工場アスベスト訴訟の対象となる就労期間(昭和33年〜昭和46年)と「局所排気装置」の要件

【本記事の監修者】
弁護士 井上 正人(大阪弁護士会所属 / 登録番号:第43449号 / 弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表弁護士)
※本記事は、建設アスベスト給付金法、泉南アスベスト国賠訴訟判例、労災保険・石綿救済法および厚生労働省の最新認定基準に基づき、法律実務の視点からわかりやすく解説しています。

Q 昭和33年から昭和46年までの間に工場で働いていましたが、アスベスト訴訟で国の賠償金を受け取るための要件は何ですか?
A 【対象期間と局所排気装置の要件】昭和33年5月26日から昭和46年4月28日までの間に、石綿を製造・加工する工場等で粉じん発散作業に従事し、中皮腫や肺がんなどの健康被害を発症した労働者およびご遺族は、国に対して国家賠償請求(最大1,300万円の給付金等)を行うことができます。この期間、国が工場に対して局所排気装置の設置義務付けなどの規制権限を行使しなかったことが、最高裁判所で違法と認められています。
【無料診断と証拠収集の重要性】要件を満たしているか確認するためには、当時の就労履歴がわかる源泉徴収票や雇用契約書、および病名が記載された医療機関のカルテが必要です。しかし、資料が手元にない場合でも弁護士が調査をサポートできる場合があります。時効(除斥期間:原則として死亡から20年など)に注意が必要なため、まずは専門の弁護士による無料診断を活用し、速やかに法的相談を行うことを強くおすすめします。

工場でのアスベスト(石綿)粉じんの吸入によって、中皮腫や肺がんなどの深刻な健康被害を発症された方、およびそのご遺族にとって、国に対する損害賠償請求(工場型アスベスト訴訟)は、正当な補償を受けるための重要な手段です。

この訴訟を進める上で、特に重要な意味を持つのが「昭和33年5月26日〜昭和46年4月28日」という特定の就労期間と、法律で定められた「局所排気装置」の設置要件です。

本記事では、夕陽ヶ丘法律事務所の弁護士が、国への賠償請求における法的な仕組みと、要件を満たすために確認すべきポイントを分かりやすく解説します。

工場型アスベスト訴訟とは何か

工場型アスベスト訴訟とは、防じんマスクの着用が十分でなかったり、粉じん対策が講じられていなかったりした石綿工場において、アスベストを吸い込んで健康被害を被った労働者(またはご遺族)が、国に対して損害賠償を求める国家賠償請求訴訟のことです。

最高裁判所の判決をはじめとする司法判断により、国が石綿粉じんの危険性を認識しながら、工場に対して適切な換気装置の設置などの規制権限を行使しなかったことは違法であると明確に認められました。

これにより、一定の要件を満たす被害者に対して、国が賠償金を支払う仕組みが確立されています。

対象となる就労期間(昭和33年5月26日〜昭和46年4月28日)の意味

国に対する賠償請求が認められるためには、原則として昭和33年5月26日から昭和46年4月28日までの期間内に、特定の工場等でアスベスト粉じんにさらされる作業に従事していたことが必要となります。この期間が設定されている背景には、労働安全衛生法制の歴史的な経緯があります。

昭和33年5月26日の法的根拠

昭和33年5月26日、当時の「労働基準法」に基づく労働衛生に関する省令(旧特定化学物質等障害予防規則の前身に関連する規定など)が整備され、国が石綿粉じんの有害性を本格的に認識し、具体的な防護措置を命じる権限を持つに至った基準日とされています。この日以降、国には労働者の生命と健康を守るために規制権限を適切に行使すべき法的義務が生じたと考えられています。

昭和46年4月28日の法的根拠

昭和46年4月28日、「特定化学物質等障害予防規則(特化則)」が施行されました。この法律の施行により、アスベストを取り扱う工場に対して、より強力かつ具体的な局所排気装置の設置義務が直接課されるようになりました。したがって、法的な規制の空白期間や、国の責任が直接問われる期間の終期として、この日付が区切りとなっています。

「局所排気装置」の設置要件と工場の定義

上記の期間中に、どのような工場でどのような作業をしていた人が対象となるのでしょうか。ここで鍵となるのが「局所排気装置」を設置すべきであった場所での就労実績です。

局所排気装置とは

局所排気装置とは、アスベストなどの有害な粉じんが発生する作業場所において、粉じんが作業者の呼吸器に吸い込まれる前に、発生源のすぐ近くで吸引・捕集するための換気装置のことです。

国は、昭和33年5月26日以降、危険な粉じんを発散する作業場に対して、こうした装置を設置させるなどの規制を行う権限を有していました。しかし、実際には多くの工場で設置が遅れ、労働者が高濃度のアスベストにさらされる原因となりました。

対象となる作業・工場の具体例

訴訟の対象となるのは、単に工場内にいたというだけではなく、粉じんを飛散させる業務に直接従事していた方です。具体的には以下のような作業が該当します。

  • 石綿を原材料として使用する製品(建材、断熱材、織物など)の製造工程
  • 石綿製品を削る、切る、混ぜるなどの加工・取り扱い作業
  • 石綿を吹き付ける作業や、粉じんが充満する場所での補助作業

ご自身やご家族が働いていた工場に局所排気装置が適切に設置されていなかった場合や、もうもうと粉じんが舞う環境で作業をしていた場合は、この要件を満たす可能性が非常に高いと言えます。

賠償金請求に向けて準備すべきこと

工場型アスベスト訴訟を進めるにあたっては、法的な要件を満たしていることを証明するための証拠を集める必要があります。主な必要書類や情報は以下の通りです。

  • 医療関係の資料:じん肺管理区分、中皮腫や肺がんなどの診断書、病理組織検査結果、カルテなど
  • 就労歴を証明する資料:源泉徴収票、離職票、雇用保険の被保険者記録、健康保険証の写し、社内報、同僚の陳述書など
  • 工場環境に関する資料:当時の作業状況を示す図面、写真、マニュアル、局所排気装置の有無に関する記憶や証言

特に、昭和33年から昭和46年頃の古い記録を集めることは容易ではない場合もありますが、弁護士が介入することで、労働基準監督署や年金事務所、企業からの資料取り寄せなどをサポートすることが可能です。

まとめ:要件に該当するかどうかは専門の弁護士へご相談ください

昭和33年5月26日から昭和46年4月28日までの間に石綿関連工場で就労し、健康被害を被った方は、国に対して損害賠償を請求できる権利があります。「局所排気装置」の設置状況や具体的な作業内容についての詳細な調査が必要となるため、自己判断せず、専門的な知識を持つ弁護士に相談することをおすすめします。

夕陽ヶ丘法律事務所では、アスベスト被害に関するご相談を幅広く受け付けております。複雑な法的手続きや証拠集めについても、親身になってサポートいたしますので、まずはお気軽にお問い合わせください。

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弁護士 井上正人

この記事の監修

弁護士 井上 正人
(いのうえ まさと)

大阪弁護士会所属(登録番号:43449)
弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表

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