相手の家族(親・実家)へ既婚隠し・貞操権侵害の事実を伝えて慰謝料を請求できるか

【本記事の監修者】
弁護士 井上 正人(大阪弁護士会所属 / 登録番号:第43449号 / 夕陽ヶ丘法律事務所 代表弁護士)
※本記事は、貞操権侵害(独身偽装被害)における不法行為責任(民法709条)、裁判例の慰謝料算定基準、および相手の妻からの不貞請求防御実務に基づきわかりやすく解説しています。

Q 独身と偽っていた相手の親に連絡し、「代わりに慰謝料を払ってほしい」と請求することは法的に可能ですか?
A 原則として、成人の子供が起こした不法行為(貞操権侵害など)について、親に法的な支払い義務はありません。そのため、親へ直接法的責任を問う請求は認められず、かえって名誉毀損やプライバシー侵害などの法的リスクを招くおそれがあります。実務では本人へ厳格に請求を行い、結果として親が任意で立て替える形を目指すのが一般的です。

1. 相手の親・実家へ既婚隠しの事実を伝えて慰謝料を請求できるか?

結論から申し上げますと、成人の子どもが犯した貞操権侵害について、親が法的な損害賠償義務を負うことは原則としてありません。

民法上、不法行為(民法709条)を行った本人が責任を負うのが大原則です。子どもが未成年であり、親権者の監督義務違反が認められるような特段の事情がない限り、成人した子どもに対して親が責任を肩代わりしなければならない法的根拠は存在しないのです。

そのため、親に対して「息子の代わりに慰謝料を払いなさい」と法律上の請求を行っても、拒絶されるのが通常です。


2. 親へ直接連絡・暴露することの法的リスク

「法律上の義務がないなら、事実を知ってもらうために実家に連絡して何が悪いのか」と思われるかもしれません。しかし、感情に任せて相手の親に連絡を入れる行為には、以下のような重大な法的リスクが伴います。

  • 名誉毀損罪や侮辱罪に問われるリスク(刑事上の問題)
  • 不法行為に基づく損害賠償請求を受けるリスク(民事上の問題)
  • 相手が警戒心を強め、証拠隠滅や連絡遮断を図るリスク

特に、会社の同僚や親族、実家などに対して「うちの子を騙した」「不倫をしている」といった事実を吹聴したり、過度に社会的評価を低下させるような連絡を行ったりした場合、加害者側から「名誉毀損」や「プライバシー侵害」として逆提訴されるリスクがあります。


3. 実務上、親が「任意で立替・支払い」を行うケースとは

では、親が慰謝料の支払いに関与することは全くないのでしょうか。実務の現場では、結果的に親が肩代わり(任意立替)するケースが少なくありません。

どのような経緯で親が支払いに応じるのか、一般的な流れを解説します。

  • 本人に対する正規の法的アプローチ 弁護士名義での内容証明郵便の送付や、裁判所を通じた法的な手続き(慰謝料請求訴訟など)を行い、加害者本人を法的・社会的に追い詰めます。
  • 本人からの親への相談・発覚 会社や家族(配偶者など)に知られたくない、あるいは裁判沙汰やこれ以上大きな問題にしたくないという心理から、加害者本人が自ら自分の親に事実を打ち明け、経済的援助を求めます。
  • 親による任意での示談金・慰謝料の立替払い 息子の不始末を収めるため、あるいはこれ以上問題を大きくしないために、親が自身の預貯金から慰謝料を任意で工面し、被害者に支払うという解決に至ります。

このように、最初から親に責任を問うのではなく、加害者本人に対して法的かつ徹底的な責任追及を行うことの副次的な結果として、親が事態を収拾するために動くというのが実務の王道です。


4. 貞操権侵害・既婚隠しトラブルを適切に解決するために

独身偽装交際や貞操権侵害における慰謝料請求は、相手の嘘の立証や精神的損害の証明など、専門的な法知識と戦略が必要となります。

感情的な暴露や個人間での交渉は、かえってトラブルを複雑化させたり、予期せぬ法的リスクを招いたりする原因になりかねません。「誠意のない相手から適正な慰謝料を回収したい」「冷静かつ確実に法的責任を追及したい」とお悩みの方は、法律の専門家である弁護士への相談をご検討ください。

弁護士 井上正人

この記事の監修

弁護士 井上 正人
(いのうえ まさと)

大阪弁護士会所属(登録番号:43449)
弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表

相続や遺産分割、借金問題、既婚者との男女トラブルなど、日常の不測の事態に直面した皆様の心理的なご負担を少しでも和らげ、円満な解決を導くためのサポートを徹底して行っています。どんな小さなお悩みでも、まずは当事務所の事務スタッフがLINEのチャットにて丁寧にお話をお伺いいたしますので、どうぞお気軽にご相談ください。

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