示談交渉が成立し、いざ支払いの段階になって「振込手数料を差し引いて入金された」というトラブルは、実は少なくありません。たとえ数百円の差額であっても、示談書に記載された合意金額が満額支払われていない以上、それは「債務不履行(示談書違反)」にあたります。
示談書違反として扱うべき理由
示談書は、当事者間で合意した内容を法的に担保する重要な書面です。そこに記載された「支払い金額」は、原則として受取人が受け取るべき手取り額を指します。「振込手数料を差し引く」という行為は、相手方の勝手な解釈であり、合意内容を一方的に変更する権利は誰にもありません。
この行為を放置すると、相手方は「この程度の金額なら控除しても問題ない」と判断し、今後の履行に対しても不誠実な態度をとるリスクが高まります。
追撃のための対応ステップ
未払い分を回収し、相手に履行を徹底させるためには、以下の手順で対応を進めてください。
- 内容証明郵便による催告 まずは、示談書の条項に基づき「合意した全額が支払われていない」旨を指摘し、不足分を期限内に支払うよう求める書面を送付します。この際、単なる催促ではなく、法的な義務であることを明確に記載します。
- 振込手数料の負担に関するルールの再確認 特段の合意がない限り、民法上、持参債務の原則や弁済の費用に関する考え方から、振込手数料は債務者(支払う側)が負担すべき性質のものです。「手数料はそちらの負担である」という点を伝え、今後も同様の控除が行われないよう強い警告を発します。
- 不履行による法的措置の予告 期限までに不足分が支払われない場合、示談書が「公正証書(執行受諾文言付き)」等である場合は即座に差押え(強制執行)の手続きに移行する可能性がある旨を伝えます。私文書の示談書であっても、訴訟提起等の法的手続きに移行する旨を伝えることでプレッシャーを与えます。
毅然とした対応が権利と平穏を守る
わずかな金額だからといって泣き寝入りをしてしまうと、相手方は「自分の都合の良い解釈が通った」と誤認してしまいます。特に慰謝料請求などにおいて、相手との関係を完全に清算したい場面では、こうした小さな違反も見逃さない姿勢を示すことがご自身の平穏を守るためにも重要です。
もし相手が開き直るような態度を見せる場合や、自力での交渉が困難な場合は、法的手段も含めて弁護士などの専門家へ相談することをお勧めします。