【利用可能な救済制度】整備工場等に雇用されて働いていた労働者で、業務上の理由により石綿関連疾患を発症したと認められる場合は、労働者災害補償保険(労災保険)の給付対象となります。また、労災の対象とならない場合や自営等で作業していた場合は、石綿健康被害救済法に基づく各種給付(医療手当や葬祭料など)の申請を検討することができます。
旧型タクシー車両の整備作業とアスベストの歴史
かつての国内のタクシー業界を支えた代表的な車種、例えばトヨタのコンフォート初期型や日産のセドリックなどの旧型車両には、耐熱性や摩擦性に優れた石綿(アスベスト)が多くの重要保安部品に使用されていました。
タクシーは一般の乗用車と比較して圧倒的な走行距離を誇り、都心部や市街地での頻繁な加減速を繰り返すため、ブレーキやクラッチの摩耗が非常に早いという特徴があります。そのため、ディーラーの専門整備士だけでなく、タクシー事業者の自社整備工場や個人の整備工場において、これらの部品交換やメンテナンスが日常的に行われていました。
当時の整備現場では、摩耗した粉じんを吹き飛ばすためのエアブロー(圧縮空気による清掃)が日常的に行われており、目に見えないほど微細なアスベスト粉じんを吸い込んでしまう環境が存在していました。
アスベストが含まれていた主な自動車部品
自動車整備におけるアスベストばく露の原因は、主に摩擦材として使用されていた部品の交換・削合・清掃作業にあります。特に旧型タクシー車両で交換されていた以下の部品には、当時アスベストが含まれていました。
- ブレーキライニングおよびブレーキパッド: ドラムブレーキやディスクブレーキの制動時に摩擦を受ける部分であり、交換作業が行われていました。
- クラッチディスクおよびクラッチカバー: マニュアルトランスミッション車が主流だった当時のタクシーでは、クラッチの摩耗による交換作業が行われていました。
- ガスケットおよびパッキン: エンジン周辺や排気系のシール材として使用されていました。
これらの部品は、交換の際に摩耗粉が発生するだけでなく、適合させるためにヤスリで削ったり、エアガンで周囲の粉じんを吹き飛ばしたりする際に飛散する性質を持っていました。
自動車整備士やタクシー事業者が直面する健康リスク
アスベストの最大の特徴は、その非常に長い潜伏期間にあります。粉じんを吸い込んでから、中皮腫や肺がん、アスベスト肺といった深刻な健康被害を発症するまでには、20年から40年以上という長い年月がかかります。
若い頃にガソリンスタンドや自動車整備工場、タクシー会社の整備部門で働いていた方々が、定年退職後や高齢期を迎えてから息切れや胸痛などの症状を訴え、医療機関を受診した結果、アスベスト関連疾患と診断されるケースがあります。
「昔、ブレーキの粉を浴びながら作業をしていた」「エアブローで清掃していた」といったご記憶がある方は、体調に変化がないか注意深くご自身の健康状態を把握することが重要です。
利用可能な法的な救済・補償制度について
自動車整備におけるアスベストばく露については、前述の通り国の建設アスベスト給付金や泉南型の国家賠償請求訴訟の対象とはなりませんが、以下の公的補償制度を利用できる可能性があります。
- 労災保険の申請: 整備工場等に労働者として雇用され、業務により石綿にばく露して指定疾患を発症した場合、労働者災害補償保険法に基づく療養補償給付や障害補償給付、遺族補償給付などの申請を行うことができます。
- 石綿健康被害救済法(独立行政法人環境再生保全機構): 労災保険の支給対象とはならない一人親方や、労働者のご遺族などで、国内での石綿ばく露により中皮腫や肺がんなどの指定疾病を発症したと認められた場合、医療手当や葬祭料などの救済給付が支給されます。
これらの制度を利用するためには、当時の作業歴を証明する資料や、医療機関による正確な診断書・カルテが必要不可欠となります。
専門家や関係機関へのご相談について
旧型タクシー車両の整備に伴うアスベストばく露や、それに伴う健康不安・労災申請手続きなどについては、状況に応じて専門の弁護士や労働基準監督署、各地の労災病院などの専門窓口へご相談されることをお勧めいたします。
ご自身の職歴や発症した疾患に応じ、どの制度に基づく手続きを進めるべきか正確な見極めを行うことが重要となります。
⚠️ 【新規ご相談受付一時停止のお知らせとお詫び】
現在、相談枠の上限に達しているため、当事務所におけるアスベスト(石綿)健康被害給付金・賠償金請求に関する新規個別相談の受付を一時停止しております。ご不便をおかけし誠に申し訳ございません。
- 独立行政法人 環境再生保全機構(石綿健康被害救済制度):
0120-389-931(平日 10:00〜17:00 / 通話料無料) - 厚生労働省 労災保険相談ダイヤル(建設アスベスト給付金等):
0570-006031(月〜金 8:30〜17:15 / ※申請はお近くの労働基準監督署へ) - 法テラス(日本司法支援センター): 0570-078374(平日 9:00〜21:00、土曜 9:00〜17:00)
- 全国の弁護士会 法律相談センター: 全国の弁護士会にて各種法律相談が開設されています。
