独身と偽って交際を迫り、肉体関係を持った既婚者男性に対して慰謝料請求の訴訟を提起したものの、相手が連絡を絶ち、裁判所からの呼出状を無視して欠席するというトラブルが後を絶ちません。
「裁判に出なければ、借金や慰謝料の支払い義務も消えてしまうのではないか」とご心配される方もいらっしゃいますが、日本の民事訴訟法には、こうした不誠実な対応をする被告に対する法的な仕組みが用意されています。
1. 被告が裁判を無視・欠席した場合の法的な仕組み(擬制自白)
民事訴訟を提起し、裁判所から被告(加害者男性)の自宅へ訴状や期日呼出状が特別送達で届いたにもかかわらず、男性が答弁書も出さずに第1回口頭弁論期日に欠席した場合、法律上非常に重要な効果が発生します。
それが民事訴訟法第159条第3項に定められた「擬制自白(ぎせいじはく)」です。
民事訴訟における基本的なルールは以下の通りです。
- 原告が主張した事実に対し、被告が反論(答弁書の提出や法廷での主張)を行わない場合、その事実をすべて「争わない(認める)」ものとみなされます。
- これにより、裁判所は原告が提出した証拠(LINEのやり取り、写真、陳述書など)に基づき、原告の主張をそのまま事実として認定します。
つまり、相手が裁判を無視して逃げ回ったとしても、それだけで原告の負けになることはなく、むしろ原告の主張が全面的に認められる「勝訴判決(欠席判決)」への最短ルートとなります。
2. 貞操権侵害・不貞慰謝料請求における欠席判決のメリット
独身偽装交際による貞操権侵害や、不当な不貞慰謝料請求に対する法的対応において、相手が裁判を欠席した場合、以下のような実務上のメリットが生じます。
裁判期間の短縮
相手が争ってくる場合、答弁書に対する反論や証拠の精査、本人尋問などで数ヶ月単位の時間がかかることがあります。しかし、初回の期日から相手が欠席し、擬制自白が成立すれば、早ければ第1回〜第2回期日程度で結審し、判決言い渡しへと移行します。
請求通りの金額が認められやすい
原告側が適法な証拠に基づき、妥当な慰謝料額(例:独身偽装による精神的苦痛に対する慰謝料)を主張している場合、被告からの反対主張がないため、請求額通りの認容判決が出やすくなります。
3. 判決確定後の即時差押え(強制執行)への移行
「裁判に勝って判決が出ても、相手がお金を払わなかったら意味がないのではないか」という疑問を持たれる方も多いでしょう。
勝訴判決(または仮執行宣言付判決)が下された後、相手が任意に支払いに応じない場合、法律に基づいて強制執行(財産の差押え)を実行することが可能です。
判決言い渡し後は、速やかに以下のような強制執行の手続きを検討します。
- 給与の差押え:勤務先の会社を特定している場合、毎月の給与(給料債権)から未払い慰謝料を直接回収します。相手の社会的な信用にも影響するため、心理的なプレッシャーとしても非常に有効です。
- 預貯金の差押え:利用している銀行口座(金融機関)を特定し、口座内の預貯金を差し押さえます。
なお、相手の勤務先や口座情報が不明な場合でも、裁判所の「財産開示手続」や「第三者からの情報取得手続」を活用して、相手の財産を特定する法的なアプローチをとることができます。
4. 裁判を無視して逃げる加害者に対する法的対応のまとめ
既婚者であることを隠して交際し、トラブルが発覚した途端に連絡を断つ、あるいは裁判を無視して逃げようとする不誠実な態度は、被害者の方の精神的苦痛をさらに増幅させるものです。
しかし、民事訴訟における「擬制自白」の制度を活用すれば、被告の欠席は必ずしもマイナスではなく、むしろ早期の勝訴判決獲得の足がかりとなります。判決後は預貯金や給与の強制執行によって実効的な回収を図ることも十分に可能です。「相手がこのまま無視し続けた場合、どう対処すべきか不安」とお悩みの方は、法的根拠に基づいた正確なステップで、泣き寝入りせずに毅然とした対応を進めましょう。