不貞行為の基本・慰謝料相場

不倫相手が「海外赴任・海外在住」の場合の国内資産差し押さえと特定

大阪弁護士会所属 弁護士 井上正人 監修

【本記事の監修者】
弁護士 井上 正人(大阪弁護士会所属 / 登録番号:第43449号 / 弁護士法人 夕陽ヶ丘法律事務所 代表弁護士)
※本記事は、民法第709条(不法行為)、第719条(共同不法行為)、第770条(離婚原因)の規定および多数の不倫・浮気慰謝料請求・減額交渉の実務実績に基づきわかりやすく解説しています。

Q 不倫相手が海外赴任や海外移住で日本にいません。国内資産の差し押さえて慰謝料を回収する方法はあるのでしょうか?
A 【法的結論】海外赴任や海外在住の不倫相手であっても、日本国内に銀行口座や不動産などの資産があれば、法的手続きを経て差し押さえて慰謝料を回収することは十分に可能です。
【解決のポイント】日本の裁判所に管轄権が認められるケースが多く、弁護士会照会などを活用して国内の資産を特定できます。ただし、相手が財産を隠すリスクがあるため、訴訟前に「財産保全手続き」を行い、海外への「訴訟送達」を確実に進めることが重要です。早めに弁護士へご相談ください。

不倫相手が海外赴任・海外在住でも慰謝料請求は諦めなくてよい

夫(または妻)の不倫が発覚し、いざ慰謝料を請求しようとした矢先、不倫相手が急な海外赴任や海外移住を理由にいなくなってしまったというケースは決して少なくありません。「海外に逃げられてしまったら、もう泣き寝入りするしかないのだろうか」と絶望される方もいらっしゃいますが、決してそのようなことはありません。

日本国外に住んでいる相手であっても、不貞行為(不倫)が行われた場所が日本国内であり、日本人同士(あるいは日本国内に居住していた者同士)であれば、日本の裁判所に管轄権が認められるケースがほとんどです。また、相手が海外にいるからといって、国内にある財産まで消えてなくなるわけではありません。正しい法的手続きを踏むことで、日本国内に残された資産から慰謝料を回収できる可能性があります。

日本国内に残された資産の特定方法

海外赴任や海外移住をした人が、日本国内の資産をすべて引き払っていくとは限りません。むしろ、日本の銀行口座を給与受取や貯蓄用としてそのまま残していたり、日本国内に不動産や車を所有したままにしているケースが多く見られます。

相手の国内資産を特定するためには、以下のような手法や法的手続きを活用します。

  • 住民票や戸籍の附票の確認: 海外転出届を提出していても、国内の最後の住所地や実家との繋がりから財産の手がかりを得ることがあります。
  • 弁護士会照会(23条照会)の活用: 弁護士が法的権限に基づいて、銀行や携帯電話会社、勤務先企業などに対して情報の開示を求める制度です。これにより、国内の銀行口座の有無や支店名を特定できる場合があります。
  • 勤務先を通じた財産情報の把握: 相手が日本の企業の海外赴任者である場合、国内の会社から給与や手当が支払われているケースがあり、給与債権の差し押さえを視野に入れたアプローチが可能になります。

国内にある銀行口座や不動産の差し押さえ手順

相手の国内資産(銀行口座の預貯金や不動産)が特定できたら、裁判上の手続きを経て差し押さえ(強制執行)を実行します。海外にいる相手に対しては、通常の国内での手続きに加えていくつかのステップが必要になります。

1. 裁判を起こすための「海外への訴訟送達」

日本国内で裁判を起こして判決を得るためには、被告である海外在住の不倫相手に対して、訴状などの裁判書類を正しく届ける必要があります。これを「送達」と呼びます。相手の海外の住所地が分かっている場合は、「ハーグ条約(裁判文書及び裁判外文書の外国における送達に関する条約)」に基づく公的ルートや、現地の日本大使館・領事館を通じた外交ルートを利用して書類を送達します。これには数ヶ月程度の時間がかかることが一般的です。

2. 判決や和解調書の取得

適法に訴訟書類が送達されたにもかかわらず、相手が日本の裁判所に出頭せず、答弁書も提出しない場合、原告側の主張が全面的に認められる「勝訴判決」が下される可能性が高まります。また、裁判上の和解や調停が成立した場合も同様に、法的強制力を持つ名義(債務名義)が手に入ります。

3. 国内資産の強制執行(差し押さえ)

債務名義を取得したら、不倫相手名義の国内の銀行口座や不動産に対して強制執行の申し立てを行います。銀行口座であれば、特定の支店に対して債権差し押さえ命令が発令され、残高から慰謝料に相当する金額を回収することができます。

海外逃亡を防ぐための「財産保全(仮差押え)」の重要性

不倫相手が海外赴任や海外移住をする際、または海外にいることが発覚した後に注意しなければならないのが、「日本国内にある資産を勝手に処分・隠匿されてしまうリスク」です。

裁判を起こして判決を待っている間に、相手が日本の銀行口座の預金をすべて海外送金してしまったり、日本国内の不動産を第三者に売却してしまったりすると、いざ勝訴しても差し押さえるべき資産がなくなってしまいます(空疎な勝訴となってしまいます)。

これを防ぐために極めて有効なのが、訴訟提起の前、あるいは訴訟と同時に行う「仮差押え(かるささおえ)」という保全手続きです。事前に裁判所に保証金を納める必要がありますが、この手続きを行うことで、不倫相手の国内口座や不動産の処分を法的に凍結し、財産が逃げ切られるリスクを大幅に軽減することができます。

海外在住者への慰謝料請求を弁護士に依頼するメリット

不倫相手が海外赴任中、あるいは海外在住である場合の慰謝料請求は、通常の国内間での示談交渉とは比べ物にならないほど専門的な知識と煩雑な手続きを要します。

  • 国際送達やハーグ条約に関する実務経験: 一般の方が個人で外国の機関や日本国内の外務省・裁判所を介した送達手続きを行うのは極めて困難ですが、弁護士であればスムーズに進行できます。
  • 迅速な財産保全の断行: 相手が資産を隠す前に、的確なタイミングで国内資産の仮差押えを行うことができます。
  • 精神的な負担の大幅な軽減: 相手が海外にいるというだけで不安や孤独感を抱きがちですが、代理人として弁護士が交渉や法的手続きのすべてを引き受けることで、ご依頼者様の精神的負担を大きく和らげることができます。

「相手が海外にいるから無理かもしれない」と諦めてしまう前に、まずは法テラスや弁護士会等の公的相談窓口へご相談ください。国内外の法律と実務に精通した専門家が、あなたの権利を守り、正当な慰謝料回収を実現するための最善のロードマップをご提案いたします。

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弁護士 井上正人

この記事の監修

弁護士 井上 正人
(いのうえ まさと)

大阪弁護士会所属(登録番号:43449)
弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表

相続や遺産分割、交通事故の賠償問題をはじめ、事業者様を狙う求人広告詐欺の被害救済やオフィス・テナント等の原状回復トラブルなど、不測の事態に直面した皆様の精神的・経済的なご負担を少しでも和らげ、正当な権利の実現と円満な解決へと導くためのサポートを徹底して行っています。

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