【弁護士による示談作成のメリット】正確な文例を用いた示談書の作成や公正証書の活用により、将来的な支払遅延や減額請求のリスクを確実に防ぐことができます。トラブルのない円満かつ確実な慰謝料回収のために、弁護士へのご相談をおすすめします。
不倫や浮気の慰謝料請求において、合意内容を形にする「示談書」の作成は、将来の紛争を防止するための極めて重要なプロセスです。慰謝料の金額や支払期日については細心の注意を払う方が多いものの、見落とされがちなのが「振込手数料の負担」という細部の実務です。
一見すると些細な問題に思えるかもしれませんが、毎月の分割払いや高額な慰謝料の送金において、この手数料の負担者をどちらにするか曖昧にしておくと、支払いのたびに無用な言い争いが起きたり、満額が支払われないままトラブルに発展したりするリスクがあります。
本記事では、示談書における振込手数料を相手方負担とする条項の重要性や、実務で使える正確な文例、さらに分割払いの際に見落としがちな注意点について、夕陽ヶ丘法律事務所の弁護士が詳しく解説します。
なぜ振込手数料の負担トラブルが起きるのか
不倫の慰謝料を支払う側(以下、加害者側)と受け取る側(以下、被害者側)の間では、お金のやり取りに関する感覚にズレが生じることが少なくありません。
分割払いで発生する「毎月の目減り」
例えば、慰謝料150万円を毎月3万円の50回(約4年)で分割払いする合意をしたとします。このとき、毎月の振込手数料が数百円かかると仮定しましょう。
もし、この振込手数料を加害者側が負担せず、差し引いた金額を振り込む仕様にしてしまうと、被害者側が受け取る金額は毎月数百円ずつ目減りしていくことになります。長期間の分割払いであれば、その総額は数万円に上ることもあり、最終的な受取総額が合意額を下回る原因となります。
「言った・言わない」の水掛け論を防ぐ
法律上、金銭債務の履行場所は持参債務が原則であり、持参または送金にかかる費用は債務者(支払う側)が負担すべき性質のものという考え方があります。しかし、法律の専門知識がない当事者間では、「手数料はそっちが受け取るんだからそっちが持って当然だ」「いや、払う方が全額負担するのが筋だ」といった感情的な対立が生まれやすくなります。
このような無用な衝突を未然に防ぎ、法的拘束力を持って明確にするために、示談書に具体的な負担ルールを書き込む必要があります。
示談書における振込手数料の正しい記載文例
示談書を作成する際は、曖昧な表現を避け、誰がどの費用を負担するのかを明確に条文化することが鉄則です。ここでは、実務で実際に使用されている具体的な文例を紹介します。
一括払いのケース
慰謝料を一括で支払う場合の条項例です。振込手数料だけでなく、送金に関連する実費全体をカバーできるように記載します。
- 第〇条(慰謝料の支払い)
- 被告(または加害者)は、原告(または被害者)に対し、本件慰謝料として金〇〇万円の支払い義務があることを認め、これを令和〇年〇月〇日までに、原告が指定する以下の銀行口座に振り込んで支払うものとする。
- 2. 前項の支払いに要する振込手数料その他の送金費用は、すべて被告の負担とする。
分割払いのケース(最もトラブルになりやすい場面)
毎月の分割払いの場合は、毎回の送金に対して手数料が発生するため、より厳格な規定が必要です。
- 第〇条(分割金と手数料の負担)
- 加害者は、前条の慰謝料総額を完済するまで、毎月末日までに金〇万円ずつを被害者が指定する銀行口座に振り込んで支払うものとする。
- 2. 前項の分割金の送金に要する銀行振込手数料は、すべて加害者の負担とする。加害者は、毎月の分割金に振込手数料を加算した金額、または手数料を差し引かない満額を指定口座に振り込むものとする。
このように、「手数料を差し引いて振り込んではならない」という趣旨まで含めて明文化しておくことで、加害者側による勝手な減額送金を法的に封じることができます。
示談書作成時の実務的な注意点
振込手数料の条項を盛り込むにあたり、実務上知っておくべきポイントをいくつか解説します。
ネット銀行やATM利用時の手数料の考慮
現在では、インターネットバンキングの普及や、銀行ごとの優遇プログラム(他行宛振込手数料の無料回数など)を利用する人が増えています。しかし、示談の当事者間で「お互いにネット銀行だから手数料はかからないだろう」とタカをくくっていると、金融機関の仕様変更や口座変更によって予期せぬ手数料が発生することがあります。
したがって、個別の状況に左右されないよう、示談書には「どのような送金手段を用いようとも、発生した手数料は全額相手方負担とする」という包括的な文言を入れておくことが安全です。
万が一、手数料を差し引いて振り込まれた場合の対処法
もし示談書に「相手方負担」と明記したにもかかわらず、加害者側が手数料分を差し引いて(例えば3万円のところ29,570円を)振り込んできた場合、これは「一部不履行(一部未払い)」にあたります。
このような状態を放置すると、将来的に「完済した」と主張されるリスクが生じます。不足分が発生した場合は、すぐに書面やLINE、メールなどの記録に残る形で抗議し、不足分の速やかな追加振込みを求めることが重要です。
公正証書にする場合のメリットと手数料条項
より確実に相手からの支払いを担保したい場合、通常の示談書ではなく、公証役場で「執行認諾文言付公正証書」を作成することをおすすめします。
公正証書にしておけば、万が一相手が慰謝料や分割金の支払いを怠った際、裁判を起こすことなく、給与や預貯金口座の差し押えなどの強制執行手続きに直結させることができます。
公正証書を作成する際にも、今回解説した「振込手数料は相手方負担とする」という条項を公証人との打ち合わせ段階でしっかりと盛り込んでもらうことが可能です。専門の弁護士に依頼して公正証書原案を作成してもらうことで、こうした細部の条項の抜け漏れを防ぎ、完全に保護された合意書面を完成させることができます。
まとめ:細部までこだわった示談書で安全な解決を
不倫・浮気の慰謝料問題において、示談書は被害者であるあなたを守る最強の盾となります。
慰謝料の総額や分割の回数、支払期日といった大きな条件だけでなく、「振込手数料の相手方負担」といった細部の実務条項まで徹底してこだわることで、支払いの遅延や予期せぬ金銭的トラブルを完全に防ぐことができます。
公的な相談窓口や弁護士会等では、数多くの不倫・浮気トラブルの解決実績を持つ弁護士が、お客様の状況に合わせた完璧な示談書・公正証書案の作成をサポートしております。相手方との交渉や細かな条件設定にお悩みの方は、ぜひ一度法テラスや弁護士会などの公的な法律相談をご活用ください。