不倫夫の「隠し口座・別名義口座」を弁護士照会で突き止めて差押え

【本記事の監修者】
弁護士 井上 正人(大阪弁護士会所属 / 登録番号:第43449号 / 夕陽ヶ丘法律事務所 代表弁護士)
※本記事は、貞操権侵害(独身偽装被害)における不法行為責任(民法709条)、裁判例の慰謝料算定基準、および相手の妻からの不貞請求防御実務に基づきわかりやすく解説しています。

Q 夫が慰謝料の支払いを逃れるために「お金がない」と主張し、給与以外の隠し口座や別名義口座に財産を移している疑いがあります。どのようにして突き止め、差押えを行えばよいのでしょうか?
A 弁護士会照会(民事訴訟法第23条に基づく照会)を活用することで、金融機関に対する預貯金口座の有無や残高の調査が可能となります。財産を特定した後は、裁判所の強制執行手続を通じて給与や預貯金の差押えを行い、正当な慰謝料の回収を実現します。

不貞行為(不倫)の慰謝料請求において、最も直面しやすい壁の一つが「相手(夫や不倫相手)が財産を隠してしまう」という問題です。配偶者から慰謝料を請求された夫が、支払いを免れようとして給与口座以外の隠し口座を作ったり、財産を別名義の口座へ移動させたりするケースは決して珍しくありません。


1. 不倫夫が財産を隠す「隠し口座・別名義口座」の手口

離婚や不貞慰謝料の話し合いが現実味を帯びてくると、一部の当事者は自身の財産を守ろうと巧妙な隠蔽工作を図ることがあります。

  • 給与振込口座とは別に、ネット銀行などで誰にも知らせていない個人口座を開設する
  • 実家や親族の名義を勝手に使用して別名義口座を作り、そこに資金を分散させる
  • 自宅の財産分与や慰謝料請求から逃れるために、現金を引き出してタンス預金にする

このような状況で「財産がない」という夫の言葉をそのまま信じてしまうと、本来受け取るべき慰謝料を一切回収できなくなるおそれがあります。しかし、泣き寝入りする必要はありません。法的な制度を活用すれば、隠された資産を明らかにすることが可能です。


2. 弁護士会照会(23条照会)による隠し口座の特定

個人のプライバシー保護の観点から、一般の人が金融機関に対して「他人の口座情報を教えてほしい」と請求しても、応じてもらうことは原則として不可能です。しかし、弁護士法第23条の2に基づく弁護士会照会(いわゆる23条照会)を利用することで、この壁を突破できるケースがあります。

弁護士会照会とは何か

弁護士会照会は、受任している事件の調査のために、弁護士会を通じて官公庁や企業、金融機関などに対して必要な情報の開示を求める制度です。

  • 調査対象: 夫が利用していそうな都市銀行、地方銀行、ネット銀行、信用金庫など
  • 照会内容: 当該金融機関における口座の有無、口座番号、残高、取引履歴など
  • 法的根拠: 弁護士法第23条の2に基づく適法な調査手続

すべての銀行の口座を無制限に探すことは困難ですが、これまでの生活状況や給与の振込先、カードの利用履歴などを手掛かりに、弁護士が的を絞って照会をかけることで、夫が隠そうとしていた口座を特定できる可能性が大きく高まります。


3. 口座特定後のステップ:強制執行と差押えの実務

隠し口座や勤務先が判明した後は、速やかに法的措置(強制執行)へと移行します。民法709条に基づく不法行為責任を追及して獲得した債務名義(判決や和解調書、公正証書など)をもとに、裁判所に対して債権差押命令の申し立てを行います。

預貯金債権の差押え

特定した銀行口座に対して差押えを実行します。裁判所から金融機関に対して差押命令が送達されると、夫はその口座からの預金引き出しができなくなります。裁判所の手続を経て、差し押さえた預貯金から慰謝料の回収を充てることが可能です。

給与債権の差押え

もし勤務先が判明している場合、給与の差押えは非常に強力な手段となります。給与は継続的な収入源であるため、毎月の給与から一定額を直接差し押さえて回収を続けることができます。


4. ダブルトラブル(不貞慰謝料と求償権)への留意点

不倫問題においては、配偶者と不倫相手の双方が連帯して慰謝料の支払い義務を負うことが一般的です(不貞行為は共同不法行為に該当するため)。ここで問題になりやすいのが求償権(きゅうしょうけん)です。

  • 不倫相手に対して全額の慰謝料を請求し、相手がそれを支払った場合、不倫相手は「夫の負担すべき分(通常は2分の1など)」を夫に対して請求(求償)する権利を持ちます。
  • 夫の財産を差し押さえる場面や、全体の示談を組み立てる際には、この求償権の処理や責任の分担を見誤ると、後々別のトラブル(ダブルトラブル)に発展するリスクがあります。

弁護士が代理人として介入することで、全体的な法的バランスを考慮したスマートな解決策を導き出すことができます。


5. まとめ:隠し口座を暴き、正当な慰謝料を確実に回収するために

不倫夫が「お金がない」と嘘をついたり、隠し口座や別名義口座に財産を隠蔽したりする行為は、離婚や慰謝料請求の現場において決して珍しいことではありません。しかし、個人の調査には限界があるものの、弁護士会照会(23条照会)や裁判所の強制執行手続を適切に組み合わせることで、隠された資産を合法的に突き止め、差し押さえることは十分に可能です。

夫の巧妙な財産隠しに直面して一人で悩み続ける必要はありません。法的な専門知識と実績を持つ弁護士のサポートを早期に得ることで、財産の特定から確実な差押え・回収に至るまでの手続きをスムーズに進め、ご自身の正当な権利を守り抜くことができます。

弁護士 井上正人

この記事の監修

弁護士 井上 正人
(いのうえ まさと)

大阪弁護士会所属(登録番号:43449)
弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表

相続や遺産分割、借金問題、既婚者との男女トラブルなど、日常の不測の事態に直面した皆様の心理的なご負担を少しでも和らげ、円満な解決を導くためのサポートを徹底して行っています。どんな小さなお悩みでも、まずは当事務所の事務スタッフがLINEのチャットにて丁寧にお話をお伺いいたしますので、どうぞお気軽にご相談ください。

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