一問一答・よくある質問Q&A

相手が「事故や病気で余命わずか」な場合、不倫慰謝料は請求できますか?

大阪弁護士会所属 弁護士 井上正人 監修

【本記事の監修者】
弁護士 井上 正人(大阪弁護士会所属 / 登録番号:第43449号 / 弁護士法人 夕陽ヶ丘法律事務所 代表弁護士)
※本記事は、民法第709条(不法行為)、第719条(共同不法行為)、第770条(離婚原因)の規定および多数の不倫・浮気慰謝料請求・減額交渉の実務実績に基づきわかりやすく解説しています。

Q 不倫相手が「余命わずか・病気・事故」と主張してきました。生前や死亡後の慰謝料請求はどうなりますか?
A 【法的有効性と相続人への請求】不倫相手が病気や事故で余命わずかであっても、不法行為責任は消滅しないため生前の本人への請求は可能です。また、万が一お亡くなりになった場合でも、慰謝料請求権は相続財産に含まれるため、相続人(配偶者や子供など)に対して損害賠償請求権を行使することができます。
【実務上の注意点と弁護士相談のメリット】相手が病床にある場合、意思能力の有無確認や、遺産隠し・財産処分を防ぐための迅速な法的措置(公正証書の作成や仮差し押さえ等)が不可欠です。時効や相続放棄といった複雑な法的判断が生じるため、一刻も早く弁護士へ相談し、確実な証拠に基づく適正な慰謝料回収を図ることを強くおすすめします。

不倫の事実を知り、いざ慰謝料を請求しようと動いた矢先に、相手から「自分は今、大病を患っていて余命わずかだ」「事故でいつ命を落とすかわからない」と告げられるケースがあります。このような状況に直面すると、「病気の人にお金を請求してもいいのだろうか」「亡くなってしまったら請求権は消えてしまうのではないか」と戸惑ってしまう方が少なくありません。

しかし、法律上、不倫という不法行為によって受けた精神的苦痛に対する賠償責任は、加害者の健康状態によって免除されるものではありません。本記事では、余命わずかな相手に対する不倫慰謝料の法的取り扱いや、実務上注意すべきポイントについて詳しく解説します。

生前に請求する場合の法的な考え方

不倫相手が病気や事故で余命わずかであったとしても、生存している以上は、その人自身に対して慰謝料を請求することに何ら法的障害はありません。

不法行為に基づく損害賠償請求権は、被害者が受けた精神的・経済的損害を金銭によって填補するための制度です。加害者の余命が短いという事情は、慰謝料の発生そのものを否定する理由にはなりません。

話し合いや合意書(示談書)の締結

相手が病床にある場合であっても、意思能力(自分の行為の結果を弁識する能力)がしっかりと保たれているのであれば、直接話し合いを行って示談書を交わすことが可能です。

示談書を公正証書として作成しておくと、万が一相手が亡くなった際にも、遺産に対する強制執行の手続きを円滑に進めやすくなるというメリットがあります。余命が限られているからこそ、迅速かつ確実な合意形成が求められます。

相手が亡くなってしまった場合の相続人への請求

最も懸念されるのが、「もし請求の途中で相手が亡くなってしまったらどうなるのか」という点でしょう。

結論からお伝えすると、不倫相手が亡くなった場合でも、その相続人に対して慰謝料を請求することが可能です

相続されるのは「借金」と同じ性質

法律上、人が亡くなると、その人が持っていた財産だけでなく、マイナスの財産(借金や損害賠償債務など)も原則として相続人に引き継がれます。

不倫慰謝料の支払い義務は、不法行為に基づく損害賠償債務という「金銭債務」です。そのため、相手が死亡した時点ですでに発生していた損害賠償請求権は、相続人全員に法定相続分に応じて引き継がれることになります。

相続人への請求における留意点

相続人へ請求する場合、いくつかの実務的なハードルや注意点が存在します。

  • 相続人の調査と特定: 亡くなった相手の戸籍をたどり、誰が相続人であるかを正確に把握する必要があります。
  • 相続放棄のリスク: 相続人の中には、多額の借金やマイナスの財産を恐れて「相続放棄」を選択する人がいます。相続放棄が家庭裁判所に受理されると、その人は最初から相続人でなかったことになり、不倫慰謝料の支払い義務も引き継ぎません。
  • 遺産分割協議の行方: 相続人間でどのような遺産分割が行われるかによって、資力の有無や回収の難易度が変わってきます。

もしすべての相続人が相続放棄を選択した場合、故人の財産も債務も誰も引き継がない状態となります。この場合、相続人個人に対して慰謝料を請求することは原則としてできなくなってしまいます。

「余命わずか」という言葉の真偽を見極める重要性

実務の現場では、慰謝料請求を逃れたり、支払いを遅らせたりする目的で、「自分は余命わずかである」「もうすぐ死ぬから許してほしい」といった同情を誘う発言をする不倫相手や配偶者が存在します。

このような言葉を鵜呑みにして請求を躊躇しているうちに、時効が完成してしまったり、財産を隠されたりする危険性があります。

客観的な証拠や事実確認の必要性

本当に深刻な病気や事故であるのか、あるいは単なる口実であるのかを見極めるためには、感情的に流されるのではなく、客観的な事実に基づいて判断することが大切です。

  • 本当に医療機関に入院しているのか
  • 診断書や病状を証明する客観的な資料はあるのか
  • 財産隠しや資産の移転が行われていないか

特に、相手が病気であることを理由に連絡を絶たれたり、話し合いから逃れようとしたりする場合は注意が必要です。

このような状況でお悩みの方へのアドバイス

「相手が余命わずかだと言っているけれど、どう対応すべきかわからない」 「相手が亡くなった後でも、残された家族に慰謝料を請求できるのか不安」 「相手の資産状況や相続人が誰になるのか調査したい」

こうした特殊な事情が絡む不倫慰謝料の問題は、通常のケースに比べて法的な判断や手続きが極めて複雑になります。時間の経過とともに、相手の資産が処分されたり、相続放棄の手続きが進んでしまったりするリスクもあるため、迅速な対応が不可欠です。

公的な相談機関や専門窓口では、個別の事情を丁寧にヒアリングし、残された時間や状況に合わせた最適な法的アプローチをご提案しております。一人で悩むことなく、どうぞお気軽にご相談ください。

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弁護士 井上正人

この記事の監修

弁護士 井上 正人
(いのうえ まさと)

大阪弁護士会所属(登録番号:43449)
弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表

相続や遺産分割、交通事故の賠償問題をはじめ、事業者様を狙う求人広告詐欺の被害救済やオフィス・テナント等の原状回復トラブルなど、不測の事態に直面した皆様の精神的・経済的なご負担を少しでも和らげ、正当な権利の実現と円満な解決へと導くためのサポートを徹底して行っています。

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