独身を装っていた相手と交際していたところ、実は既婚者であったことが発覚し、相手の配偶者から慰謝料を請求されるケースは後を絶ちません。
このような状況に直面した際、多くの相談者様が直面するのが「なぜ既婚者だと気づかなかったのか」という追及です。特に、相手の車の中に残された証拠(助手席のシート位置や髪の毛など)を指摘され、「それを見て既婚者だと疑わなかったのは過失である」と主張されることがあります。
相手の説明を信じたことには「正当な理由」があるか
不貞行為による慰謝料請求において、独身だと信じていたことに過失がない(過失なし)と認められるためには、一般的な社会通念に照らして、相手を疑うべき事情がなかったかを慎重に判断する必要があります。
助手席のシート位置や髪の毛といった状況証拠に対し、相手が「妹を乗せた」「同僚を乗せた」「友達を乗せた」などと合理的な説明をしていた場合、それを鵜呑みにしたことが直ちに「過失」とみなされるとは限りません。
以下のポイントが、過失なしを主張する際の検討材料となります。
- 相手が独身であると公言し、周囲の友人や同僚にもそのように振る舞っていたか。
- デートの頻度や時間帯、連絡の取り方に不自然な制限がなかったか。
- 相手からの説明が、その場の状況として不自然極まりないものではなかったか。
- 相手の私生活や家族構成について、疑うべき具体的なきっかけが存在したか。
状況証拠をどう捉えるべきか
「助手席のシート位置」や「髪の毛」は、確かに既婚者を連想させる証拠になり得ます。しかし、これらはあくまで状況証拠であり、直ちに「配偶者の存在」を確定させるものではありません。
重要なのは、その証拠を見つけた際、あなたがどのような反応をし、相手がどのように釈明したかという点です。
「妹を乗せた」という説明に対し、それ以上の追及ができなかったことや、相手の人間性を信頼していたという事実は、直ちに「不注意」と断定されるわけではありません。裁判実務においても、交際相手の言葉を一定程度信頼することは自然な心理であると解釈されるケースは少なくありません。
車内の状況証拠をめぐる法的主張のポイント
相手の配偶者から「助手席の状況から既婚者だと気づけたはずだ」と主張され、高額な慰謝料を請求されているのであれば、まずは落ち着いて事実関係を整理することが先決です。
車内の状況証拠に対する相手の言い訳やその時のやり取り、交際期間中の全般的な状況を振り返り、ご自身に「知らなかったことに対する過失(注意義務違反)がなかったと言えるか」を法的に検証する必要があります。単なる言い訳ではなく、客観的な状況証拠と当時の心理状況を論理的に主張・立証していくことが、不当な慰謝料請求を退けるための鍵となります。