【弁護士による示談交渉・合意書のサポート】分割払いに応じる際は、滞納時のペナルティ(期限の利益喪失条項)や連絡先変更時の通知義務などを盛り込んだ正確な示談書を作成する必要があります。自己流の合意では法的な穴が生じやすいため、弁護士に依頼して確実な回収の仕組みと万全の防衛策を講じることを強く推奨します。
不倫の慰謝料を請求した際、相手方から「一括で支払う資力がないため、毎月〇万円ずつの分割払いにしてほしい」と申し出られるケースは非常に多くあります。
被害者側としては一刻も早く解決して気持ちの整理をつけたい一方、「分割にした途端に連絡が取れなくなるのではないか」「途中から支払いを放棄されるのではないか」という強い不安を抱くのは当然のことです。
この記事では、不倫の示談金を分割払いに応じる場合の最大のリスクである「不払い」を防ぎ、確実に慰謝料を回収するための具体的な法律上の対策について、夕陽ヶ丘法律事務所の弁護士が詳しく解説します。
分割払いに潜む大きなリスクとは
相手から「毎月必ず払うから」と言葉だけで約束され、個人の間で作成した簡易的な示談書だけで分割払いに合意してしまうことは、実務上非常に危険です。
口頭の約束や、法的効力の弱い私的な合意書だけの場合、以下のようなトラブルが発生するリスクが高まります。
- 数回支払った後に「お金がない」「生活が苦しい」と言い訳をして連絡が途絶える
- 転職や引っ越しをされてしまい、居場所が分からなくなる
- 「そんな約束はしていない」「脅されて書かされた」などと言い逃れをされる
もし相手が支払いを止めてしまった場合、泣き寝入りをしないためには裁判を起こして勝訴判決を得る必要があります。しかし、裁判には時間も費用も精神的な負担もかかります。そのため、最初から「不払いが起きない仕組み」を作っておくことが何よりも重要なのです。
分割払いの不払いを防ぐ最も有効な手段「公正証書」
分割払いに合意する場合に、不払いを防ぐための最も強力かつ確実な手段が、公証役場で作成する「強制執行認諾文言付き公正証書」です。
公正証書とは何か
公正証書とは、法律の専門家である公証人が、当事者双方の合意に基づいて作成する公文書です。裁判所の判決と同等かそれに準ずる強い証明力と法的効力を持ちます。
「強制執行認諾文言」の威力
公正証書の中に「債務者は、本契約に基づく金銭債務の履行を怠ったときは、直ちに強制執行に服するを承諾した」という文言(強制執行認諾文言)を入れておくことが極めて重要です。
この文言が入った公正証書を作っておけば、万が一相手が約束の期日にお金を支払わなかった場合、通常の裁判を起こすことなく、すぐに裁判所に対して強制執行(差し押さえ)の手続きを申し立てることができます。
相手の給与や預貯金口座、マイカーなどの財産を差し押さえて強制的に回収できるため、相手にとっても「支払いを滞らせればすぐに給与の差し押さえが会社にバレてしまう」という強いプレッシャーになり、不払いの抑止力として絶大な効果を発揮します。
公正証書を作成する際の流れとポイント
強制執行認諾付き公正証書を作成するための基本的な手順と、実務上のポイントは以下の通りです。
- 示談条項の合意:慰謝料の総額、分割払いの毎月の金額、支払期日、振込先口座、支払いが遅れた場合の遅延損害金などを当事者間で取り決めます。
- 公正証書案の作成:合意内容をまとめた書面を作成し、管轄の公証役場に提出して内容を確認してもらいます。
- 公証役場での署名・捺印:原則として当事者双方(または代理人弁護士)が公証役場に出頭し、公正証書に署名・捺印を行います。
公正証書を作成する際には、以下の詳細な条件を必ず盛り込むようにしましょう。
1. 期限の利益喪失条項
「分割払いのうち、1回でも(または2回以上)支払いを怠ったときは、当然に期限の利益を失い、残金全額を一括して直ちに支払う」という条項です。 この条項がないと、1回分が未払いになったとき、その月の分しか差し押さえることができません。この条項を入れておくことで、不払いが発生した瞬間に「残額の全額」を一括請求・差し押さえできるようになります。
2. 遅延損害金の定め
支払いが遅れた場合、本来の金額に上乗せしてペナルティ(遅延損害金)を請求できる規定を設けます。年利「14.6%」または「年3%(民法改正後の法定利率)」などを設定するのが一般的です。
公正証書以外の不払い防止策(連帯保証人の設定など)
相手に資力が乏しく、公正証書を作る費用や手間を惜しむ場合や、より確実に回収を担保したい場合には、以下のような追加の対策を検討することもあります。
- 連帯保証人を立てる:相手の親族などを連帯保証人として示談書(または公正証書)に加える方法です。本人に支払い能力がなくても、連帯保証人に請求・差し押さえが可能になります。
- 一括請求への切り替え交渉:分割払いではなく、親族からの援助や借入れなどを検討してもらい、できる限り一括払いに近づけるよう交渉するのも一つの防衛策です。
ただし、配偶者に内緒で不倫問題を解決したい場合(いわゆる「内密解決」を希望する場合)、親族を連帯保証人にすると不倫の事実が知られてしまうリスクがあるため、状況に応じた慎重な判断が必要です。
まとめ:分割払いの合意は必ず弁護士にご相談を
不倫の示談金を分割払いにすることは、相手の資力次第ではやむを得ないケースもありますが、事前の備えを怠ると「払ってもらえなくなる」という大きなリスクを抱えることになります。
ご自身だけで相手と交渉し、曖昧な約束のまま分割払いに応じてしまうと、後々連絡が取れなくなった際に後悔することになりかねません。
公的な相談窓口や弁護士会等では、適正な慰謝料額の算定だけでなく、不払いを確実に防ぐための示談書の作成、公正証書作成のサポート、相手方との交渉の代行までトータルでサポートしております。
分割払いを提案されてお悩みの方、安全に慰謝料を回収したい方は、ぜひ一度法テラスや弁護士会等の公的相談窓口へご相談ください。