【弁護士の対応】正確な文面の示談書を作成することで将来的な紛争を防ぐことができます。不貞の証拠収集や適切な示談金の設定、相手方との交渉に不安がある場合は、示談成立前に弁護士へご相談ください。
不倫・浮気問題において、相手方(不倫相手や配偶者)から「手切れ金」や「解決金」という名目で金銭を受け取るケースは少なくありません。しかし、口頭での約束や不十分なメモ書きだけでお金を受け取ってしまうと、後々大きな法的トラブルに発展する危険性があります。
「お金を受け取ったのだから、もう解決したはずだ」と思っていたところ、相手から「あの時は脅されて払わされた」「貸しただけだ」と主張されたり、逆にこちら側が「一部しか受け取っていないので残りを請求したい」と考えた際に、示談書がないために泣き寝入りせざるを得なくなる事態が後を絶ちません。
この記事では、不倫相手から手切れ金や解決金を受領する際に必ず作成すべき「示談書」の重要性と、状況に応じた具体的な文面の書き方について、夕陽ヶ丘法律事務所の弁護士が詳しく解説します。
手切れ金・解決金を受け取る前に知っておくべき法律上のリスク
不倫の示談交渉において、「手切れ金」「解決金」「慰謝料」という言葉は、日常会話では同じような意味で使われがちです。しかし、法律実務の世界では、それぞれの名目が持つ意味や効果が大きく異なります。
まず理解しておかなければならないのは、不貞行為(不倫)によって生じた精神的苦痛に対する賠償請求権は、被害者側にとって正当な権利であるという点です。相手から受け取るお金が「何の対価として支払われるものか」を明確にしておかないと、以下のような法的リスクが生じます。
- 二重請求や追加請求のトラブル: 金額の趣旨が曖昧なままだと、受領後に「もっと払え」「いや、あれは慰謝料の一部に過ぎない」と泥沼の争いになる。
- 名目に関する誤解: 単なる「手切れ金」として受領した場合、それが法的損害賠償としての性格を持っているのかどうかが証明しにくくなる。
- 接触禁止や口外禁止の欠如: お金を受け取るだけで、今後一切の接触を断つ約束(接触禁止条項)や、今回の件をSNS等に書き込まない約束(守秘義務条項)を取り交わしていないと、精神的な平穏を取り戻せない。
こうしたリスクを完全に防ぎ、お互いにこれ以上の紛争を持ち出さないための決定打となるのが、法的効力を持つ「示談書(合意書)」の作成です。
状況別に異なる示談文面の選び方
手切れ金や解決金を受領する際、示談書の文面は「今回受け取るお金で完全にすべてを清算するのか」、それとも「高額な慰謝料の一部を受け取り、残額は分割または別途請求するのか」によって大きく異なります。
ここでは、実務上最も多い2つのパターンについて、具体的な文面の構成とポイントを解説します。
パターン1:今回受領する金銭で「完全解決(清算)」とする場合
不倫相手から一括でまとまったお金(手切れ金・解決金)を受け取り、これを機に一切の関係を断ち、今後はお互いに金銭の請求や接触を一切しない(清算条項を入れる)場合の文面です。
このケースでは、示談書に「債権債務の不存在(精算条項)」を必ず盛り込む必要があります。
- 事件の特定: 誰と誰の間の、いつからいつまでの不貞行為に関するものであるかを特定する。
- 受領金の趣旨の明確化: 支払われる金銭が、本件不貞行為に関する慰謝料および解決金(手切れ金)の性質を有することを確認する。
- 完全解決の合意(清算条項): 甲(請求者)および乙(不倫相手)の間には、本件に関して本示談書に定められたもののほか、何らの債権債務が存在しないことを相互に確認する。
- 今後の接触禁止・秘密保持: 今後一切の接触の禁止や、本件に関する口外禁止を定める。
- 違約金の定め: 万が一、接触禁止や秘密保持義務に違反した場合のペナルティ(違約金)を明記する。
この文面を作成することにより、受領側は「これ以上相手に関わらずに平穏な生活を取り戻す」ことができ、支払側は「将来の追加請求に怯える必要がなくなる」というメリットを享受できます。
パターン2:受領する金銭を「内払い」とし、残額の請求権を保持する場合
例えば、総額300万円の慰謝料を請求しているものの、不倫相手の経済状況を考慮して、今回は手元にある資金から100万円を「解決金(または内払い)」として受領し、残りの200万円については分割で支払わせる、あるいは将来の請求権を残しておく場合の文面です。
この場合の最大の注意点は、「今回受け取るお金で全てが解決したわけではない」ということを明確に文面に残す点にあります。
- 一部受領(内払い)の明記: 今回受領する金銭が、総額〇〇円の損害賠償請求権の一部(内払い金)であることを明確に記載する。
- 残額の支払方法: 残金について、いつまでに、どのような方法(分割払いなど)で支払うかを具体的に定める。
- 期限の利益喪失条項: 分割払いの途中で支払いが滞った場合(例:1回でも怠った場合など)、催告なしに残額全額を一括して即座に支払う義務が生じる旨を明記する。
この文面を欠いてしまうと、「100万円を受け取った時点で、残りの200万円を請求する権利を放棄した(免除した)」と相手から主張される法的なリスクが生じるため、細心の注意が必要です。
実務で使える示談書(合意書)の基本条文例
実際の示談書では、法的効力を確実にするために、正確な用語を用いた条文を作成する必要があります。以下に、完全解決を前提とした手切れ金・解決金受領の基本的な文面構成のイメージをご紹介します。
乙(不倫相手)は、甲(被害者)に対し、甲乙間の不貞行為に関する慰謝料および解決金として、金〇〇万円の支払い義務があることを認め、甲はこれを本日受領した。
第2条(清算条項)
甲および乙は、甲乙間において、本示談書に定めるもののほか、本件不貞行為に関する損害賠償請求権等の債権債務が一切存在しないことを確認し、今後、名目の如何を問えず、互いに金銭の請求、訴訟の提起その他いかなる異議も申し立てないものとする。
第3条(接触禁止条項)
乙は、今後、甲に対し、直接・間接を問わず、一切の接触(面会、電話、メール、LINE、手紙その他の通信手段を含む)をしないものとする。
第4条(守秘義務)
甲および乙は、本件解決の内容および本件に関する一切の経緯について、正当な理由がある場合を除き、第三者に一切口外しないものとする。
第5条(違約金)
乙が第3条または第4条に違反したときは、乙は甲に対し、違約金として金〇〇万円を直ちに支払うものとする。
上記の条文はあくまで基本的な構成例です。事案の複雑さや当事者間の合意内容によって、盛り込むべき項目や表現は細かく調整する必要があります。インターネット上の雛形を安易にそのまま流用すると、ご自身の状況に合致せず、かえって不利な結果を招く恐れがありますのでご注意ください。
示談書の効力を高め、確実な解決を実現するためのポイント
せっかく示談書を作成しても、その形式や作成方法に不備があると、後になって「そんな書類は書いていない」「脅されて署名させられた」などと言いがかりをつけられるリスクがあります。手切れ金や解決金の受領を安全かつ確実に行うためには、以下の実務的なポイントを押さえておくことが重要です。
- 署名と押印(実印と印鑑登録証明書): 本人が確実に署名・捺印したことを証明するため、可能であれば実印を使用し、印鑑登録証明書を添付してもらうのが理想的です。
- 公正証書の活用: 分割払いや高額な解決金の場合、支払いが滞った際に裁判を起こさなくても給与や財産の差し押さえ(強制執行)ができる「強制執行認諾文言付公正証書」を公証役場で作成しておくと極めて安全です。
- 振込送金による証拠の残し方: 手渡しではなく、必ず銀行振込を利用することで、「いつ、誰から誰へ、いくら支払われたか」の客観的な資金移動の証拠を確実に残すようにしてください。
まとめ:手切れ金・解決金の受領は弁護士にご相談ください
不倫相手から手切れ金や解決金を受領する行為は、一見すると「お金を受け取って終わり」の簡単な手続きに思えるかもしれません。しかし、そこには「追加請求の可否」「接触禁止の担保」「将来のトラブル予防」など、法的知識が不可欠な複雑な問題が潜んでいます。
ご自身だけで相手と交渉したり、ネットの不十分な雛形を元に示談書を作成してしまうと、後になって取り返しのつかない不利益を被る恐れがあります。
公的な相談窓口や弁護士会等では、不倫・浮気慰謝料問題に関する豊富な解決実績を持つ弁護士が、お客様の状況に最適な示談文面の作成から相手方との交渉まで、全面的にサポートいたします。「相手から解決金を提示されたが、この条件で示談してよいか分からない」「後々のトラブルを完全に防ぐ示談書を作りたい」とお悩みの方は、ぜひ法テラスや弁護士会の無料法律相談窓口のご利用をご検討ください。