【給与や預金口座などへの強制執行への切り替えや弁護士への相談が有効です】今後の給与、毎月の手取り、銀行預金口座、さらには将来の年金受給権へと強制執行の対象を速やかに変更しましょう。財産調査や複雑な差押え手続きを確実に進めるため、強制執行や回収実務に精通した弁護士へ早めにご相談ください。
不倫・浮気の慰謝料請求において、裁判で勝訴したり、公正証書や和解調書を作成したりしたにもかかわらず、相手が素直に支払いに応じないケースは少なくありません。このような場合、債権者であるあなたは、相手の財産を差し押さえる「強制執行(差押え)」の手続きを進めることになります。
特に、まとまった金額が動く「退職金」は、慰謝料全額を回収するための有力なターゲットとして期待されがちです。しかし、いざ差し押さえを試みた際、不倫相手から「会社から退職金を前払いでもらって、すでに全部使い込んでしまったから何もない」と主張されるトラブルが後を絶ちません。
このような言い逃れをされた場合、泣き寝入りするしかないのでしょうか。結論から申し上げますと、使い果たされて手元にない現金そのものを差し押さえることは物理的に不可能ですが、法律上の別の手法や財産をターゲットに切り替えることで、慰謝料を回収する道は十分に遺されています。
本記事では、不倫相手が退職金の前払い受給や使い込みを主張してきた際の法的な仕組みと、その対抗策、そして確実にお金を回収するための具体的な財産差押えのステップについて、法律専門家の視点から分かりやすく解説します。
退職金の前払い受給と使い込み主張への法的実態
不倫相手が「退職金を前払いでもらった」「生活費や借金の返済で使い切った」と主張してきた場合、それが事実であるかどうかを見極める必要があります。
実際に前払い制度が存在するかどうかの確認
企業によっては、退職金の前払い制度(確定拠出年金の前払い的な位置づけや、社内規定に基づく退職金の一部前渡しなど)を導入している場合があります。しかし、中には慰謝料の強制執行逃れのために、勤務先と口裏を合わせて「すでに払った」「前渡しした」と虚偽の主張をする悪質なケースも存在します。
裁判所を通じた強制執行の手続き(債権差押命令)を行うと、第三者債務者である勤務先に対して、対象となる債権(退職金など)の有無や金額について「陳述書」の提出が義務付けられます。勤務先が裁判所に「すでに前払い済みで存在しない」と虚偽の回答をすれば法的責任を問われるリスクがあるため、まずはこの公式な回答を通じて、本当に退職金債権が消滅しているのかを厳格に確認します。
使い込まれた現金の回収はなぜ難しいのか
仮に、本当に退職金が前払いされ、それがすでに口座から引き出されて遊興費や借金返済などで消えていた場合、その現金そのものをピンポイントで差し押さえることは極めて困難です。
強制執行の対象となるのは、あくまで「現在存在している特定の財産(債権や動産など)」に限られます。すでに消費されて形のない現金に対して差押えを申し立てても、執行官や裁判所は動くことができません。
しかし、ここで諦める必要は全くありません。相手が「退職金はない」と言っているのであれば、退職金以外の財産にターゲットを切り替えればよいのです。
回収のターゲットを切り替える!4つの有効な差押え手段
退職金からの回収が困難であっても、不倫相手に安定した収入や他の財産がある限り、強制執行の網にかけることは可能です。ここでは、実務上極めて有効な4つの差し押さえ対象について解説します。
- 今後の給与(毎月の手取り)の差し押さえ
- 銀行預金口座の差し押さえ
- 将来の退職金・ボーナス・年金受給権へのアプローチ
- 自動車や貴金属などの動産差押え
1. 今後の給与・毎月の手取りに対する差押え
不倫相手が会社に勤務し続けている場合、最も強力で継続的な回収手段となるのが「給与の差押え」です。
日本の法律では、生活保障の観点から給与の全額を差し押さえることは原則として禁止されており、原則として手取り額の4分の1(給与が高額な場合は一定の制限あり)が差し押さえの対象となります。
毎月の給与から一定額が直接、勤務先を通じてあなたの手元に天引きされて支払われるため、相手が自発的に支払わなくても確実にお金を回収し続けることができます。会社に差し押さえ通知が届くため、職場に不倫や金銭トラブルが知られるデメリットはありますが、相手にとっては社会的なプレッシャーとなり、一括返済に向けた話し合いに応じる大きな動機付けとなります。
2. 銀行預金口座の差し押さえ
不倫相手の給与口座や、普段利用している銀行口座の支店名が判明している場合は、「預金債権の差押え」を実行します。
「退職金は使い果たした」と主張していても、給料が振り込まれた直後や、別の貯蓄口座に余剰資金が残っている可能性があります。預金口座の差押えは、裁判所から銀行に対して命令が送達された「その瞬間」の残高を差し押さえる仕組みです。
口座情報の特定には、過去の振込履歴や、裁判所の「財産開示手続」という制度を利用するのが効果的です。財産開示手続では、裁判所に債務者を呼び出し、保有する財産について宣誓させた上で陳述させることができます。これに正当な理由なく違反した場合は刑事罰の対象ともなるため、隠された口座を暴く上で非常に強力な武器となります。
3. 将来の退職金・ボーナスを見据えた差押え
今回は「前払いされて使い切った」と言い逃れをされたとしても、定年退職時や次回のボーナス支給時に発生する退職金・賞与債権をあらかじめ差し押さえておくというアプローチも考えられます。
将来発生する退職金債権についても、条件を満たせば差押えの対象とすることが可能です。ただし、退職までの期間が長すぎる場合などは実効性が薄れることもあるため、専門の弁護士と相談しながらタイミングを見極めることが重要です。
4. 自動車や貴金属などの動産差押え
もし不倫相手が高級車を所有していたり、自宅に価値のある貴金属や骨董品、家電製品などを所有していることが分かっている場合は、「動産執行」を申し立てることができます。
執行官が実際に自宅等に赴き、換金価値のある財産を差し押さえて競売にかけ、その売却代金から慰謝料を回収します。精神的なプレッシャーも大きく、相手が慌てて現金を用意して和解を申し出てくるケースも少なくありません。
まとめ:言い逃れに屈せず、確実な回収を実現するために
不倫相手が「退職金を前払い受給して使い込んだ」と主張してきた場合、その言葉をうのみにして回収を諦める必要は一切ありません。
すでに使い果たされた現金そのものの回収は難しいものの、以下のステップを踏むことで十分に慰謝料を取り戻すことができます。
- 勤務先からの陳述書などを通じて、退職金の実態や虚偽がないかを冷静に確認する
- 退職金に固執せず、今後の給与(手取り)の差し押さえへと速やかにターゲットを切り替える
- 財産開示手続などを活用して、銀行預金口座や隠し資産を徹底的に洗い出す
- 強制執行を継続的に行い、相手に心理的・社会的なプレッシャーを与えて自発的な支払いを促す
強制執行の手続きは、書類の作成や裁判所とのやり取りなど、専門的な知識と時間が必要となります。相手との交渉や法的手続きに不安がある場合は、不倫慰謝料問題の解決実績が豊富な法テラスや弁護士会等の公的相談窓口へご相談ください。あなたの権利を守り、最後まで責任を持って慰謝料回収をサポートいたします。