マッチングアプリを通じて知り合った相手から「独身」と偽られ、交際や肉体関係を持たされたという相談が後を絶ちません。いわゆる独身偽装交際や貞操権侵害の問題です。
また、こうした被害に遭った方が相手に対して慰謝料請求を行おうとした矢先、今度は相手の配偶者から「不貞行為の加害者」として逆に慰謝料を請求されるというダブルトラブルに巻き込まれるケースも少なくありません。
相手に法的な責任(損害賠償請求)を追及するためには、まず相手の正確な身元(本名・現住所など)を特定する必要があります。本記事では、マッチングアプリの有料会員登録履歴や決済情報から相手の身元を割り出す方法について詳しく解説します。
独身偽装・貞操権侵害における身元特定の重要性
民法709条に基づく不法行為損害賠償請求や貞操権侵害の慰謝料請求を行う場合、相手が誰であるかを特定しなければ裁判所を通じた法的手続を進めることができません。
多くのマッチングアプリでは、ニックネームやメッセージ機能のみでやり取りが行われており、連絡先として知っているのはLINEのIDや携帯電話番号だけ、というケースが目立ちます。しかし、携帯電話番号やSNSのIDだけでは、相手の住民票上の住所や本名を特定することは極めて困難です。
そこで重要となるのが、相手がアプリ内で利用していた有料会員の登録履歴や決済情報です。
決済クレジットカード名義・キャリア決済情報からの特定アプローチ
マッチングアプリの多くは、男性会員(またはメッセージを本格的にやり取りする会員)に対して有料プランへの加入を義務付けています。この有料プランの決済方法には、主に以下のものが利用されます。
- クレジットカード決済
- Apple ID / Google Play 決済(アプリ内課金)
- 各種キャリア決済(ドコモ、au、ソフトバンク等)
- コンビニ決済や銀行振込
これらの決済手段には、必ず契約者本人の個人情報が紐づいています。
1. 弁護士法23条照会(弁護士会照会)の活用
個人が直接マッチングアプリの運営会社に対して「会員の個人情報を教えてほしい」と請求しても、プライバシー保護の観点から任意で開示されることはまずありません。
しかし、弁護士に依頼した場合、弁護士法23条に基づく弁護士会照会という法的な調査手段を用いることができます。これにより、アプリ運営会社や決済代行業者に対して、契約者の氏名、住所、登録メールアドレス、クレジットカードの名義情報などの開示を求めることが可能になります。
2. Apple ID・Google Play経由の特定
スマートフォンアプリの場合、決済がAppleやGoogleを介して行われているケースが多くあります。この場合、アプリ運営会社側がクレジットカード番号を直接保持していないことがあります。
このような状況でも、アプリ運営会社に対する照会から「決済トランザクションID」や「登録時の端末情報・IPアドレス」等を割り出し、さらにプラットフォーム事業者やプロバイダに対する発信者情報開示請求や事実調査を組み合わせることで、契約者へとたどり着く道筋が見えてきます。
相手の配偶者からの「ダブルトラブル」に注意するポイント
独身偽装の被害に遭った方が直面する最大の罠が、相手の配偶者からの突然の慰謝料請求です。
「私は独身だと騙されていた被害者である」と主張しても、客観的な証拠がなければ、配偶者側からは「グルになって不倫をしていた共同不法行為者」として見なされてしまう危険性があります。
このようなダブルトラブルを防ぐためにも、アプリ内で交際当時「独身である」と偽っていたやり取りのスクリーンショットや、マッチングアプリの利用履歴・プロフィール内容などの客観的証拠を保全することが不可欠です。
身元特定のプロセスと並行して、証拠の散逸を防ぐための保全作業を専門家に相談しながら進めることを強くおすすめします。
まとめ:マッチングアプリでの独身偽装・身元特定は専門的なアプローチを
マッチングアプリでの独身偽装や貞操権侵害、およびそれに伴うダブルトラブルは、精神的にも非常に大きな負担を伴う問題です。相手の本名や住所が分からない状態であっても、有料会員登録履歴や決済情報を手がかりに法的手段を用いることで、身元を特定できる可能性は十分にあります。
泣き寝入りせず適切な証拠を確保し、弁護士などの専門家への相談を通じて法的な解決策を検討することが重要です。