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昭和期のエレベーター保守と石綿(アスベスト)ばく露の背景
高度経済成長期から昭和の終わりにかけて、日本国内では急速に高層ビルや商業ビル、マンションなどの建設が進みました。それに伴い、人の移動に欠かせないエレベーター(昇降機)の設置も爆発的に増加しました。
当時のエレベーターは、最上部に設置された「機械室」の中に巻上機(モーターや減速機)が収められており、その安全な運行を支えるための重要な部品としてブレーキ装置が使われていました。このブレーキ装置の摩擦材(ライニングやシュー)には、高い耐熱性と摩擦耐性を持つ石綿が多用されていたのです。
保守点検や定期検査、部品の交換などを専門に行っていた技術者やメンテナンス作業員は、閉鎖的な機械室という空間の中で、石綿を含む部品の加工や摩耗粉の清掃作業を日常的に行っていました。当時の作業環境では防じんマスクの着用が徹底されていないことも多く、これが原因で何十年も経った後に健康被害を訴える方が後を絶ちません。
エレベーターのブレーキ装置点検における具体的なリスク作業
エレベーターの保守点検において、どのような場面で石綿にばく露する危険性があったのでしょうか。主な作業内容は以下の通りです。
- ブレーキライニングの摩耗粉の清掃: ブレーキが作動するたびにライニングが摩耗し、機械室の床やブレーキカバーの内側に石綿を含んだ粉じんが堆積しました。これを刷毛(はけ)やウエス、あるいはエアブロー等で清掃する際、粉じんが空気中に飛散して大量に吸い込みました。
- ブレーキシューの交換・調整作業: 摩耗したブレーキパッドやライニングを新しいものに交換する際、サイズを合わせるためにやすりがけや切断加工が行われ、その際に細かな粉じんが発生しました。
- 機械室内の換気不良による滞留: ビルの屋上階や最上部に位置することが多い機械室は、当時は十分な換気設備が整っていないケースも多く、限られた空間内に石綿粉じんが長時間滞留しやすい環境でした。
これらの作業に従事していた方々は、直接エレベーターの製造メーカーに勤務していなくても、ビルメンテナンス会社、昇降機保守点検業者の作業員として、あるいは個人事業主として様々な建物の点検を担当し、知らず知らずのうちに石綿を吸い込んでいた可能性があります。
対象となる健康被害と発症までの潜伏期間
石綿を吸入してから病気が発症するまでには、非常に長い年月がかかるという特徴があります。一般的に、10年から40年、あるいは50年もの長い潜伏期間を経て、以下のような深刻な石綿関連疾患を発症することが知られています。
- 石綿肺(アスベスト肺): 吸入した石綿粉じんが肺の線維化を引き起こす病気です。長期のばく露によって発症し、息切れや咳などの症状が現れます。
- 肺がん: 石綿ばく露によって引き起こされる肺の悪性腫瘍です。喫煙歴との相乗効果もありますが、非喫煙者であっても石綿によって発症することが立証されています。
- 中皮腫: 胸膜、腹膜、心膜などに発生する非常に悪性度の高いがんです。ごくわずかな石綿の吸入であっても発症することが知られており、エレベーター保守点検時の短時間の作業であっても発症リスクが認められています。
- 良性石綿胸水・プラーク(胸膜斑): 胸膜に水がたまったり、石綿による肥厚斑が生じたりするもので、これ自体が労災や給付金の重要な認定要件となります。
もし、ご本人やご家族がこうした病気と診断され、過去にエレベーターの保守点検や昇降機のメンテナンス作業に携わった経歴がある場合は、法的な救済制度の対象となる可能性が極めて高いといえます。
国からの給付金(建設アスベスト給付金)および損害賠償請求について
昭和期のエレベーター点検作業における石綿被害については、国に対して法的責任を追及し、建設アスベスト給付金や、当時の製造メーカー等に対する損害賠償請求を行うことができます。
1. 国に対する給付金の請求
国は、防じんマスクの着用義務付けなどの規制を怠ったとして、最高裁判所の判決等でその責任が確定しています。一定の要件を満たす労働者や一人親方等に対して、国から損害賠償金(給付金)が支払われる仕組みが法律で整備されています。
- 対象者の要件: 昭和40年代から平成の特定時期にかけて、屋内等の粉じん飛散を伴う作業(エレベーター等の保守点検・据付・解体など)に従事したこと。
- 病状の要件: 中皮腫、肺がん、石綿肺、良性石綿胸水などの診断を受けていること。
- 請求期限: 法律に定められた期限(原則として提訴の期限や除斥期間がありますので、お早めの行動が不可欠です)内に手続きを行う必要があります。
2. メーカーや元請け企業に対する損害賠償請求
エレベーターの製造メーカーや、保守点検を元請けとして受注していた企業に対して、安全配慮義務違反や製造物責任を問い、損害賠償を請求することも可能です。国からの給付金とは別に、民間企業との和解や訴訟を通じて適正な賠償金を受け取る道が開かれています。
夕陽ヶ丘法律事務所がサポートする解決へのステップ
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- 請求手続きの代理: 国への給付金支給申請手続き、あるいは必要に応じた裁判上の和解手続きなどを、専門の弁護士が全面的に代行いたします。
- 賠償金・給付金の受給: 適正な金額の給付金や賠償金が確実に支払われるよう、最後まで責任を持って伴走いたします。
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