独身と偽っていた相手との交際が発覚し、相手の配偶者から多額の慰謝料を請求された場合、法的な責任を分担するために「求償権」を行使するケースは少なくありません。
求償権を行使するための前提条件
求償権を行使して強制執行を行うためには、単に「支払った」という事実だけでなく、法的な根拠となる債務名義が必要です。具体的には、以下のいずれかを取得している必要があります。
・判決正本(求償金請求訴訟で勝訴したもの) ・和解調書 ・調停調書 ・公正証書(強制執行認諾文言付きのもの)
これらがない状態で相手の給与を差し押さえることはできません。まずは裁判所を通じた手続きにより、債務名義の取得を目指しましょう。
給与差押えの具体的な手順
債務名義を取得した後、相手の勤務先が判明している場合には「債権差押命令」の申し立てを行います。
1. 勤務先の特定 相手が現在も同じ会社に勤務しているかを確認します。転居や転職が疑われる場合は、財産開示手続や第三者からの情報取得手続を検討する必要があります。
2. 地方裁判所への申し立て 債務者の住所地(または勤務先の所在地)を管轄する地方裁判所へ、債権差押命令申立書を提出します。
3. 裁判所による審査と命令の発令 裁判所が申し立てを審査し、問題がなければ会社(第三債務者)に対して債権差押命令が送達されます。
4. 会社からの回収 差押命令が会社に届くと、会社は相手に対して給与を支払うことが禁止されます。その後、法律で定められた範囲内で、会社から直接給与の一部を回収する手続きへと移行します。
給与差押えにおける注意点
給与の差押えには、法律上の制限が存在します。生活の維持を考慮し、原則として手取り額の4分の1までしか差し押さえることができません(ただし、給与額が非常に高額な場合などは例外があります)。
また、会社に対して差押えの通知が届くため、相手に給与差し押えの事実が伝わることになります。この点は相手との関係性や、今後の回収可能性を考慮した上で慎重に判断すべきです。
まとめ:求償権の回収と法的手続きのポイント
独身偽装交際の事案において、支払った慰謝料の分担を求めて求償権を行使する場合、任意の支払いを期待するだけでは回収が難しいケースが多く見られます。相手が支払いに応じないときは、債務名義を取得した上で給与差押えなどの法的手段を検討することが実効的な解決につながります。差し押えの手続きには正確な書類作成や勤務先の特定が必要となるため、円滑な回収を目指す場合は法律の専門家に相談しながら進めると安心です。