不貞行為や独身偽装交際の問題において、相手方から「持ち家を売却して、そこから示談金を支払う」と提案されるケースがあります。しかし、相手を完全に信用して待機している間に不動産が売却され、その代金が使われてしまえば、示談金を回収する手段を失うリスクがあります。
相手が持ち家を売却するときの懸念点
相手が不動産を売却すると、登記簿上の所有権は買主に移転し、相手の手元には「売却代金」という現金が残ります。この現金は預金口座などへ移動されるため、債権者であるあなたが後から差し押さえようとしても、口座が空になっていたり、使途不明金になっていたりする可能性が高いです。
いわゆる「財産隠し」を防ぐためには、相手が不動産を所有している間に、その価値を固定化し、逃げられないようにする法的手続きが必要となります。
不動産仮差押えとは
不動産仮差押えとは、裁判所に対して申し立てる「保全処分」の一種です。判決や示談成立によって最終的に差し押さえを行うまでの間、相手が不動産を自由に売却したり、担保に入れたりすることを一時的に禁止する手続きです。
この手続きを行うメリットは以下の通りです。
- 相手に対して「売却を勝手に進められない」という強い心理的プレッシャーを与えられる。
- 不動産が勝手に処分されるのを防ぎ、将来の強制執行の対象を確保できる。
- 相手が誠実に対応する姿勢を促すことができる。
不動産仮差押えを検討する際の注意点
不動産仮差押えを行うためには、被保全権利(あなたに請求権があること)と保全の必要性(仮差押えをしなければ回収が困難になること)を裁判所に疎明する必要があります。
また、仮差押えの申立てには裁判所へ納める「担保金」が必要となるケースが一般的です。この担保金は、手続きが終了すれば原則として返還されますが、一時的にまとまった現金を用意しなければならないため、戦略的な判断が求められます。
独身偽装や不貞行為の相手方が「売却して支払う」と口にした場合、それを鵜呑みにするのではなく、速やかに以下のような対応を検討してください。
- 不動産登記簿(登記事項証明書)を取得し、現在の権利関係や抵当権の有無を確認する。
- 相手方に対し、売却代金の管理方法や支払い方法について書面での合意を求める。
- 万が一に備え、不動産仮差押えの要件を満たしているか専門家に相談する。
相手の言葉を信じたい気持ちもあるかと存じますが、金銭トラブルにおいては「証拠」と「保全」が何よりも重要です。不動産の売却が現実味を帯びているのであれば、手遅れになる前に、早急に弁護士などの法的専門家へご相談ください。
※本記事の内容は一般的な法律知識の提供を目的としており、個別の事案に対する法的アドバイスではありません。具体的な事案については必ず専門家にご相談ください。