新宿野村ビル・損保ジャパン本社ビル建設におけるダクト保温石綿

【本記事の監修者】
弁護士 井上 正人(大阪弁護士会所属 / 登録番号:第43449号 / 弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表弁護士)
※本記事は、建設アスベスト給付金法、泉南アスベスト国賠訴訟判例、労災保険・石綿救済法および厚生労働省の最新認定基準に基づき、法律実務の視点からわかりやすく解説しています。

Q 新宿野村ビルや損保ジャパン本社ビルの建設でダクト保温作業をしていましたが、建設アスベスト給付金の対象になりますか?
A 【対象者と給付金額】新宿野村ビルや損保ジャパン本社ビルなどの昭和期の超高層ビル建設において、空調ダクトの保温や配管被覆工事に従事し、中皮腫や肺がんなどの指定疾病を発症された方は、国から最大1,300万円の建設アスベスト給付金を受け取る法的権利があります。
【請求のポイントと相談の流れ】被災されたご本人だけでなく、亡くなられたご遺族からのご相談も可能です。時効(提訴期限)に注意が必要なほか、当時の作業実態を示す就歴証明や医療カルテの収集が不可欠となるため、アスベスト問題に精通した弁護士による無料診断の活用をおすすめします。

昭和の超高層ビル建設とアスベスト被害の背景

日本が高度経済成長期から安定成長期へと移行する1970年代、東京都心の新宿副都心エリアをはじめとする各地で、次々と超高層ビルが建設されました。その代表例が、1978年に竣工した新宿野村ビルや、1976年に竣工した損保ジャパン本社ビル(現:損保ジャパン東郷青児美術館ビルなど含む旧安田火災海上保険ビル)です。

これらの巨大建築物は、鉄骨造や鉄骨鉄筋コンクリート造で作られ、火災時の延焼を防ぐ耐火被覆や、ビル内の快適な環境を維持するための大規模な空調設備(HVACシステム)が不可欠でした。当時の建築基準法や技術基準を満たすため、耐熱性・断熱性に優れた石綿(アスベスト)が、ビル全体の至るところで「魔法の断熱材」として重宝され、使用されてきたのです。

しかし、その裏で、現場の施工に携わった多くの職人たちが、知らず知らずのうちに有害なアスベスト粉じんに曝露していました。時は流れ、数十年の潜伏期間を経て、中皮腫や肺がん、石綿肺といった不可逆的な健康被害が顕在化しています。夕陽ヶ丘法律事務所には、こうした超高層ビルの建設現場で働いていたご本人やご遺族からの相談が数多く寄せられています。

空調ダクト保温・配管被覆工事における石綿の実態

超高層ビル建設において、特にアスベストの飛散量が多く、危険性が高かった作業の一つが「空調ダクトの保温工事」および「パイプシャフト(PS)や天井裏における配管の保温・被覆工事」です。

新宿野村ビルや損保ジャパン本社ビルのような大規模ビルでは、ビル全体に張り巡らされた巨大な亜鉛鉄板製の空調ダクトに対して、結露防止や熱効率向上を目的とした保温材の巻き付け作業が行われました。

  • 保温材の切断・加工: 石綿含有の保温板やフェルト、ひも状のパッキンなどを現場で寸法に合わせてノコギリやカッターで切断する際、無数の細かい石綿粉じんが周囲に舞い散りました。
  • 吹き付け・吹付ロックウール施工の補助: ダクト周りや梁、柱の耐火被覆として石綿を含んだ材料が吹き付けられる際、その近隣でダクトや配管の取り付け作業を行う職人が、高濃度の粉じらを大量に吸い込みました。
  • 仕上げの左官・包帯巻き作業: 保温材の上から麻布などのクロスを巻き、石綿を含むモルタルやセメント系の仕上げ材をコテで塗布したり、水で溶いた粉末状の結合材を混ぜ合わせたりする工程で、多量の粉じんが発生しました。

これらの作業は、まだ換気が十分に整っていない閉鎖的なビル内部のフロアや、狭いパイプシャフト内で行われることが多く、防塵マスクの性能も現代ほど高くなかったため、作業者は逃れられない環境で粉じんを吸い込むことになりました。

対象となる主な職種と当時の作業環境

新宿野村ビルや損保ジャパン本社ビルなどの巨大プロジェクトには、元請けゼネコンだけでなく、数多くの専門工事業者が参入していました。アスベスト被害で法的な救済対象となり得る主な職種は以下の通りです。

  • 保温工・ラガークラー: ダクトや配管にグラスウールやロックウール、そして石綿を含む保温材を巻き付け、外装を仕上げる作業に従事していた方。
  • ダクト工・空調設備工: ビル内の空調ダクトの制作・搬入・取り付けを行い、保温工の作業と並行して、あるいは同一空間で作業していた方。
  • 配管工・衛生設備工: 給排水管、消火配管、冷温水管などのパイプ設置およびその周辺の耐火・保温被覆に関わった方。
  • 内装工・ボード工・仕上げ工: 天井や壁の下地組み、ボード貼り、石綿を含む仕上塗材の施工に関わった方。

これらの作業に従事した方は、直接石綿を扱っていなくても、「同じフロアや至近距離で他職方の石綿作業による粉じんを吸引した(間接曝露)」というケースであっても、法律上の要件を満たせば給付金や賠償金の受給対象となります。

国に対する建設アスベスト給付金の仕組み

昭和の超高層ビル建設工事においてアスベスト粉じんに曝露し、健康被害を負った方については、国に対して「建設アスベスト給付金」を請求することが法律で認められています。

この制度は、国が昭和の高度経済成長期からビル建築現場におけるアスベストの危険性を認識しながら、適切な規制を行わなかった責任を認めて創設されたものです。

  • 請求の要件: 1972年10月1日から1987年12月31日までの間に、一定の屋内作業場所(超高層ビルの建設現場など)において、石綿にさらされる作業に従事したこと。
  • 対象となる病気: 中皮腫、肺がん、著しい呼吸機能障害を伴う良性石綿胸水、びまん性胸膜肥厚、および石綿肺。
  • 給付金の額: 病気の重症度に応じて、最高1,300万円から最低115万円まで段階的に定められています(※死亡から提訴までの期間等の要件あり)。
  • 出訴期限(時効): 法律上の権利行使には期限が定められているため、該当する診断を受けた場合は、速やかに弁護士へご相談いただくことが極めて重要です。

建材メーカーに対する損害賠償請求

国からの給付金受給だけでなく、当時アスベストを含んだ保温材や吹付材、建材を製造・販売していたメーカー企業に対して、民法に基づく損害賠償を請求することも可能です。

最高裁判所の判決においても、石綿建材メーカーは「製品に石綿が含まれており、危険であることについての警告表示を行う義務があった」として、その責任が明確に認められています。

  • 企業の責任追及: 新宿野村ビルや損保ジャパン本社ビルのような大規模建築で使用された特定のメーカー製保温材や耐火被覆材を特定し、法的責任を問い正します。
  • 和解解決の流れ: 多くのメーカーとの間では、裁判所の手続きを通じて一定の基準に基づき和解金を早期に受け取るための枠組みが整備されています。
  • 弁護士による調査: どのメーカーの製品が使われていたか不明な場合でも、当時の建築仕様書、施工図面、元請けゼネコンの記録、同僚の証言などを専門的な知見から調査し、請求を組み立てます。

新宿エリアの超高層ビル建設に従事された方へ(弁護士からのメッセージ)

新宿野村ビルや損保ジャパン本社ビルをはじめとする昭和の超高層ビルは、日本の近代化と経済発展の象徴です。その壮大な建造物を自らの手で作り上げた職人の皆様の技術とご苦労があったからこそ、今日の都市の繁栄があります。

その誇りある仕事の最中に、有害な石綿に曝露し、現在病と闘っておられる方、あるいは大切なご家族を亡くされたご遺族の皆様がいらっしゃいます。国や企業に対して責任を問い、正当な補償を受けることは、被害者ご本人とご家族の尊厳を取り戻すための正当な権利です。

夕陽ヶ丘法律事務所では、建設アスベスト問題に関する豊富な解決実績と専門知識を持つ弁護士が、初回のご相談から資料収集、法的手続きの代行まで、ご依頼者様の負担を最小限に抑えながら誠心誠意サポートいたします。「自分が対象になるか分からない」「当時の記録が手元にない」という段階であっても、どうぞ安心してご相談ください。

⚠️ 【新規ご相談受付一時停止のお知らせとお詫び】

現在、相談枠の上限に達しているため、当事務所におけるアスベスト(石綿)健康被害給付金・賠償金請求に関する新規個別相談の受付を一時停止しております。ご不便をおかけし誠に申し訳ございません。

【主な公的相談窓口・専門機関】
  • 独立行政法人 環境再生保全機構(石綿健康被害救済制度):
    0120-389-931(平日 10:00〜17:00 / 通話料無料)
  • 厚生労働省 労災保険相談ダイヤル(建設アスベスト給付金等):
    0570-006031(月〜金 8:30〜17:15 / ※申請はお近くの労働基準監督署へ)
  • 法テラス(日本司法支援センター): 0570-078374(平日 9:00〜21:00、土曜 9:00〜17:00)
  • 全国の弁護士会 法律相談センター: 全国の弁護士会にて各種法律相談が開設されています。
🏗️アスベスト給付金コラム・基礎知識一覧を見る
← 前の記事世界貿易センタービル(浜松町)建設現場での吹き付けアスベスト作業
次の記事 →赤坂プリンスホテル(旧新館)・ホテルニューオータニ建設工事
📂 昭和メガプロジェクト・超高層ビル 一覧へ
TOP