた(故意)」、または「注意を払えば既婚者であると気づくことができたのに見落とした(過失)」場合に限られます。

過失認定の判断基準

裁判実務において、過失の有無は以下のような総合的な事情から判断されます。

  • 相手の言動やライフスタイル(独身を信じ込ませるための巧妙な工作の有無)
  • 自身の自宅や相手の自宅への立ち入り状況
  • 交際期間や連絡を取る時間帯・頻度
  • 周囲への紹介状況や身元確認の程度

もし、あなたが相手の嘘を信じるに足りるだけの合理的な理由があり、当時の状況下で一般的な注意義務を果たしていたと言えるのであれば、過失は認められず、結果として不貞慰謝料の支払義務を負わないことになります。

2. 「土日に会えない」言い訳と過失認定回避のポイント

「土日出張」「休日出勤」「シフト制の不規則な仕事」といった言い訳は、既婚者が配偶者と過ごす週末の時間を確保するためによく使われる典型的な手口です。この状況下で過失認定を回避するためには、単に「信じていた」と主張するだけでは不十分であり、客観的な証拠をもって「なぜ気づけなかったのか」を論理的に立証する必要があります。

立証において重視されるポイント

  • 仕事上の役割や業界特性の裏付け: 相手から聞かされていた職種や役職、業界の慣習上、本当に休日出勤や突発的な出張があり得たと言える状況だったか。
  • 偽装工作の巧妙さ: SNSやLINEのやり取り、写真の共有などにおいて、独身を装うための具体的な演出(一人暮らしを装う写真など)があったか。
  • 会えないことへの疑問への対応: 土日に会えないことに対してあなたが不審がり、追及した際、相手がどのように巧妙にそれをかわし、安心させていたか。

これらを当時のチャット履歴やメール、スケジュール管理アプリの記録などから掘り起こし、客観的な事実として再構築することが重要になります。

3. 証拠の集め方と構成における実務的アプローチ

土日に会えなかった事情を過失なきことの防御材料として活かすためには、以下の手順で証拠や主張を整理します。

  1. 交際初期からの経歴・身分証明の精査 マッチングアプリや合コン、職場関係など、出会った当初にどのように身分を偽っていたかの記録を時系列で整理します。
  2. 「土日不在」に関するアリバイ工作の特定 「今週末は東京に出張」「今週は休日出勤で会社に泊まる」などと言われた際のメッセージ履歴を保全します。
  3. 被害者から加害者への転換(逆請求の視野) 相手が独身と偽って交際・性交渉を行った行為は、あなたの「貞操権」を著しく侵害する不法行為です。相手の配偶者から理不尽な請求を受けた場合、むしろその欺瞞的な既婚者にこそ損害賠償を請求すべきケースもあります。

4. 不当な請求に直面したときの注意点と対応策

相手の配偶者から内容証明郵便などが届いた際、焦ってご自身だけで対応するのは非常に危険です。相手側は「土日に会っていなかったのだから、既婚者であると薄々気づいていたはずだ」と決めつけてプレッシャーをかけてきます。

ここで安易に謝罪したり、事実関係の確認を曖昧にしたまま示談に応じたりしてしまうと、後から覆すことが困難になります。

「土日に会えないのは仕事のせいだと思い込まされていた」「自分に落ち度はなかったはずだ」とお悩みの方は、一人で抱え込まず、早い段階で専門家に相談することをお勧めします。客観的な事情と証拠を整理し、自身の権利を守るための適切な法的アプローチを選択しましょう。

弁護士 井上正人

この記事の監修

弁護士 井上 正人
(いのうえ まさと)

大阪弁護士会所属(登録番号:43449)
弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表

相続や遺産分割、借金問題、既婚者との男女トラブルなど、日常の不測の事態に直面した皆様の心理的なご負担を少しでも和らげ、円満な解決を導くためのサポートを徹底して行っています。どんな小さなお悩みでも、まずは当事務所の事務スタッフがLINEのチャットにて丁寧にお話をお伺いいたしますので、どうぞお気軽にご相談ください。

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