独身と偽って交際・性交渉を行ったことに対する貞操権侵害の慰謝料請求や、配偶者の不貞問題における示談の場において、後々のトラブルを防ぐために「公正証書」を作成したいというご相談を多くいただきます。
示談書を単なる私文書ではなく公正証書にしておくことで、万が一相手が慰謝料の支払いを怠った際、裁判を起こさずに給与や財産の差し押さえといった強制執行が可能になります。
1. 公正証書作成に向けた事前準備と公証役場での打合せ
公正証書は、当日いきなり公証役場に行っても作成することはできません。まずは綿密な準備と事前の打合せが必要となります。
事前準備のステップ
- 合意内容の確定: 慰謝料の金額、分割払いの場合は毎月の支払期日や振込先、遅延損害金の有無、接触禁止条項などを明確にします。独身偽装交際の場合は、真実を知った時期や精神的苦痛に対する賠償範囲についても整理します。
- 必要書類の収集: 当事者の本人確認書類(運転免許証やマイナンバーカード)、実印、印鑑登録証明書、また代理人が出向く場合は委任状などが一般的に必要となります。
公証人との事前打合せ
- 作成した示談書のドラフト(文案)を、最寄りの公証役場に持参するか、FAX・メール等で送信します。
- 公証人が法令に違反していないか、内容に不備や曖昧な点がないかを事前にチェックします。
- 修正点があれば文案をブラッシュアップし、当日スムーズに調印できるように調整します。
2. 公証人手数料の仕組みと費用の目安
公証役場で公正証書を作成する際にかかる手数料は、国が政令で定めた一律の基準(公証人手数料令)によって計算されます。
手数料の計算基準
- 慰謝料や解決金の「目的の価額(合意する金銭の総額)」に応じて手数料が変動します。
- 例えば、記載される金額が大きくなるにつれて、段階的に手数料も加算されていきます。
- 金銭債権の支払いを目的とする場合、強制執行認諾文言(支払わない場合に強制執行を受けても異議がないという文言)を付加するための特殊な加算や用紙代などが別途かかります。
費用の目安に関する注意点
- 正確な金額は、提示する文案の条文数や目的金額によって公証役場が算定するため、事前打合せの段階で必ず見積もりを確認するようにしましょう。
3. 当日調印の手順と完了までの流れ
事前打合せと手数料の確認が完了したら、いよいよ公証役場での当日調印を迎えます。
当日の流れ
- 公証役場への来所: 約束された日時に、当事者本人(または正当な代理人)が公証役場に出向き待機します。
- 内容の最終確認: 公証人が作成した公正証書(正本・謄本)を当事者双方が読み合わせ、内容に誤りがないか最終確認を行います。
- 署名・押印: 内容に問題がなければ、その場で署名および実印による押印を行います。
- 手数料の支払いと受取: 窓口で所定の公証人手数料を支払い、公正証書の「正本」または「謄本」を受け取ります。
4. 公正証書作成を確実に行うためのポイント
貞操権侵害や不貞慰謝料の示談において、単なる書面ではなく法的な実効性を持つ公正証書を遺すことは、将来的な不払いリスクを防ぐうえで非常に重要です。
公証役場とのスムーズな文案調整や、相手方との条件交渉を有利に進めるためには、あらかじめ法的根拠に基づいた正確な示談書ドラフトを用意することが欠かせません。条件面で不安がある場合や、相手との直接交渉を避けたい場合は、専門家のサポートを視野に入れつつ、確実な手続きを進めていきましょう。