【相手の資力不足を主張された場合の正しい対処と弁護士相談のメリット】相手がお金がないと主張しても、一括払いが難しい場合は分割払いや公正証書の作成、求償権の放棄といった法的な落とし所を検討します。個人の交渉では言いくるめられる恐れがあるため、弁護士に依頼して相手の資力調査や確実な回収、示談書締結までを任せることで、泣き寝入りを防ぎ適正額を回収できます。
不倫の慰謝料を請求した際、相手から返ってくる言葉で意外と多いのが、「お金がないから法テラスを利用する」「弁護士に相談する余裕すらない」という主張です。
このようなセリフを聞くと、請求する側としては「本当に払ってもらえるのだろうか」「国が味方をするような制度を使われて、減額されてしまうのではないか」と不安になってしまうかもしれません。
しかし、結論からお伝えすると、相手が法テラスを利用することと、あなたが受け取るべき慰謝料の金額には直接的な因果関係はありません。相手がどのような方法で弁護士費用を工面しようとも、不倫という不法行為によって生じた損害賠償責任が軽くなるわけではないのです。
本記事では、不倫相手が「法テラスを使う」と言ってきた場合の法的意味と、それに直面した被害者側が取るべき正しい対処法について詳しく解説します。
法テラスとはどのような制度か?
まず、相手が口にしている「法テラス(日本司法支援センター)」がどのような組織であるかを正しく理解しておきましょう。
法テラスは、国が設立した総合法律支援機関です。経済的に余裕がない人が法的トラブルに巻き込まれた際、無料で法律相談を受けられたり(条件付き)、弁護士や司法書士の費用を立て替えてもらえる制度(民事法律扶助業務)を提供しています。
つまり、相手が「法テラスを使う」と言っている場合、その背景には以下の事情が推測されます。
- 手元にまとまった現金がなく、私設の弁護士費用を払えない
- 弁護士を立てて、こちらからの請求をなんとか減額させたい、あるいは分割に持ち込みたい
- 国のお墨付きを得たような安心感から、こちらに対して心理的なプレッシャーをかけたい
相手が法テラスを利用すること自体は、法律上認められた権利です。そのため、「法テラスを使わないでほしい」とあなたが直接制限することはできません。
相手が法テラスを使っても慰謝料が減額されない理由
被害者の方が最も心配されるのが、「法テラスを使うことで、慰謝料の金額が減らされてしまうのではないか」という点です。
これについては、完全にノーと言えます。その理由は以下の通りです。
法テラスは「費用」の立替・援助であり「示談金」の減免機関ではない
法テラスは、あくまで弁護士費用や裁判費用を立て替える機関であって、相手の借金や慰謝料の支払い義務を肩代わりしたり、減額したりする権限を持っていません。法テラスを利用して選任された弁護士であっても、あなたに対して「お金がないので慰謝料を5万円にしてください」などと一方的な減額を強制する権利はないのです。
慰謝料の金額は法的な基準で決まる
不倫慰謝料の相場や適正額は、婚姻期間、不倫の期間、妊娠・出産の有無、夫婦関係への影響、そして相手の反省度合いなど、客観的な事実に基づいて決定されます。相手の「懐事情」や「弁護士費用の有無」は、本来の慰謝料の算定において考慮されるべきメインの要素ではありません。
相手が法テラスを利用した場合に起こり得ること
相手が法テラスを利用して弁護士を立ててきた場合、あなた側にもいくつかの変化が生じます。これらを事前に知っておくことで、冷静に対応することができます。
- 相手の窓口が弁護士に変わる:これまであなたやあなたの代理人弁護士と直接やり取りしていた相手に、法テラスを通じて選任された「相手方代理人弁護士」から受任通知が届き、今後はその弁護士と交渉することになります。
- 感情的な衝突が減る:直接の連絡ではなく、専門家同士(またはあなたと相手の弁護士)の冷静な書面・電話のやり取りになるため、感情的な言い争いは避けやすくなります。
- 法的根拠に基づいた交渉になる:相手の弁護士は法的な観点から減額交渉や分割払いの提案をしてくるため、こちらも感情論ではなく、証拠に基づいた毅然とした主張が必要になります。
「法テラスを使う」と言われたときの正しい対処法
相手から法テラスを盾にされたり、支払いを渋るような態度を取られたりしたときは、以下のポイントを意識して対応しましょう。
1. 相手の経済状況に惑わされず、適正な相場を主張する
相手が「お金がない」「法テラスしか頼れない」と泣きついてきても、同情して安易に減額に応じる必要はありません。不倫という不法行為によってあなたが受けた精神的苦痛の重さは変わらないからです。請求する慰謝料は、あくまで客観的な相場に基づいた適正額を堅持しましょう。
2. 分割払いに応じる場合の厳格な条件設定
本当に相手に一括で支払う資力がない場合、相手の弁護士から「分割払いにしてほしい」と提案されることがよくあります。法テラスを利用しているケースでは、この傾向が強くなります。
分割払いに応じること自体は解決への選択肢の一つですが、その際は必ず以下の条件を盛り込んだ公正証書(または和解合意書)を作成することが不可欠です。
- 総額の慰謝料と、毎月の返済額・返済期日を明確にする
- 「一度でも支払いを怠ったときは、残金全額を一括して即座に支払う」という期限の利益喪失条項を入れる
- 将来の未払いに備えて強制執行認諾文言を入れる
口約束や曖昧なメモ書きでの分割合意は、途中で連絡が取れなくなるリスクが高いため絶対に避けましょう。
3. 自らも専門家(弁護士)のサポートを受ける
相手が法テラスを利用して弁護士を立ててきた場合、あなた側が本人訴訟や個人間の交渉だけで対抗すると、法的な専門知識の差から不利な条件で丸め込まれてしまう危険性があります。
相手が弁護士を代理人として立てたのであれば、こちらも弁護士を代理人として立てるのが最も確実で安全な防衛策です。弁護士同士の交渉であれば、相手の「お金がない」という言い訳を法的な枠組みの中で適切に精査し、回収の可能性を最大限に高めることができます。
まとめ:法テラスの利用は脅しにはならない。冷静かつ毅然とした対応を
不倫相手が「弁護士費用がないから法テラスを使う」と言ってきたとしても、それは単なる相手の現状報告や、心理的プレッシャーをかけるための手段に過ぎません。
法テラスの利用によって、あなたの正当な慰謝料請求権が失われたり、金額が自動的に削られたりすることは一切ありません。相手に資金力がないように見えても、適正な相場を主張し、必要であれば分割払いの厳格な条件を突きつけるなど、毅然とした態度で臨むことが重要です。
もし相手から弁護士を通じて連絡が入り、対応に困惑している場合は、一人で抱え込まずに男女トラブル・慰謝料請求に強い弁護士に一度ご相談ください。あなたの権利を守り、適正な解決へと導くための最善の方法を一緒に見つけていきましょう。