独身と偽って交際し、相手に精神的苦痛を与えた場合、あるいは不貞行為が発覚して慰謝料を請求する場合、避けて通れないのが「相手の支払い能力」の問題です。
特に相手が個人事業主である場合、「経費を計上して利益を圧縮しているから手取りはゼロだ」「確定申告書上の所得は少ない」といった言い訳をされるケースが非常に多く見受けられます。しかし、法的な回収手段において、確定申告書上の所得だけがすべてではありません。
確定申告書はあくまで申告上の数字に過ぎない
個人事業主が「所得が少ない」と主張する際、その根拠として提示されるのが確定申告書です。しかし、強制執行の手続きにおいて、裁判所は必ずしも確定申告書上の所得のみを判断基準にするわけではありません。
実質的な支払い能力を調査する際、私たちは以下の資産や財産価値に注目します。
- 事業用預金口座の残高
- 取引先からの売掛金
- 所有する車両や不動産
- 事業用設備や備品
個人事業主の場合、生活費と事業費が混在していることも多く、帳簿上の利益を抑えていても、実際には事業用口座に十分な資金が流れているケースが多々あります。これらはすべて、差し押さえの対象となり得る財産です。
相手が「手取りゼロ」と主張した場合の対応策
相手が支払いを逃れるために「自分には金がない」と主張し続けた場合、私たちは以下のプロセスで回収を目指します。
- 財産開示手続の活用:裁判所を通じて、相手自身の口から財産を開示させる手続きを行います。
- 第三者からの情報取得手続:銀行や取引先に対して照会を行い、預金残高や売掛金の有無を直接特定します。
- 債権差押えの実施:特定した売掛金や銀行口座に対して、直接差し押さえをかけます。
特に売掛金の差し押さえは、個人事業主にとって取引先からの信用に関わるため、支払いを促す非常に強力なプレッシャーとなります。
まとめ:個人事業主の「手取りゼロ」主張に惑わされないために
「個人事業主だから支払能力がない」という相手の言葉をそのまま信じる必要はありません。経費による節税と、実際のキャッシュフローや保有資産の間には大きな乖離があることが少なくありません。
正確な財産調査を行い、銀行口座や売掛金といった隠れた資産を特定することが、慰謝料や金銭請求を確実に実現するための確実なアプローチとなります。