独身と偽って交際していた相手との間で妊娠が発覚し、中絶に至った場合、心身ともに計り知れない苦痛を伴います。そのような状況下で相手から提示される「口止め料」や「解決金」の額が妥当なのか、判断に迷われる方は少なくありません。
貞操権侵害における解決金の構成要素
相手から提示された金額が正当かどうかを判断するためには、以下の項目が網羅されているかを確認する必要があります。
- 中絶手術費用・通院にかかった交通費などの実費
- 手術や療養のために仕事を休んだ場合の休業損害
- 心身の苦痛に対する慰謝料
特に重要なのが慰謝料の算定です。独身であると偽って交際し、妊娠・中絶に至らせたという事実は、相手の「性的な自己決定権(貞操権)」を侵害する違法行為であり、法的に重い責任が伴います。
慰謝料の相場と判断基準
一般的な慰謝料の相場は、事案の悪質性や状況にもよりますが、200万円から400万円程度がひとつの目安となります。
ただし、この金額は一律ではなく、以下の要素によって増減します。
- 交際期間の長さと親密さの度合い
- 相手が既婚者であることを隠していた期間の長さ
- 妊娠発覚後の相手の対応(誠実な謝罪があったか、逃避したか)
- 中絶に至るまでの経緯や心身へのダメージの大きさ
相手が提示してきた金額が、この範囲を大幅に下回っている場合、あるいは「口止め料」という名目で実態を曖昧にしようとしている場合は、示談に応じる前に一度専門家へ相談することをお勧めします。
安易な示談と法的リスクへの注意
相手が提示する金額を鵜呑みにして示談書にサインをしてしまうと、後から「実はもっと高額な請求が可能だった」と判明しても、原則として示談のやり直しはできません。
また、相手の配偶者から「不貞行為」を理由として逆に高額な慰謝料を請求されるトラブルに発展するケースも存在します。独身偽装をされていた被害者側が、法的無知から不利益を被る不条理な状況を避けるためにも、正確な相場を知り、適切な法的手続きと防衛策を講じることが重要です。