Q:既婚男性が「自分は有名企業の役員だ」と嘘の名刺を渡してきた場合の罪

【本記事の監修者】
弁護士 井上 正人(大阪弁護士会所属 / 登録番号:第43449号 / 夕陽ヶ丘法律事務所 代表弁護士)
※本記事は、貞操権侵害(独身偽装被害)における不法行為責任(民法709条)、裁判例の慰謝料算定基準、および相手の妻からの不貞請求防御実務に基づきわかりやすく解説しています。

Q 独身と偽るだけでなく、有名企業の役員と記載された嘘の名刺を渡して関係を持たされた場合、どのような罪に問えますか?また、妻から不貞の慰謝料を請求された場合はどう対応すべきですか?
A 実在する企業の肩書きを勝手に使用して名刺を作成・行使した場合は、有印私文書偽造罪・同行使罪(刑法159条・161条)に該当する可能性があります。また、民法上も社会的ステータスや独身であると偽って性的関係を強いた行為は、性的自己決定権(貞操権)を侵害する不法行為にあたり、慰謝料請求が可能です。相手の妻から不貞の慰謝料を請求された場合でも、相手の巧妙な偽装工作により「既婚者であると知る余地がなかった」ことが証明できれば、故意・過失が否定され、原則として支払う義務は生じません。偽名刺やLINE履歴などの証拠を保全し、早めに弁護士へご相談ください。

今回は、独身を装うだけでなく、さらに虚偽の肩書きを記載した名刺を用いて関係を迫るという、極めて悪質なケースについて解説いたします。

偽造名刺の法的な問題点

相手が有名企業の役員であると偽り、その名義で作成された名刺を渡して交際を迫る行為は、単なる嘘の範疇を超え、法的に重大な問題を含んでいます。

まず、実在する企業の役員名義で名刺を作成し使用した場合、有印私文書偽造罪および同行使罪(刑法159条、161条)に該当する可能性があります。他人の名義や虚偽の名義を使用して文書を作成することは、社会的な信用を害する行為であり、刑事罰の対象となり得る重大な犯罪です。

また、民法上の観点からも、以下のような責任を追及できる可能性があります。

  • 貞操権侵害(不法行為責任) 独身であると偽り、さらに社会的ステータスを偽ることで相手を欺き、性的関係に同意させた行為は、相手の性的自己決定権を侵害する不法行為にあたります。
  • 詐欺的な手法による精神的苦痛 嘘のスペックを信じ込ませて交際を継続させる行為は、被害者の尊厳を著しく傷つけるものであり、慰謝料請求の対象となります。

相手の妻からの不当請求への対応

このようなケースで注意が必要なのは、被害者であるあなたが、逆に相手の妻から「不貞行為」を理由に慰謝料を請求されるケースです。

もし相手が既婚者であることを全く知らず、かつ「独身である」と信じることに過失がない場合、法的には不貞の故意がないため、原則として慰謝料を支払う義務は発生しません。しかし、相手が偽の名刺や虚偽の情報を駆使してあなたを騙していた場合、相手の妻側が「夫が既婚者であると知っていたはずだ」と主張してくることが予想されます。

このようなトラブルに巻き込まれた際は、以下の点に留意してください。

  • 証拠の保全 相手から受け取った偽の名刺、LINEでのやり取り、独身であると主張していた録音データなど、相手を信じるに足る理由があったことを証明する証拠をすべて保存してください。
  • 安易に回答しない 相手の妻からの連絡に対して、動揺して事実関係を曖昧に認めたり、示談に応じたりすることは避けてください。まずは専門家へ相談し、自身の正当性を主張するための準備を整えることが先決です。

悪質な騙しには毅然とした対応を

独身偽装に加え、偽造名刺まで用いるような相手は、自身の保身のために平然と嘘を重ねる傾向があります。このような被害に遭われた場合、一人で悩まずに早めに専門家へご相談ください。

偽造名刺や虚偽のステータスを用いて性的関係を誘発する手口は、被害者の尊厳を踏みにじる悪質な行為です。「自分も騙されていた被害者である」という客観的な事実を法的に証明し、相手の不法行為責任を追及するとともに、不当な逆請求からご自身の身を守るための正しいステップを踏んでいきましょう。

弁護士 井上正人

この記事の監修

弁護士 井上 正人
(いのうえ まさと)

大阪弁護士会所属(登録番号:43449)
弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表

相続や遺産分割、借金問題、既婚者との男女トラブルなど、日常の不測の事態に直面した皆様の心理的なご負担を少しでも和らげ、円満な解決を導くためのサポートを徹底して行っています。どんな小さなお悩みでも、まずは当事務所の事務スタッフがLINEのチャットにて丁寧にお話をお伺いいたしますので、どうぞお気軽にご相談ください。

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