【弁護士による対応と財産回収のポイント】相手の「お金がない」という主張を鵜呑みにせず、慰謝料相場である100万〜300万円の回収を目指すためには、弁護士を通じて勤務先や口座を特定する財産開示手続や強制執行を行うのが効果的です。支払いを逃れる口実に惑わされず、早めに弁護士へご相談ください。
不倫の慰謝料を請求した際、加害者側から様々な言い訳や支払い逃れの言葉が飛び出すことがあります。その中でも最近増えているのが、「自分は親の相続放棄をしたから、お金は一切ない」「財産がないから払えない」という主張です。
配偶者の不倫に苦しみ、ようやく慰謝料を請求しようと決意した矢先にこのようなことを言われると、「本当に一円ももらえないのだろうか」「差し押さえる財産がないなら泣き寝入りするしかないのか」と絶望的な気持ちになってしまうかもしれません。
しかし、結論から申し上げますと、不倫相手が親の相続放棄をしたという事実と、不倫の慰謝料を支払う義務の有無・強制執行の可否は全く関係ありません。
本記事では、不倫相手が「相続放棄をしたから資産がない」と主張してきた場合の法律的なカラクリと、実際に財産を回収するための正しい法的アプローチについて、弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所の法律ライターが詳しく解説します。
相続放棄と慰謝料請求の「勘違い」
不倫相手が「相続放棄をしたから資産がない」と主張する背景には、法律知識の誤解、あるいは意図的な支払いを逃れるための口実が隠されています。まずは、この主張のどこが間違っているのかを整理していきましょう。
相続放棄とは何か
相続放棄とは、被相続人(亡くなった親など)が遺したプラスの財産だけでなく、マイナスの財産(借金やローンなど)も含めて、すべての相続権を放棄する法的手続きです。家庭裁判所に申し立てることにより、最初から相続人でなかったことになります。
したがって、親に多額の借金があった場合などに相続放棄をすることは、法律上認められた正当な権利です。
「親の財産がない」ことと「本人の財産がない」ことは別
ここで重要なのは、相続放棄が影響するのはあくまで「親の遺産を相続する権利」についてだけであるという点です。
不倫相手が親の遺産を相続しなかったからといって、不倫相手がそれまでに自分自身で稼いで築いた給与、自分で貯金した預貯金、自分で購入した自動車などの資産が消えてなくなるわけではありません。
つまり、不倫相手は「親からの遺産を継がない」と言っているだけであり、「自分自身の固有の財産がない」と言っているわけではない(あるいは、ごちゃ混ぜにして支払いを免れようとしている)のです。
相手が「資産がない」と主張する心理とよくある手口
不倫・浮気の慰謝料請求において、加害者が「お金がない」「払えない」と主張することは非常に多いパターンです。特に「相続放棄」という一見もっともらしい法律用語を持ち出すケースでは、次のような心理や狙いが働いていることが少なくありません。
- 請求者を諦めさせたい心理: 専門用語を使って「自分には資産がないから何をしても無駄だ」と思わせ、心理戦で請求を諦めさせようとしている。
- 財産開示や差押えへの恐怖: 自分の預貯金や給与の存在を知られたくないため、「相続放棄」を盾にして貧困をアピールし、追及をかわそうとしている。
- 実際には資産を隠しているケース: 口では「ない」と言いながら、実際には一定の預貯金や安定した給与収入がある場合も多々ある。
相手のこのような言葉をそのまま信じて「ないなら仕方がない」と諦めてしまうのは、大変もったいないことです。法律上の手続きを踏めば、相手の本当の資力を明らかにすることができます。
相続放棄をしていても差押えが可能な財産とは?
不倫相手が実際に親の相続放棄をしていたとしても、あなたが受け取れるはずの慰謝料を回収するために、以下の財産をターゲットにして強制執行(差押え)を行うことが可能です。
1. 勤務先からの給与・賞与
不倫相手が会社員や公務員として働いている場合、毎月受け取る給与や賞与(ボーナス)は、本人の最も確実な固有財産です。 裁判所を通じて給与の差し押さえ(債権差押命令)を行うことで、原則として給与の手取り額の4分の1(給与が高額な場合は一定の計算式による上限あり)を毎月直接回収することができます。 会社に給与差し押さえの通知が届くため、相手にとっても社会的なプレッシャーとなり、話し合いによる一括払いに応じる契機になることも多いです。
2. 銀行口座の預貯金
不倫相手が使っている、あるいは隠し持っている銀行口座(普通預金や定期預金)を特定できれば、その預貯金を差し押さえることができます。 口座の残高がそのまま慰謝料の支払いに充てられるため、一括で回収できる可能性が高まります。
3. 所有車両(マイカー)などの動産・不動産
不倫相手名義で所有している自動車や、もし自己所有のマンション等があれば、それらの資産を差し押さえて競売にかけ、換価した代金から慰謝料を回収することが可能です。
「資産がない」と言われたときの具体的な解決ステップ
では、実際に不倫相手から「相続放棄をしたから資産がない」と言われた場合、どのように対処すればよいのでしょうか。感情的に言い争うのではなく、冷静かつ法的に正しいステップを踏むことが重要です。
ステップ1:相手の主張の真偽を確認する
まずは、相手が本当に相続放棄をしたのかどうかを冷静に見極めます。もっとも、前述の通り、仮に本当に相続放棄をしていたとしても慰謝料請求の可否には影響しません。「相続放棄したことと、今回の不法行為に対する慰謝料支払いは別問題です」と毅然とした態度で伝えることが大切です。
ステップ2:任意の交渉から合意書(公正証書)の作成へ
相手に資力がある(仕事をしている、車に乗っているなど)場合、弁護士を通じて正式に慰謝料請求の書面(内容証明郵便など)を送ることで、態度が軟化するケースが多くあります。 話し合いによって慰謝料の金額や分割払いの条件がまとまった場合は、将来の不払いを防ぐために、強制執行認諾文言付きの公正証書を作成することをお勧めします。これにより、万が一相手が支払いを滞らせた際、裁判を経ずにすぐに給与や財産の差押えに移ることができます。
ステップ3:裁判手続き(訴訟・支払督促)の活用
相手が話し合いに応じない、または「払わない」の一点張りの場合は、裁判所に慰謝料請求訴訟を提起します。 裁判で勝訴(または和解)すれば、債務名義(判決書や和解調書など)を取得することができます。
ステップ4:財産開示手続や第三者からの情報取得手続の活用
「相手がどの銀行のどの口座を持っているか分からない」「勤務先を正確に知らない」という場合でも諦める必要はありません。 近年の法改正により導入された制度を活用することで、次のような調査が可能になりました。
- 財産開示手続: 裁判所の命令によって、債務者本人に出頭してもらい、自身の財産について包み隠さず陳述させる手続きです。
- 第三者からの情報取得手続: 市町村や年金事務所、銀行、会社などに対して、債務者の給与情報や預貯金口座、不動産に関する情報を照会・取得できる強力な制度です。
泣き寝入りせず、弁護士にご相談ください
不倫相手から「親の相続放棄をした」「自分には資産がない」と言われると、一般の方はお金を取る手段がないと思い込んでしまいがちです。しかし、法律の仕組みを正しく理解し、適切な法的手段を講じれば、相手の給与や預貯金からしっかりと慰謝料を回収できる道は残されています。
相手の言葉に惑わされ、一人で悩む必要はありません。
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