不貞行為の基本・慰謝料相場

不倫慰謝料の「共同不法行為(民法719条)」とは?不倫配偶者と不倫相手の連帯責任

大阪弁護士会所属 弁護士 井上正人 監修

【本記事の監修者】
弁護士 井上 正人(大阪弁護士会所属 / 登録番号:第43449号 / 弁護士法人 夕陽ヶ丘法律事務所 代表弁護士)
※本記事は、民法第709条(不法行為)、第719条(共同不法行為)、第770条(離婚原因)の規定および多数の不倫・浮気慰謝料請求・減額交渉の実務実績に基づきわかりやすく解説しています。

Q 不倫相手や配偶者から慰謝料を請求する場合、共同不法行為(民法719条)による連帯責任の仕組みや求償権のトラブルはどのように回避すればよいですか?
A 【共同不法行為と連帯責任の法的要点】不貞行為は配偶者と不倫相手の2人が共同して婚姻生活を破壊した「共同不法行為(民法719条)」に該当し、それぞれが慰謝料全額の支払い義務を負う連帯債務の関係になります。被害者は2人のどちらに対してでも全額の請求が可能であり、一方が全額支払えばもう一方の義務も消滅しますが、支払った側がもう一方へ自分の負担分を請求する「求償権」を巡るトラブルが発生しやすいため、示談書において求償権の放棄や清算条項を明確に盛り込むことが不可欠です。
【弁護士による増額交渉・示談成立・防衛のメリット】慰謝料請求を行う側は、不貞の証拠を確実に抑えた上で連帯責任を法的に主張し、裁判を見据えた適正な高額慰謝料の獲得を目指すことができます。逆に請求を受けた側は、過大な請求に対する減額交渉や、求償権のトラブルを根本から防ぐための法的網羅性の高い示談書作成など、弁護士による徹底した防衛サポートを受けることで、紛争の早期かつ円満な解決を実現できます。

不倫や浮気の発覚に伴い、慰謝料を請求したい側にとっても、あるいは予期せず請求を受けてしまった側にとっても、法律上の責任がどのように発生するのかを知ることは極めて重要です。

中でも実務上、最も基本かつ重要な法的根拠となるのが、民法719条に定められた「共同不法行為」という概念です。

この記事では、夕陽ヶ丘法律事務所の弁護士が、不倫慰謝料における共同不法行為の仕組みや連帯責任の本質、そして実務上の交渉における注意点を分かりやすく解説します。

共同不法行為(民法719条)とは何か?

民法719条第1項は、「数人が共同して人に損害を加えたときは、各自が連帯してその損害を賠償する責任を負う」と定めています。

これを不倫・不貞行為のケースに当てはめてみましょう。

夫婦の一方と、その配偶者以外の第三者(不倫相手)が肉体関係を持つなどの不貞行為に及んだ場合、法律上は「2人が共同して夫婦の平穏な婚姻生活を破壊し、精神的苦痛という損害を与えた」と評価されます。

これが、不倫が「共同不法行為」に該当する理由です。

2人で1つの損害賠償責任を負う

共同不法行為の最大の特徴は、不倫をした配偶者と不倫相手の2人が、「不可分な1つの損害賠償責任」を連帯して負うという点にあります。

例えば、裁判所や示談によって慰謝料の総額が「200万円」と算定されたとします。このとき、被害を受けた側は次のような選択が可能です。

  • 不倫をした配偶者に対してのみ200万円全額を請求する
  • 不倫相手に対してのみ200万円全額を請求する
  • 配偶者と不倫相手の両方に対して、合わせて200万円に達するまで分担して請求する

「不倫相手なのだから、責任の割合は半分(100万円)ずつだろう」と考えてしまいがちですが、法律上はどちらか一方が全額を支払う義務(連帯債務に近い関係)を負っています。

慰謝料を請求する側の視点:どちらに請求すべきか?

不倫の慰謝料を請求する立場から見ると、共同不法行為のルールは非常に有利に働きます。ここでは実務的な請求のコツを解説します。

不倫相手へ集中的に請求するケースが多い理由

実際の法律相談や示談交渉では、離婚をする・しないに関わらず、「不倫相手に対して慰謝料全額を請求する」というケースが多数派を占めます。

その理由は主に以下の通りです。

  • 家計への影響を防ぐため: 離婚しない場合、同居する配偶者に高額な支払いをさせると、巡り巡って世帯収入が減少し、自分自身の生活や子供の養育費に悪影響が出ます。
  • 心理的なケジメ: 家庭を壊した原因となった第三者に対し、法的なペナルティを明確に課したいという感情的な側面もあります。

ただし、配偶者と不倫相手のどちらに請求する場合であっても、「二重取り」はできない点に注意が必要です。総額が200万円である場合、配偶者からすでに200万円を受け取っていれば、不倫相手に対してさらに請求することは法的に認められません。

慰謝料を請求された側の視点:減額交渉と「求償権」の罠

一方で、不倫相手として突然内容証明郵便が届いた場合や、慰謝料を請求された側にとっても、共同不法行為の法理を理解しておくことは防御において不可欠です。

全額を支払った後に発生する「求償権(きゅうしょうけん)」

共同不法行為において、もし不倫相手が被害者に対して慰謝料の全額(例えば200万円)を支払った場合、そのままで終わるわけではありません。

不倫相手は、もう一人の当事者である不倫した配偶者に対して、内部的な負担割合に応じた金額を後から請求する権利を持ちます。これを「求償権」と呼びます。

一般的に、不倫の責任割合は配偶者と不倫相手で「50:50」とされることが多いですが、婚姻関係を主導した度合いや、誘いの積極性などによって割合が変動することもあります。

示談書作成時の「清算条項」の重要性

不倫相手の立場として最も恐ろしいのは、「慰謝料を支払って解決したはずなのに、後から配偶者の配偶者(元パートナー)から別の名目でトラブルに巻き込まれること」、あるいは「支払った後に配偶者側からさらなる金銭を要求されること」です。

そのため、示談書を作成する際には、以下の点を必ず盛り込む必要があります。

  • 支払いによる債権の消滅: 今回の慰謝料の支払いをもって、一切の債権が消滅することの確認。
  • 清算条項(不可逆的な解決): 本示談書に定めるもののほか、何ら債権債務が存在しないことの確認。
  • 求償権の放棄に関する取り決め: 必要に応じて求償権を相互に放棄する、あるいは権利の範囲を明確にする特約。

素人同士の話し合いや、インターネット上のテンプレートをそのまま流用した示談書では、この求償権や清算条項の不備によって「二重の支払い義務」を背負わされる危険性があります。

共同不法行為を巡るトラブルを防ぐために弁護士ができること

不倫慰謝料における共同不法行為は、一見するとシンプルに見えて、非常に複雑な法的利害が絡み合っています。

  • 請求する側: 配偶者と不倫相手のどちらから、どのように回収するのが最も確実で精神的負担が少ないか。
  • 請求された側: 法的根拠に基づいた適正な慰謝料への減額交渉と、将来のトラブル(求償権)を残さない安全な示談書の締結。

公的な相談窓口や弁護士会等では、ご相談者様が置かれた状況(離婚の有無、収入状況、証拠の有無など)を多角的に分析し、依頼者様にとって最も有利かつ円満な解決に向けたサポートを行っております。

配偶者の不倫にお悩みの方、あるいは予期せぬ慰謝料請求を受けてお困りの方は、一人で抱え込まず、早い段階で当事務所の弁護士までご相談ください。

📂 「不貞行為の基本・慰謝料相場」一覧へ戻る
弁護士 井上正人

この記事の監修

弁護士 井上 正人
(いのうえ まさと)

大阪弁護士会所属(登録番号:43449)
弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表

相続や遺産分割、交通事故の賠償問題をはじめ、事業者様を狙う求人広告詐欺の被害救済やオフィス・テナント等の原状回復トラブルなど、不測の事態に直面した皆様の精神的・経済的なご負担を少しでも和らげ、正当な権利の実現と円満な解決へと導くためのサポートを徹底して行っています。

TOP