【弁護士による確実な回収サポート】財産隠しや口座ロンダリングなどの逃避工作に対しては、裁判所の債権差押命令を勤務先(第三債務者)へ確実に送達させることで、手取り額の4分の1を合法的に回収できます。財産隠しを阻止してスムーズに慰謝料を回収するためにも、強制執行の手続きは弁護士にご相談ください。
不倫の慰謝料を支払わない相手に対し、法的手段である「給与の差し押さえ(債権差し押さえ)」を検討する場面は少なくありません。しかし、裁判を起こして勝訴判決を得たり、公正証書を作成したりした後に、相手が「会社での給与振込口座を変更すれば、差し押さえから逃れられるのではないか」と考えるケースが見受けられます。
結論から申し上げますと、こうした相手の姑息な財産隠しや逃避工作は、法律上全く意味がありません。給与差し押さえの仕組みの本質を理解していれば、口座を変更されたところで慌てる必要はないのです。本記事では、給与振込口座を変更された場合の法的効力や、確実にお金を回収するための実務的なポイントについて、弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所の弁護士が詳しく解説します。
給与差し押さえの仕組み:狙うべきは「口座」ではなく「勤務先」
多くの人が勘違いしやすいポイントですが、給与の差し押さえ(債権執行)の手続きにおいて、私たちが差し押さえる対象は「不倫相手が持っている特定の銀行口座」ではありません。
私たちが差し押さえるのは、不倫相手が勤務している会社に対して持っている「給与請求権(労働の対価として会社から給料を受け取る権利)」です。
裁判所から発行される「債権差押命令」は、不倫相手本人だけでなく、相手の勤務先企業(法律用語で「第三債務者」と呼びます)に対して送達されます。この差押命令が会社に届いた時点で、会社は不倫相手に対して給与を全額支払うことが法律上禁止されます。
- 差押えのターゲット: 勤務先に対する「給与・賞与の支払い請求権」
- 命令の送り先: 不倫相手の勤務先企業(第三債務者)
- 会社の義務: 差し押さえられた範囲(原則として手取り額の4分の1)の金額を、債権者(あなた)に直接支払わなければならない
つまり、不倫相手が給与の振込先をA銀行からB銀行に変えようが、C信用金庫に変えようが、あるいは極端な話、一時的に現金手渡しに変更してもらおうと交渉しようが、会社が不倫相手に対して「給与という債務を負っている」という大前提が変わらない限り、差押えの効力は及び続けます。
口座変更で相手が勘違いしていること
不倫相手が「口座を変えれば差し押さえられない」と思い込んでしまう背景には、銀行口座の「預金口座差し押さえ」と「給与差し押さえ」を混同していることが挙げられます。
もし、あなたが相手の「個人の銀行口座(例:三菱UFJ銀行の〇〇支店)」を狙ってピンポイントで預金債権の差押えを申し立てていた場合、相手が事前にその口座を空っぽにしたり、別の銀行に給与振込先を変更して新しい口座にお金を移したりすると、差し押さえのタイミングで差し押さえるべき残高が存在せず、取り立てが不調に終わるリスクがあります。これを一般的に「口座ロンダリング」や「財産逃れ」と呼びます。
しかし、給与差し押さえの場合は、個人の口座の残高を狙うのではなく、「会社から毎月支払われる給与そのもの」を源泉で差し押さえる手続きです。勤務先が給与を計算し、従業員(不倫相手)に支払う手前の段階でストップさせるため、本人がどの口座を指定していよう関係なく、会社は法律に従って一定額を天引きし、あなたに送金しなければなりません。
もし会社が「本人が口座を変えたから対応できない」などと言って無視した場合、その会社自身が法的な責任(損害賠償責任など)を問われることになるため、通常の会社であれば裁判所の命令に従って適切に処理を行います。
給与差し押さえを行うための大前提
給与差し押さえは非常に強力な回収手段ですが、実行するためには以下の法的要件を満たしている必要があります。
- 債務名義の取得: 裁判での勝訴判決、和解調書、あるいは強制執行認諾文言付き公正証書など、法的に債権の存在が証明されている公的な書類(債務名義)が必要です。慰謝料請求の示談書を交わしただけでは、残念ながら直接の差し押さえはできません。
- 勤務先が特定されていること: 給与差し押さえを申し立てるには、相手が現在どこで働いているのか(正確な会社名、所在地、代表者名)を特定している必要があります。「どこに勤めているか分からない」状態では、第三債務者を指定できないため、差し押さえを行うことができません。
もし相手が転職を繰り返している場合や、勤務先を隠そうとする場合は、弁護士会照会(23条照会)や、裁判所の「財産開示手続」「第三者からの情報取得手続」を活用して、勤務先を特定・追跡していく必要があります。
もし不倫相手が「会社を辞める」と脅してきた場合の対策
給与差し押さえの通知が会社に届くと、不倫相手は会社に不倫の事実や金銭トラブルを知られてしまい、非常に大きな心理的プレッシャーを感じます。その結果、逆ギレして「こんな会社にいられない、辞めてやる!」と退職をほのめかしたり、実際に退職して差し押さえを免れようとしたりするケースがあります。
しかし、これについても過度に恐れる必要はありません。
- 退職した場合の効力: 会社を辞めてしまえば、当然その会社からの給与は発生しなくなるため、それ以降の給与差し押さえは一時的にストップします。しかし、「慰謝料の支払い義務が消滅するわけではない」という点に注意してください。
- 退職金の差し押さえ: もし相手が会社を辞める場合、退職金が発生する可能性があります。退職金も給与と同様に差し押さえの対象となります。事前に退職金請求権に対しても差押命令を出しておくことで、退職金からまとまった金額を回収できるケースがあります。
- 次の勤務先の特定: 会社を辞めたとしても、生活のために別の職を探すのが一般的です。退職時に発行される源泉徴収票や、離職票、あるいはSNSや探偵の調査などを通じて次の勤務先が判明すれば、新しい勤務先に対して改めて給与差し押さえの手続きを行うことが可能です。
仕事や社会的信用を失うリスクを恐れる不倫相手にとって、勤務先への差し押さえ通知は何よりも強烈な抑止力となります。「口座を変えれば逃げられる」という甘い考えを持っている相手に対しては、法律の正しい効力を突きつけ、毅然とした態度で回収を進めることが重要です。
まとめ:財産隠しや差し押さえ逃れへの対応は弁護士にご相談を
不倫相手が給与振込口座を変更して差し押さえを逃れようとしても、勤務先に対する給与差し押さえの法的効力は揺るぎません。口座ロンダリングのような小手先の工作で、慰謝料の支払い義務から逃れることは不可能です。
とはいえ、実際に裁判所を通じて強制執行の手続きを行うには、正確な書類の作成や、裁判所・勤務先とのやり取りなど、専門的な知識と手間が必要となります。また、相手が会社を辞めると言い出したり、巧妙に財産を隠したりする兆候が見られる場合には、迅速かつ的確な法的対応が求められます。
弁護士法人公的な相談窓口や弁護士会等では、不倫・浮気の慰謝料請求における強制執行や財産差し押さえのサポートを数多く手がけております。「相手が支払いに応じない」「給与や預金を隠そうとしている」といったトラブルでお悩みの場合は、ぜひ法テラスや弁護士会などの公的窓口の弁護士までご相談ください。あなたの権利を守り、確実な慰謝料回収を全力でサポートいたします。