【実務上の対応と注意点】本人に支払い能力がない場合、法的に親の代位責任を当然に追及することは困難ですが、親に対して任意の立替払いや連帯保証を交渉・合意書面化するアプローチが実務上極めて有効です。示談書には求償権の放棄や分割払いの不払い条項を盛り込む必要があるため、弁護士にご相談ください。
はじめに:18歳・19歳の不倫相手に対する慰謝料請求の特殊性
配偶者の不倫が発覚したとき、その相手が学生や社会人になりたての若い方、すなわち18歳や19歳の未成年であるケースが増加しています。
民法改正により、2022年4月から成年年齢が18歳に引き下げられました。これにより、18歳以上の人は親の同意なしに有効な契約を結ぶことができるようになり、不法行為に対する責任についても、基本的には成人と同様に自分で負うことになりました。
しかし、法律上の責任があることと、実際に高額な慰謝料を回収できるかどうかは別問題です。社会経験が浅く、十分な貯蓄や安定した収入がない18歳・19歳に対して、どのように慰謝料を請求すればよいのか迷われる方も少なくありません。
弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所の弁護士が、未成年者への慰謝料請求における法的根拠と、確実に回収するための実務的な対応策を分かりやすく解説します。
18歳・19歳の不倫相手本人の責任と請求の基本原則
民法上、不倫(不貞行為)は故意または過失によって他人の権利を侵害する「不法行為(民法第709条)」に該当します。この不法行為に基づいて慰謝料を請求する場合、最も基本となるルールを確認しておきましょう。
成人扱いとなる18歳・19歳は「責任能力」が認められる
法律において、他人に損害を与えた場合にその賠償責任を理解し、自分の行為の責任を弁識するだけの知能(責任能力)を備えているかが問題となります。
最高裁判所の判例や一般的な解釈において、通常の判断能力を有する12歳〜14歳以上の未成年者には、不法行為責任を負うだけの責任能力が認められています。したがって、18歳および19歳の若者であれば、完全な責任能力があるとみなされます。
このため、慰謝料請求の第一のターゲットは、不倫相手である本人自身となります。内容証明郵便の送付や、示談交渉の相手方としても、本人が当事者となります。
親の同意がなくても示談は有効
18歳や19歳の方が締結した示談契約は、未成年者取消権(民法第5条)の対象外となります。親の同意を得ていなかったことを理由に、後から「やっぱり示談をナシにする」ということは原則としてできません。
したがって、本人との間でしっかりと慰謝料の金額や支払い方法についての合意書(示談書)を交わすことが法的にも有効となります。
親(法定代理人・監護者)へ請求できるのか?
「18歳・19歳の子どもがお金を払えないなら、親に全額請求したい」と考える方は非常に多いです。しかし、法律上、親にそのまま請求できるかというと、そう単純ではありません。
親の監督義務と責任の限界
民法第714条には「責任能力のない未成年者の親(法定監督義務者)が責任を負う」という規定がありますが、これはあくまで「責任能力がない子ども(一般に11歳以下程度)」が対象です。
18歳や19歳のように責任能力が認められる子どもの不法行為について、親が当然にその損害賠償責任を負うわけではありません。親に責任を追及するためには、以下のような例外的な事情が必要となります。
- 親の監督義務違反と結果との間に相当因果関係がある場合(例:著しく異常な行動を放置していたなど、極めて限定的)
- 親自身が不倫を積極的に手助けしていたような共同不法行為に該当する場合
実務上、単に「子どもが不倫をした」という事実だけで、親に法的な賠償義務を直接強制することは非常に困難です。
支払い能力がない場合の「実務的な回収対策」
法律上の請求先が本人であったとしても、現実問題として18歳や19歳のアルバイト収入や貯蓄だけで、数百万円規模の慰謝料を支払うことは不可能です。では、泣き寝入りするしかないのでしょうか?
いいえ、実務の現場では、以下のようなアプローチを駆使して現実的な回収を図ります。
1. 親への「任意での立替払い・連帯保証」の交渉
法的な強制力はなくとも、親の社会的立場や誠意に訴えかけ、任意の支払いを交渉することが最大のポイントとなります。
我が子が不倫トラブルを起こしたという事実を知った親の多くは、社会的な信用問題や、将来への悪影響を懸念します。そのため、弁護士を通じて冷静かつ適法に事実を伝え、「将来のある子どものために、親御さん側で立て替えて支払うか、連帯保証人に入ってもらえないか」と協議を持ちかけます。
多くの場合、親御さんが子の将来を案じて一括、あるいは現実的な分割払いの肩代わりに応じてくれるケースが見られます。
2. 長期的な分割払いと公正証書の作成
本人が就職した後の給与から少しずつ支払わせる「長期の分割払い」で合意する場合もあります。ただし、口約束だけでは途中で連絡が取れなくなるリスクがあるため、必ず執行認諾文言付きの公正証書を作成します。
これにより、万が一途中で支払いが滞った際、裁判を起こさずに給与や預貯金の差し押(強制執行)が可能となります。
未成年者との交渉における注意点とトラブル防止策
18歳・19歳の相手やその親と交渉する際には、感情的になりすぎて逆効果にならないための注意が必要です。
直接連絡やSNSでの接触は避ける
配偶者の不倫を知った怒りから、未成年である相手のSNSに直接メッセージを送ったり、自宅や学校、アルバイト先に押しかけたりする行為は厳禁です。
これらは逆に、「名誉毀損」や「脅迫」「ストーカー規制法違反」などとして、こちら側が訴えられるリスクを生んでしまいます。未成年が相手であっても、感情的な私的制裁は避け、書面や代理人弁護士を通じて冷静に法的手段を進めることが鉄則です。
証拠の確保を最優先にする
未成年者との不貞行為においても、慰謝料請求の成否を分けるのは「客観的な証拠」です。ラブホテルに出入りする写真、肉体関係を推認させるメッセージ履歴など、決定的な証拠を事前にしっかりと確保しておきましょう。
証拠が不十分なまま相手の親に連絡しても、しらを切られたり、逆にトラブルがこじれたりする原因になります。
まとめ:18歳・19歳の不倫相手への請求は弁護士にご相談を
本記事のポイントをまとめます。
- 18歳・19歳の不倫相手は「成人」と同様に扱われ、原則として本人自身に慰謝料の支払責任(法的責任)がある。
- 本人に責任能力はあるものの、支払い能力(資力)が乏しいため、親(法定代理人・監護者)に対して任意の立替払いや連帯保証を交渉することが実務上の解決の鍵となる。
- SNSでの攻撃や自宅への押しかけなど、感情的な私的制裁は自身の法的リスクを高めるため絶対に避けるべきである。
- 確実かつ安全に慰謝料を回収するためには、法的な根拠に基づいた書面作成や交渉力が必要不可欠となる。
弁護士法人公的な相談窓口や弁護士会等では、不倫・浮気問題における豊富な解決実績と専門知識を有しています。不倫相手が未成年である複雑な事案についても、依頼者様の精神的なご負担を軽減し、適正な慰謝料回収に向けて全面的にサポートいたします。一人で悩まず、どうぞお気軽にご相談ください。