【実務上の対処法と弁護士相談のメリット】親が代理人として交渉する場合でも、名義や合意内容に不備があると後に無効を主張されるリスクがあります。確実かつ安全に慰謝料を回収し、減額請求や求償権の問題も含めて適法な示談書を締結するためには、不倫慰謝料請求に精通した弁護士へ早期に相談することをおすすめします。
配偶者の不倫が発覚し、いざ慰謝料を請求しようとしたところ、相手が大学生などの「学生」であったというケースは少なくありません。さらに、連絡を入れた途端に相手の親御さんが前面に出てきて、「うちの子はまだ学生でお金がありません」「親の私が代わりに話をします」と言葉を返してくることもあります。
このような状況に直面したとき、請求者側としてはどのように対応すべきなのでしょうか。親が交渉に出てきた場合の法的な留意点や、確実かつ安全に慰謝料を回収するための実務的なステップについて詳しく解説します。
学生の不倫相手に対する慰謝料請求の基本原則
まず大前提として押さえておかなければならないのは、不倫(不貞行為)によって発生する慰謝料支払義務の当事者です。
不倫は民法上の「不法行為」に該当します。不法行為を行った者は、たとえ年齢が若く社会経験の乏しい大学生であっても、法律上の損害賠償責任を負わなければなりません。
未成年者と成人学生の違い
相手が20歳未満の未成年者である場合と、20歳以上(民法改正により現在は18歳以上)の成人である場合では、法的な位置づけが異なります。
- 未成年者の場合: 親権者には監督義務に基づく責任などが問われる余地があり、法的責任の範囲や交渉の枠組みが特殊になることがあります。
- 成人学生の場合: 本人がすでに責任能力を有しているため、原則として責任を負うのは本人自身です。親には法律上の支払義務はありません。
したがって、相手が成人している大学生である場合、親が交渉に出てきたとしても、親に強制的に慰謝料を支払わせる法律上の根拠は本来存在しないという点を頭に入れておく必要があります。
親が示談交渉に出てきた場合のメリットと注意点
相手の親が示談交渉の場に出てきた場合、感情的になりトラブルに発展しやすい一方で、実務上は「回収の確実性が高まる」という大きなメリットもあります。
親が交渉に出てくるメリット
- 資力の確保: 学生本人は無収入であっても、親であれば安定した収入や預貯金があるケースが多く、高額な慰謝料を一括あるいは確実な分割で支払う資力が期待できます。
- 連絡の円滑化: 学生本人が連絡を無視したり逃げたりするケースに対し、社会常識を持った親が間に入ることで、話し合いがスムーズに進むことがあります。
直面するリスクと注意点
一方で、親が前面に出てくることによって、以下のようなリスクや落とし穴が生じやすくなります。
- 減額交渉の激化: 「子どもはまだ学生で将来がある」「親の老後資金から出すので勘弁してほしい」など、情に訴えて過度な減額を求められる傾向があります。
- 責任転嫁の危険性: 「そちらの配偶者から誘惑したのではないか」などと、責任を被害者側にすり替えてくる発言がなされることも少なくありません。
「親の任意立替払い」を受け入れる際の実務ポイント
親が「子どもに代わって私が支払います」と言ってきた場合、法律実務上はこれを任意立替払いとして受領することになります。この際、法的に不備のない対応を行わないと、後々大きなトラブルに発展するおそれがあります。
1. 支払名義と原資の確認
親が支払う場合であっても、それが「親自身の財産からの立替払い」であることを明確にしておく必要があります。もし親が子どもの借金を肩代わりする形をとる場合、後になって「子どもが勝手にやったことだ」「親が脅されて払わされた」などと主張されないよう、書面で合意を残すことが不可欠です。
2. 領収書の宛名と処理
慰謝料を受け取った際の領収書を発行する際、宛名を誰にするかも重要です。基本的には実際に支払った親の名前を記載しつつ、どの示談に基づくものであるかを特定できるように但し書きを工夫します。
最も重要:成人学生本人に示談書へ調印させる理由
親が交渉の窓口となり、お金を支払う場合であっても、絶対に欠かしてはならない極めて重要な実務上の鉄則があります。それは、「責任能力のある学生本人に、必ず示談書(合意書)の当事者として署名・捺印させること」です。
親とだけ示談書を交わす危険性
「親が全額払うのだから、親とだけ示談書を交わせば十分ではないか」と考えてしまうのは非常に危険です。
- 本人の責任が残存するリスク: 学生本人が示談の当事者となっていない場合、後になって本人が「自分はそんな示談の内容を知らない」「自分に対する請求権はまだ消滅していない」と主張し、改めてトラブルを起こす余地を残してしまいます。
- 清算条項の効力不足: 慰謝料問題の解決において最も大切なのは、今後一切の金銭請求や接触を行わないとする「清算条項(示談条項)」です。これが本人との間で締結されていなければ、完全な解決とは言えません。
正しい示談書のスキーム
実務上最も安全な形式は、示談書の当事者(甲と乙)を「被害者配偶者」と「不倫をした学生本人」としつつ、連帯保証人または実質的な支払義務者として「親御さん」にも署名・捺印してもらう形です。
これにより、以下の法的な安全性が担保されます。
- 学生本人が自身の不法行為責任を認め、解決に合意したことが明確になる。
- 親が金銭の支払い(および連帯保証など)について責任を持つことが書面化される。
- 将来にわたる紛争の再燃を完全に防ぐことができる。
示談書に盛り込むべき具体的な条項
学生本人の親が交渉に出てくる案件では、一般的な不倫示談書の内容に加え、特に以下の点を詳細に盛り込んでおくことが推奨されます。
- 合意金額と支払方法: 一括払なのか分割払なのか、振込先の口座、支払期日を明確にする。
- 親の立場明記: 親がどのように金銭を負担するのか(立替払い、または連帯保証など)を正確に記載する。
- 清算条項(ナウォークラブ条項): 本件に関し、債権債務が存在しないことを確認し、互いに今後一切の異議申し立てを行わないこと。
- 通知・接触禁止条項: 配偶者と学生本人が今後一切、私的な接触(連絡、SNSのやり取りなど)を持たないこと。
- 違約金条項: 万が一、接触禁止条項に違反した場合や、支払いが滞った場合のペナルティ(違約金の金額)をあらかじめ定めておく。
感情的対立を避け、円満かつ確実な解決を目指すために
学生の親が交渉に出てきた場合、親御さんもまた、我が子の不祥事に直面してパニック状態であったり、過度に防衛的になっていたりすることが少なくありません。ここで感情的な言い争いになってしまうと、本来得られるはずの適切な慰謝料すら回収できなくなるおそれがあります。
弁護士法人公的な相談窓口や弁護士会等では、数多くの不倫・浮気慰謝料請求を取り扱っており、相手が学生であるケースや、親御さんが代理で交渉に出てこられた場合の適切な実務対応についても豊富な実績を有しています。
親御さんからの理不尽な減額要求を法的な根拠をもって適切に退けつつ、学生本人からの示談書調印と確実な金銭回収を実現するためには、専門知識を持った弁護士を代理人に立てるのが最も確実な方法です。配偶者の不倫問題でお悩みの方は、一人で抱え込まず、どうぞお気軽にご相談ください。