【強制執行と弁護士への相談】判決確定後も相手が支払わないときは、給与や預貯金口座等の財産に対する強制執行(差押え)を申し立てて強制回収を図ります。個人間の交渉が難航する場合は、書類作成から法的手続まで一貫して代理できる弁護士へ早期に相談することをおすすめします。
不倫の慰謝料を配偶者の不貞相手(ここでは不倫男とします)と共に支払った、あるいはあなた一人が全額を支払った後、「自分ばかりが多く支払わされた」「約束通り半分を支払ってくれない」と悩んでいませんか。
不倫は共同不法行為にあたるため、本来であれば当事者間で責任を分け合うべきものです。しかし、不倫男が誠実に対応せず、求償金の支払いを不当に拒否するケースは決して少なくありません。
本記事では、不倫男が求償金の支払いを拒否した場合に、地方裁判所へ求償金請求訴訟を提起して法的に回収するまでの手順と重要ポイントを、夕陽ヶ丘法律事務所の弁護士が分かりやすく解説します。
求償権とは何か?基本的な仕組みを理解する
まずは、求償権(きゅうしょうけん)についての正確な法律上の定義を確認しておきましょう。
不倫(不貞行為)は、配偶者と不倫相手の2人が共同して行った不法行為です。そのため、被害を受けた側(あなたの配偶者など)は、不倫の当事者双方に対して、全額の慰謝料を請求することができます。これを法律用語で「不真正連帯債務」と呼びます。
被害者に対してどちらか一方が慰謝料の全額を支払った場合、支払った人はもう一人の不倫相手に対して、「自分の負担すべき割合を超えて支払った分」を請求する権利を持ちます。これが「求償権」です。
一般的には、不倫における責任割合は「2人で折半(50%ずつ)」とされることが多く、全額を支払った側は、相手に対してその半額を求償金として請求する権利を有します。
不倫男が求償金の支払いを拒否する主な理由と対策
不倫男が求償金の支払いを頑なに拒む場合、いくつかの決まり文句や理由が使われます。しかし、その多くは法律的に通用しない言い訳であることがほとんどです。
よくある拒否の理由
- 「自分だってお金がないから払えない」という経済的理由を主張する
- 「誘われたのはあっち(あなたの配偶者)の方だ」と責任を転嫁する
- 「すでに別の形で迷惑料を払った覚えがある」と事実を捻じ曲げる
- 連絡を無視し続け、話し合い自体に応じない
このような相手に対して、口頭や個人のメッセージアプリで何度督促しても、誠実な対応を引き出すことは困難です。相手が任意での支払いに応じない場合は、法的な手段(訴訟)を見据えた毅然とした対応が必要不可欠となります。
地方裁判所への求償金請求訴訟の提起と流れ
任意の交渉が決裂した場合、裁判所を利用した法的回収の手続きに移行します。請求額や事案の内容に応じて、簡易裁判所または地方裁判所を選択しますが、請求金額が140万円を超える場合は、地方裁判所への求償金請求訴訟を提起することになります。
1. 事前準備と証拠の収集
訴訟を提起するためには、あなたが実際に慰謝料を全額(または自身の負担分を超えて)支払ったことを証明する証拠が不可欠です。
- 被害者(配偶者やその代理人弁護士)との間で交わした示談書や合意書
- 慰謝料の振込明細書、領収書、クレジットカードの利用明細など
- 不倫男との間でやり取りしたメッセージ履歴(求償について話し合った記録など)
これらの証拠を揃えることで、「自分がいくら支払い、相手にいくら請求する権利があるのか」を客観的に証明できるようにします。
2. 訴状の作成と地方裁判所への提出
ご自身の住所地、または不倫男の住所地を管轄する地方裁判所に対して、「訴状」を提出します。訴状には、請求の趣旨(いくらの支払いを求めるか)や、請求の原因(なぜその金額を請求できるのかの法律上の理由)を論理的に記載します。
法律文書の作成には専門的な知識が求められるため、この段階で弁護士に代理人を依頼することで、不備のない正確な手続きを進めることができます。
3. 裁判期日の進行
訴訟が受理されると、裁判所から不倫男に対して訴状と呼出状が特別送達で届きます。その後、双方の主張書面や証拠の提出が書面で行われ、口頭弁論期日が開かれます。
相手が裁判に出頭せず、答弁書も提出しない場合は、あなたの主張がそのまま認められる「擬制自白」となり、早期に勝訴判決を得られるケースもあります。
4. 判決の言い渡し(または和解)
裁判官が双方の主張や証拠を吟味し、最終的に判決を下します。請求が正当であると認められれば、裁判所から不倫男に対して「原告に対し、金〇〇円を支払え」という命が下されます。また、裁判の途中で裁判官の勧告により、和解(一括または分割での支払いに合意する)で解決することもあります。
勝訴しても支払わない場合の強制執行(差押え)
地方裁判所で勝訴判決を得たり、和解調書を作成したりしても、なお不倫男が求償金を支払わない場合があります。その段階に至っては、もはや任意の支払いを期待することはできません。
判決や和解調書には「債務名義(さいむめいぎ)」としての強い法的効力があります。これを利用して、不倫男の財産に対する強制執行(差押え)を申し立てることができます。
強制執行の主な対象財産
- 給与・賞与の差押え:勤務先を特定して給与の一部を差し押さえます。毎月の給与から直接回収できるため、確実性が高い方法です。
- 預貯金口座の差押え:不倫男が利用している銀行口座(支店名まで特定する必要があります)の預貯金を差し押さえます。
- 動産や不動産の差押え:自宅にある価値のある家財道具や、所有している不動産などを差し押さえて換価します。
勤務先や口座の支店名が分からない場合でも、弁護士会照会(23条照会)や、裁判所の「財産開示手続」「第三者からの情報提供手続」を利用することで、相手の財産情報を調査・特定することが可能です。
求償金請求訴訟を弁護士に依頼するメリット
求償金請求訴訟をご自身だけで進めることは、法律知識や裁判所への出頭など、時間的・精神的に大きな負担が伴います。特に、相手が弁護士を立てて対抗してきたり、巧妙に言いがかりをつけてきたりする場合、個人での対応には限界があります。
公的な相談窓口や弁護士会等では、慰謝料請求の減額防衛だけでなく、支払った後の求償金回収に関するトラブルについても数多くの実績を有しています。
弁護士を代理人に立てることで、以下のような大きなメリットが得られます。
- 精神的ストレスからの解放:不倫男との直接の連絡や交渉、裁判所での手続きをすべて弁護士が代行します。
- 法的妥当性の高い書類作成:勝訴確率を高めるための緻密な訴状や準備書面を、法的根拠に基づいて作成します。
- 確実な強制執行の実行:判決取得後、相手の財産調査から差押え手続きまでスムーズに連携して回収を図ります。
・専門窓口へのご相談
不倫男が求償金の支払いを拒む態度は、決して許されるものではありません。あなたが法律上の責任範囲を超えて支払った分は、正当な権利として取り戻すべきお金です。
相手が支払いに応じない場合でも、地方裁判所への求償金請求訴訟や強制執行といった法的な手段を用いれば、回収の道は十分に開かれています。
公的な相談窓口や弁護士会等では、ご相談者様が抱えるご不安や疑問に丁寧に向き合い、最適な解決プランをご提案いたします。泣き寝入りしてしまう前に、まずは法テラスや弁護士会の無料法律相談窓口のご利用をご検討ください。あなたの正当な権利を守るため、弁護士が全力でサポートいたします。