【弁護士による法的防衛】この公正証書があれば、万が一相手が支払いを怠った際、通常の裁判を起こす時間や費用をかけずに、相手の給与や預貯金口座を即座に差し押さえることが可能です。
不倫・浮気の慰謝料請求において、最も頭を悩ませる問題の一つが「示談金の支払い方法」です。本来であれば、不貞行為という不法行為に対する慰謝料は、一括払いが原則となります。しかし、高額な慰謝料を一括で支払えるだけの資力がない相手も多く、結果として「毎月〇万円ずつの分割払い」で合意せざるを得ないケースが数多く存在します。
ここで大きな問題となるのが、「本当に最後まで払い続けてくれるのか」という不信感です。最初は毎月きちんと振り込まれていたものの、半年ほど経った頃から連絡がつきにくくなり、ついには支払いが途絶えてしまう……これは、慰謝料の分割払いにおいて非常によくあるトラブルです。
この記事では、夕陽ヶ丘法律事務所の弁護士が、分割払いに応じる際絶対に避けて通れない「不払い防止の切り札」である公正証書の作成方法とその効力について、実務的な視点から詳しく解説します。
分割払いで起きがちな「不払いトラブル」の現実
慰謝料の金額について合意ができ、示談書を取り交わしたとしても、それだけで相手が最後まで誠実に支払い続ける保証はどこにもありません。
口頭での約束はもちろんのこと、たとえ個人間で作成した示談書や誓約書であったとしても、そこに法的な強制力はありません。もし相手が支払いを放棄した場合、被害者側は泣き寝入りするしかないのでしょうか。
いいえ、泣き寝入りする必要はありません。しかし、通常の示談書や誓約書だけでは、相手が不払いを起こしたときに以下のような高いハードルが立ちはだかります。
- 裁判を起こす必要がある: 未払い金を回収するためには、まず裁判所に民事訴訟を提起し、「お金を支払いなさい」という判決をもらわなければなりません。
- 時間と費用がかかる: 裁判が終わるまでに数ヶ月以上の時間がかかり、弁護士費用や裁判費用といったさらなる経済的・精神的負担が発生します。
- 財産を隠されるリスク: 裁判を起こしている間に、相手が給与口座の預金を隠したり、財産を処分したりする時間が与えられてしまいます。
このように、ただ「毎月払う」という約束を文書に残すだけでは、不払いを防ぐ防壁としてはあまりにも脆弱なのです。そこで必要となるのが、公証役場で作成する「公正証書」です。
最強の自衛策「強制執行認諾文言付き公正証書」とは
不払いを完全に防ぎ、万が一の際にも迅速に回収できるようにするための唯一無二の手段が、「強制執行認諾文言(きょうせいしっこうにくだくもんごん)付き公正証書」の作成です。
少し難しい法律用語ですが、その仕組みと効果は非常にシンプルかつ強力です。
強制執行認諾文言の効力
公正証書の中に「債務者が金銭債務の履行を怠ったときは、直ちに強制執行に服する(差し押さえを受けても異議はない)旨の陳述(=強制執行認諾文言)」を記載しておくことで、通常の裁判というステップを完全にスキップすることができます。
もし相手が約束の期日を過ぎても分割金を支払わない場合、この公正証書を執行力のある債務名義として、裁判所に対して即座に「強制執行(差押え)」の申し立てを行うことが可能になります。
公正証書にする最大のメリット
- 裁判の手間と時間が不要: 長い裁判を行わずに、公正証書一本で直接差押えの手続きに入ることができます。
- 強力な心理的プレッシャー: 「払わないとすぐに給与や財産を差し押さえられる」というプレッシャーが常にかかるため、相手の支払いに対する意識を高め、不払いを未然に防ぐ抑止力になります。
- 時効の延長効果: 慰謝料請求権の消滅時効(原則として損害および加害者を知ったときから3年など)を、公正証書作成時から新たにカウントし直す、あるいは時効中断の効果を持つなど、権利保全の面でも有利になります。
公正証書に必ず盛り込むべき重要条項
公正証書を作成すれば何でも安心というわけではありません。記載する内容に不備や抜けている項目があると、いざという時に十分な効力を発揮しないおそれがあります。
夕陽ヶ丘法律事務所が実務上、不倫の示談における公正証書作成の際に必ず確認・推奨している重要条項は以下の通りです。
1. 期限の利益喪失条項(一括請求条項)
分割払いの契約において最も重要なのがこの条項です。 「分割金の支払いを1回(または2回以上)怠ったときは、当然に期限の利益を失い、債務者は残金全額を直ちに一括して支払わなければならない」という内容を明記します。
この条項がないと、たとえ相手が支払いを遅らせたとしても、その月に遅れた分の分割金しか差し押さえることができません。この条項を入れておけば、1回でも怠った時点で残りの全額を一括で請求・差押えの対象にすることができます。
2. 遅延損害金の定め
万が一支払いが遅れた場合に備えて、支払期日の翌日から完済に至るまで、年〇%(法律の範囲内、一般的には年3%〜14.6%程度)の遅延損害金を加算して支払う旨を定めておきます。これにより、遅延に対するペナルティを明確にします。
3. 清算条項(後日トラブルの防止)
「この示談書の取り決め以外には、お互いに何ら債権債務が存在しないことを確認する」という条項です。これにより、後から追加で慰謝料を請求されることや、相手から不当な要求をされるリスクを断ち切ることができます。
公正証書作成の具体的な流れ
公正証書は、全国にある「公証役場」において、法律の専門家である「公証人」に作成してもらう公文書です。当事者同士が勝手に作成することはできませんが、以下の手順に沿って進めることでスムーズに完了します。
- 示談条件の合意・原案作成: 慰謝料の総額、分割の回数、毎月の金額、振込先、期限の利益喪失条項などを当事者間で合意します。この段階で弁護士に代理交渉や文案作成を依頼しておくと、法的に隙のない内容に仕上がります。
- 必要書類の準備: 当事者の本人確認書類(運転免許証やマイナンバーカード)、印鑑登録証明書、戸籍謄本、示談の合意内容を示す資料などを準備します。
- 公証役場への申し込み・予約: 管轄の公証役場へ原案を提出し、内容の確認と日程の調整を行います。
- 公証役場での署名・捺印: 原則として当事者双方が公証役場に出頭し、公証人の面前で内容を確認の上、署名・捺印を行います(※代理人を立てることも可能です)。
ここで一つ重要なポイントがあります。相手と顔を合わせたくない、あるいは直接交渉するのが精神的に大きな負担であるという場合、弁護士を代理人として立てることで、相手と一切接触することなく公正証書の作成を完了させることが可能です。
まとめ:分割払いのリスクは事前の対策でゼロにできる
不倫の慰謝料請求において、分割払いを認めざるを得ない状況であっても、適切な法的手続きを踏むことで、不払いのリスクや回収不能の不安を限りなくゼロに近づけることができます。
「相手にお金がないと言われたから、毎月少しずつ払ってもらう約束をしたけれど不安」 「個人間の示談書だけで本当に大丈夫だろうか」 「公正証書を作りたいが、相手が協力的ではない、あるいは顔を合わせたくない」
このようなお悩みをお持ちの方は、一人で抱え込まずに、男女トラブルや慰謝料請求の解決実績が豊富な弁護士へご相談ください。
公的な相談窓口や弁護士会等では、依頼者様の精神的負担を最小限に抑え、確実にお金が回収できる形での示談交渉から公正証書作成のサポートまで、トータルで強力にバックアップいたします。まずはお気軽にお問い合わせください。