【就職後の差し押さえと法的責任について】学生であっても不貞行為の慰謝料相場は100万〜300万円であり、支払わない場合は就職後に給与や預金口座が差し押さえられるリスクがあるため、早期に弁護士へ相談し示談交渉や分割払いの合意書を作成することが最善です。
大学生や専門学校生といった学生の立場でありながら、配偶者のいる方と交際してしまい、突然高額な慰謝料請求をされて戸惑っている方が増えています。あるいは、ご自身の配偶者が学生と不倫関係にあったため、その学生に対して慰謝料を請求したいと考えている方もいらっしゃるでしょう。
学生は社会人と異なり、多額の貯蓄や安定した収入(給与)がないケースがほとんどです。そのため、「お金がないから払えない」「親に知られたくない」というトラブルや、「どのように回収すればよいのか」という法的疑問が数多く生じます。
この記事では、学生の不倫相手に対する慰謝料請求において、親への任意立替交渉や、就職後の将来的な給与差押えリスクについて、法律の専門的な観点から分かりやすく解説します。
学生に慰謝料請求はできる?法的な大前提
結論からお伝えすると、学生であっても、既婚者であることを知りながら不貞行為(肉体関係)に及んだのであれば、不法行為責任(民法709条)を負うため、慰謝料を支払う義務が生じます。
「まだ学生だから責任が免除される」「社会人ではないから許される」ということは法律上ありません。成人(18歳以上)であればもちろん、未成年であっても責任能力が認められる年齢であれば、自分自身の行為に対して賠償責任を負うことになります。
しかし、実務上大きな問題となるのは、「請求しても実際にお金を払える資力がない」という点です。アルバイト代で生活しているような学生にとって、100万円や200万円といった慰謝料を一括で支払うことは極めて困難です。
親への任意立替交渉の実態と注意点
学生が自分で慰謝料を支払う資力を持たない場合、被害者側(請求者側)はどのような方法をとるのでしょうか。また、請求された側の学生はどのように対応すべきなのでしょうか。
親は子どもの慰謝料を代わりに払う義務があるのか?
法律上、子どもが成人している場合、親には子どもが起こした不倫の慰謝料を肩代わりする法的な義務はありません(未成年者の場合は親権者の監督責任が問題になる余地がありますが、大学生・専門学校生の多くは成人しています)。
そのため、親に対して「子どもの代わりに払いなさい」と強制することは原則としてできません。
実務上行われる「親への任意立替交渉」
それでもなお、実務上は学生の親に連絡がいき、親が立て替えて支払うケースが非常に多く見られます。その理由は以下の通りです。
- 学生本人には一括で支払えるだけの貯金がないため、現実的な回収方法が親の援助を受けること以外にほぼない
- 学生側としても、裁判沙汰になって大学生活や将来に傷がつくのを恐れ、親に打ち明けて肩代わりしてもらう選択をすることが多い
- 親としても、我が子が将来差し押さえなどの法的トラブルを抱えるのを防ぐため、話し合いによって解決を望むケースがある
- 請求者側が自宅や実家に内容証明郵便を送付したり、電話連絡を入れたりすることで、結果的に親が事実を知ることになる
ただし、親を脅迫するような形で取り立てを行ったり、不当な圧力をかけたりすることは違法な取り立てにあたるリスクがあるため注意が必要です。あくまで「任意の立替・話し合い」による解決が基本となります。
学生本人の「将来差押え」リスクと現実
「今はお金がないから払わない」「就職してから考えればいいや」と放置している学生もいますが、これは非常に危険な判断です。慰謝料の支払いを無視し続けた場合、どのような事態が待ち受けているのでしょうか。
示談に応じない場合の法的ステップ
請求を無視し続けたり、連絡を絶ったりした場合、被害者側は以下のような法的措置に出ます。
- 内容証明郵便の送付:弁護士名義などで正式な請求書が送られてきます。
- 裁判所を通じた手続き(訴訟・支払督促):話し合いで解決しない場合、民事訴訟を起こされ、裁判所から呼出状が届きます。
- 判決・和解の成立:裁判で支払いが命じられたり、和解調書が作成されたりすると、法的により逃れられない債務となります。
就職後の給与・預金口座の差し押さえ(強制執行)
学生時代に財産がなくても、将来就職して働き始めれば、給与という安定した収入源が生まれます。
裁判上の確定判決や和解調書などを取得している場合、被害者側は強制執行(差押え)の申し立てを行うことができます。
- 給与の差押え:勤務先の会社に対して差し押さえの通知が届くため、不倫をしたことが勤務先に知れ渡ることになります。会社に発覚することで、社会的な信用を失ったり、居づらくなったりするリスクがあります。
- 預金口座の差押え:給与が振り込まれる銀行口座が差し押さえられ、預金が強制的に回収されます。
「学生だからいまは払えなくても許される」というのは大きな誤解であり、債務(借金のようなもの)は消滅時効を迎えない限り、社会人になってからもずっと追いかけ続けます。
慰謝料請求された学生、請求したい側が取るべき最善の対策
学生の不倫・浮気問題において、こじらせて最悪の事態(退学、就職内定取り消し、会社への発覚など)を招かないためには、冷静かつ適切なステップを踏むことが重要です。
1. 請求された学生側の対処法
もしあなたが学生の立場で慰謝料を請求された場合、決して一人で抱え込んで放置してはいけません。
- 事実関係の確認:相手が既婚者であることを本当に知らなかったのか(過失がなかったと言えるのか)を確認します。知らなかった場合は減額や請求拒否の主張ができる可能性があります。
- 金額の妥当性を検証する:相場を大きく超える高額な請求(例:300万円や500万円など)をされている場合、減額交渉の余地が十分にあります。
- 弁護士への相談:親に知られたくない、またはどのように交渉してよいか分からない場合は、早い段階で弁護士に代理人を依頼することで、親への通知を最小限にしつつ、現実的な分割払いや減額の示談交渉を進めることができます。
2. 学生に請求したい側の対処法
ご自身の配偶者に不倫をされた側で、相手が学生である場合、感情的になって相手の大学にり込みをしたり、SNSで拡散したりする行為は絶対に避けてください。これらの行為は名誉毀損やプライバシー侵害となり、逆にあなたが損害賠償を請求されるリスクがあります。
- 証拠の確保:肉体関係を示す客観的な証拠(LINEのやり取り、写真、ホテルに出入りする写真など)をしっかりと集めましょう。
- 法的なアプローチの検討:相手が学生であっても、弁護士を通じて冷静に内容証明郵便を送り、話し合いによる解決や親を交えた立替払いの協議を行うのが最も確実で安全な回収方法です。
まとめ
学生(大学生・専門学校生)の不倫相手に対する慰謝料問題は、本人に資力がないことや、親への波紋、将来の就職への影響など、特有の複雑さを抱えています。
親に任意で立て替えてもらうにしても、就職後に将来の差し押さえリスクを抱えるにしても、放置すればするほど事態は悪化する傾向にあります。
当法律事務所では、学生特有の事情に配慮した慰謝料の減額交渉や、確実な回収のための法的サポートを多数手がけております。一人で悩むことなく、まずは一度、専門家である弁護士へご相談ください。