【弁護士による交渉・防衛のポイント】相手の配偶者からの逆請求リスクや求償権のバランスを慎重に考慮し、示談書を取り交わす必要があります。ご自身の被害を正当に認めさせつつ、相手からの思わぬトラブルや追加請求を完全に防衛するためには、弁護士による戦略的な交渉が不可欠です。
ダブル不倫(既婚者同士の不倫関係)の清算局面において、当事者の一方が「自分も既婚者であると隠されていた」「独身だと偽られて関係を持たされた」というケースは少なくありません。このような状況下で、相手に対して配偶者としての共同不法行為責任を追及するだけでなく、個人としての「貞操権(性的自由や相手を選ぶ権利)の侵害」を理由に、さらなる慰謝料請求を行うことは実務上可能なのでしょうか。
本記事では、夕陽ヶ丘法律事務所の弁護士が、ダブル不倫における既婚隠しと貞操権侵害請求の法的メカニズム、相手からの逆請求を回避・防衛しつつ相手を追及するための実践的なポイントを分かりやすく解説します。
ダブル不倫における「既婚隠し」と貞操権侵害の基本
通常の不倫問題では、不倫関係を持った男女は、お互いの配偶者に対して共同不法行為者として損害賠償責任(慰謝料支払義務)を負います。しかし、当事者間(不倫関係にあった2人の間)に目を向けたとき、一方が「独身である」と偽って相手を欺き、不倫関係に引き込んだ場合は法的評価が大きく変わります。
法律上、人は誰と恋愛関係を結び、誰と性的な関係を持つかを自らの意思で決定する権利を持っています。これを「貞操権」と呼びます。もし相手が既婚者であることを知っていれば関係を持たなかったにもかかわらず、その事実を巧妙に隠されて交際を強いられた場合、それは個人の自己決定権に対する重大な侵害、すなわち不法行為に該当します。
したがって、ダブル不倫であっても、一方が既婚であることを秘して関係を持たせていた事実が証明できれば、騙された側は相手に対して貞操権侵害を理由とする慰謝料請求を行うことができるのです。
貞操権侵害が認められるための厳格な要件
すべての既婚隠し事案において貞操権侵害の慰謝料が認められるわけではありません。裁判実務において請求が認められるためには、以下のような厳格な要件をクリアする必要があります。
- 既婚者であることの積極的な隠蔽または虚偽の告知:「独身である」と明確に嘘をついていた場合や、指輪をわざと外す、自宅に入れないなどの偽装工作を行っていたこと。
- 既婚であることを知らなかったこと(無過失):騙された側に過失(少し注意すれば既婚者であると気づけたはずなのに看過したような状況)がないこと。
- 精神的苦痛の発生:真実を知ったことによって著しい精神的ショックを受け、日常生活や精神状態に重大な支障が生じたこと。
特に「相手が既婚者かもしれないと薄々感づいていた場合(未必の故意や重大な過失)」には、貞操権の侵害主張は排斥されやすくなるため注意が必要です。
ダブル不倫清算における複雑な法的リスク
ダブル不倫の清算において「相手の不倫相手から貞操権慰謝料を取る」と意気込む場合、法的な全体像を見誤ると、かえって大きな金銭的・精神的負担を背負うリスクがあります。
1. 相手の配偶者からの高額請求との相殺・二重取りの禁止
ダブル不倫である以上、あなた自身にも配偶者がいる場合、相手の配偶者からあなたに対して高額な慰謝料請求がなされる可能性があります。「相手から貞操権で金を巻き上げる」と考えていても、自分の配偶者に対する賠償リスクが消えるわけではありません。また、法律上、損害の填補を超える二重取りは認められないため、全体の収支を考慮したトータルの解決デザインが不可欠です。
2. 求償権(きゅうしょうけん)の存在
不倫の慰謝料を支払った側は、もう一人の当事者(不倫相手)に対して、自分の負担割合を超える部分について「求償権」を行使することができます。例えば、あなたが相手の配偶者に慰謝料を支払った場合、その半分を不倫相手に請求できるのが原則です。しかし、相手が既婚隠しを行っていた場合、不倫関係における責任の所在(帰責割合)が大きく偏るため、求償権の放棄や減免を交渉の武器にすることが可能です。
相手を追及しつつ自らのリスクを最小化する実務戦略
ダブル不倫の清算を有利に進め、相手の既婚隠しに対する責任を追及しながら、あなた自身の配偶者問題や相手からの逆請求を防衛するためには、以下の実務ステップを踏むことが極めて効果的です。
- 客観的な証拠の徹底的な収集:相手が「独身である」と発言していたLINEやメールの履歴、マッチングアプリのプロフィール画面、偽装工作の証拠などを散逸する前に保全します。
- 請求と防衛のワンストップ交渉:相手の配偶者からの請求に怯えるのではなく、相手の既婚隠しという違法性を盾に、お互いの請求権を相殺・清算する包括的な示談合意を目指します。
- 専門弁護士による代理交渉:当事者間で直接交渉を行うと、感情的対立から二次トラブルや脅迫・恐喝などの予期せぬ法的リスクに発展しがちです。代理人弁護士を立てることで、冷静かつ法的根拠に基づいた有利な条件引き出しが可能となります。
まとめ:泣き寝入りせず、適正な解決を掴むために
ダブル不倫の清算において、既婚を隠されて心身ともに深く傷つけられた被害者が、相手に対して個別の責任を追及することは正当な権利です。しかし、感情に任せて単独で動くと、相手の配偶者からの反撃や法的なカウンターパンチを受け、かえって窮地に陥る危険性も十分にあります。
公的な相談窓口や弁護士会等では、複雑に絡み合うダブル不倫の紛争において、依頼者様の利益を最大限に守りながら、貞操権侵害の追及と相手からの請求に対する強固な防衛を同時に実現します。一人で悩むことなく、まずは当事務所の初回無料相談までお気軽にお問い合わせください。