Q:相手が「自分は精神科で認知症の初期症状と診断された」と言い訳してきた時

【本記事の監修者】
弁護士 井上 正人(大阪弁護士会所属 / 登録番号:第43449号 / 夕陽ヶ丘法律事務所 代表弁護士)
※本記事は、貞操権侵害(独身偽装被害)における不法行為責任(民法709条)、裁判例の慰謝料算定基準、および相手の妻からの不貞請求防御実務に基づきわかりやすく解説しています。

Q 独身偽装の相手から「精神科で認知症の初期症状と診断された」と言い訳された場合、慰謝料請求は諦めるしかないのでしょうか?
A いいえ、諦める必要はありません。 相手が日常生活を支障なく送り、計画的に独身を装って交際していたのであれば、不法行為責任における責任能力が認められる可能性が高いです。医学的な診断名だけで責任が免除されるわけではありません。

独身偽装による交際や貞操権侵害の被害に遭われた方から、相手方の身勝手な言い訳に困惑しているというご相談をいただくことがあります。特に多いのが「実は認知症の初期症状と診断されており、正常な判断ができなかった」といった主張です。

認知症の診断は免罪符にならない

結論から申し上げますと、相手が「認知症」を理由に責任を回避しようとしても、それが直ちに不法行為責任の免除に直結するわけではありません。

不法行為における責任能力とは、自分の行為が他人に損害を与えるものであることを認識できる能力を指します。もし相手が、日常生活を支障なく送り、仕事や社会生活を営みながら、計画的に独身を装って交際を継続していたのであれば、その「騙す」という行為に対する認識は十分にあったと判断される可能性が高いです。

責任能力を否定させないためのポイント

相手が診断書などを盾に責任を逃れようとする場合、以下の事実に注目して反論を組み立てる必要があります。

  • 職場での勤務状況(通常通りの業務遂行能力)
  • 交際期間中のやり取り(LINEやメールでの理路整然とした会話)
  • 独身を偽るための具体的な工作(偽造名刺の作成や生活の痕跡の消去など)
  • 金銭の貸し借りや旅行の計画といった複雑な判断を要する行為

これらの事実は、相手が「高度な社会生活を営む能力」を有していたことの強力な証拠となります。もしこれらが事実であれば、医学的な診断名だけで責任能力が否定されることは極めて困難です。

相手の妻からの不当請求への警戒

一方で、こうしたトラブルの渦中において、相手の妻から「夫をたぶらかした」として不当な慰謝料請求を受けるケースも散見されます。

相手が認知症を主張している場合、それを利用して「夫は正常な判断ができない状態だったのだから、すべてあなたの責任だ」と、妻側が責任を転嫁してくる可能性があります。しかし、独身偽装を行っていたのはあくまで相手男性であり、こちらがその事実を知る由もなかった場合、被害者側に不法行為責任は発生しません。

まとめ:言い訳に惑わされない客観的な立証

独身偽装や貞操権侵害のトラブルにおいて、相手が「認知症の初期症状」などを持ち出して責任逃れを図るケースは少なくありません。しかし、社会生活の実態や騙すための具体的な工作の証拠を積み重ねることで、責任能力の有無を法的に争うことは十分に可能です。相手の巧妙な言い訳に惑わされず、客観的な事実に基づいた的確な立証を行うことが、適正な解決への近道となります。

弁護士 井上正人

この記事の監修

弁護士 井上 正人
(いのうえ まさと)

大阪弁護士会所属(登録番号:43449)
弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表

相続や遺産分割、借金問題、既婚者との男女トラブルなど、日常の不測の事態に直面した皆様の心理的なご負担を少しでも和らげ、円満な解決を導くためのサポートを徹底して行っています。どんな小さなお悩みでも、まずは当事務所の事務スタッフがLINEのチャットにて丁寧にお話をお伺いいたしますので、どうぞお気軽にご相談ください。

TOP