【弁護士介入のメリット】当事者間のみの示談では、感情的な対立から合意書の実効性が曖昧になり、接触や不倫関係が再発するリスクが高まります。弁護士が代理人として交渉および示談書作成を行うことで、法的な強制力を持つ文面を構築し、違反時のペナルティを確実に定めて、被害者の精神的平穏と職場環境の秩序を法的に守ることができます。
社内不倫が発覚した場合、被害を受けた配偶者側にとっても、また当事者にとっても、その後の職場環境の維持や再発防止は非常に重大な問題となります。慰謝料の支払いを受けて解決とするだけでなく、今後の接触を完全に断ち切るための取り決めを行わなければ、平穏な日常を取り戻すことはできません。
特に職場が同じである「社内不倫」の場合、顔を合わせる機会がどうしても生じてしまうため、示談書にどのような制限を盛り込むかがトラブル再燃を防ぐカギとなります。
本記事では、夕陽ヶ丘法律事務所の弁護士が、社内不倫の示談書に必ず盛り込むべき「接触禁止条項」および「異動合意」の具体的な文面と、実効性を持たせるための法的ポイントを詳しく解説します。
社内不倫の示談書に「接触禁止」と「異動合意」が必要な理由
会社という同じコミュニティ内で起きた不倫問題は、示談によって慰謝料を支払わせただけでは、根本的な解決にならないケースが多く見られます。示談書にこれらの条項が必要な理由は主に以下の通りです。
- 心理的苦痛の継続を防ぐため:被害者配偶者にとって、配偶者と不倫相手が同じ職場で働き続けること自体が大きなストレスであり、精神的な平穏を害し続けます。
- 不倫関係の再発を防ぐため:職場という閉鎖的な空間や、業務上の連絡ツールを口実に、関係が再びずるずると復活してしまうリスクを断ち切る必要があります。
- 職場環境の秩序を守るため:当事者同士の気まずさや周囲への気兼ねから、業務に支障が出ることを防ぐための環境整備としても重要です。
接触禁止条項を盛り込む際のポイントと具体例
示談書における「接触禁止」は、単に「もう会わない」と抽象的に書くだけでは不十分です。会社員という立場上、業務上の連絡や会議での同席が発生し得るため、「業務上の必要性を除き、私的な接触を一切禁止する」という線引きを明確にする必要があります。
実務で使われる接触禁止条項の文例
以下は、実務において実際に使用される接触禁止条項の典型的な文面です。
第〇条(接触禁止)
乙(不倫相手)および丙(配偶者)は、今後、業務上必要不可欠な場合を除き、以下の各号に定める行為を行ってはならない。
1. 業務時間外における私的な連絡(電話、メール、チャットアプリ、SNS等によるものを含む)の送受信。
2. 業務時間内における、業務に関係のない私的な会話、挨拶以外の接触。
3. 勤務時間前後、休憩時間等における待ち合わせ、同伴での出退勤、飲食行動。
4. その他、互いの私生活領域への立ち入りや接近。
このような具体的な制限を設けることで、どこからが違反にあたるのかを明確にし、後々のトラブルを防ぐことができます。
異動合意(配置転換)を盛り込む際のポイントと具体例
接触禁止を定めたとしても、同じフロアや近い部署に所属している限り、完全に接触を避けることは困難です。そのため、会社に対して、あるいは当事者間で「配置転換(異動)」に同意させる条項が極めて有効となります。
ただし、注意しなければならないのは、配偶者や不倫相手が直接「会社に対して人事権の行使を強制することはできない」という点です。人事権は会社の専権事項であるため、示談書においては「会社に対して異動を申し出ることに同意する」「異動命令が出た場合、これを拒否しない」という形式で合意を形成します。
実務で使われる異動合意の文例
以下は、配置転換に関する合意の具体的な文面例です。
第〇条(配置転換等の合意)
1. 乙(および丙)は、本件不倫関係の発覚に伴う職場環境の改善および再発防止のため、勤務先の会社に対し、速やかに配置転換(部署の変更、勤務地の変更等)を申し出るものとする。
2. 乙(および丙)は、前項に基づく会社の決定(配置転換命令を含む)に従うこととし、これを正当な理由なく拒否してはならない。
3. 乙および丙は、今後、同一の部署、支店、または密接に連携する業務への配属を希望しないものとする。
実効性を担保するための「違約金条項」の重要性
接触禁止や異動合意を取り決めたとしても、それに違反した場合のペナルティ(罰則)がなければ、実効性は担保されません。「破ったら二度としない」という口約束や誓約だけでは、再び連絡を取り合っていても発覚しにくく、抑止力としては不十分です。
そのため、「接触禁止条項に違反した場合、〇〇円を違約金として直ちに支払う」という違約金特約(ペナルティ条項)を必ず示談書にセットで組み込む必要があります。
違約金条項の文例
第〇条(違約金)
乙は、本契約に定める接触禁止条項に違反した場合、甲に対し、違反行為1回につき金〇〇万円を違約金として、甲が指定する銀行口座に速やかに支払うものとする。
この違約金を設定することで、不倫相手にとっても「連絡をすれば高額な金銭的負担が発生する」という強い抑止力が働き、接触を防ぐ高い効果を発揮します。
会社に知られたくない場合の示談書の工夫
社内不倫において、当事者が最も恐れるのが「会社にバレること(懲戒処分や周囲からの社会的信用の失墜)」です。そのため、示談交渉の段階で「会社への通知をしない代わりに、接触禁止と異動を厳守する」という条件で和解がまとまるケースも少なくありません。
会社に知られずに異動合意や接触禁止を確実に履行させるためには、以下の点に配慮した示談書作成が必要です。
- 自主的な退職や異動願いの提出を条件にする:会社に直接通知してトラブルを大きくするのではなく、当事者自らの意思で会社に異動届や退職届を出すよう約束させます。
- 守秘義務条項の徹底:不倫の事実や示談の内容について、職場内外を問わず第三者に口外しないことを相互に誓約させます。
まとめ:社内不倫の示談書作成は弁護士にご相談ください
社内不倫の示談書には、通常の不倫慰謝料請求における慰謝料の金額や支払い方法だけでなく、「業務上の必要性に限定した接触禁止」「配置転換(異動)への同意」「違反時の高額違約金特約」といった、職場環境に特化した特殊な条項を正確に盛り込む必要があります。
インターネット上のテンプレートをそのまま流用したり、当事者間だけで口頭の約束を交わしたりしただけでは、後から「そんな合意はしていない」「業務上必要だった」と言い逃れをされてしまうリスクがあります。
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