【正しい対処法と弁護士の活用】相手の「自分も被害者だ」といった甘い言い訳や責任転嫁に惑わされてはいけません。後日の求償権トラブルを防ぎつつ確実に慰謝料全額を回収するためには、法的根拠に基づいた毅然とした交渉が不可欠です。不利な条件で示談しないよう、早めに弁護士へ相談して適正な慰謝料請求を進めましょう。
不倫・浮気問題の解決に向けて動き出したとき、相手から思いがけない言葉を投げかけられることがあります。その代表例が「自分も相手の配偶者から高額な慰謝料を請求されているから、お金がない」「自分も被害者なのだから支払う必要はない」という言い訳です。
特にダブル不倫(双方に配偶者がいるケース)や、不倫相手が既婚者であると分かっていながら関係を持ってしまった場合によく聞かれるセリフですが、この主張を鵜呑みにしてはいけません。
本記事では、夕陽ヶ丘法律事務所の弁護士が、不倫相手からこのような言い訳をされた場合の法的真相と、私たちが取るべき正しい対処法について詳しく解説します。
1. 不倫相手の「自分も請求されている」という言い訳の裏側
不倫相手がこのような発言をする背景には、大きく分けて二つの心理があります。一つは、純粋に経済的なプレッシャーから逃れたいという心理です。自分自身も配偶者から制裁を受けている状況であれば、あなたからの請求も何とかして免れたい、あるいは減額させたいと考えます。
もう一つは、あなたに対して罪悪感を薄めさせ、責任を曖昧にしようとする心理です。「自分も苦しんでいるのだから、お互い様ではないか」という空気を意図的につくり出し、支払いを拒絶・引き延ばそうとしているのです。
しかし、感情論は別として、法律の世界ではこの言い訳があなたの請求を阻む理由にはなりません。次章から、法律上の正確な関係性を整理して解説します。
2. 法律が定める「不貞慰謝料」と「求償権」の基本構造
不倫相手から「自分も請求されている」と言われたとき、私たちが理解しておくべきキーワードが「不貞の共同不法行為」と「求償権(きゅうしょうけん)」です。
共同不法行為と不真正連帯債務
配偶者と不倫相手が不貞行為(肉体関係)に及んだ場合、これは二人で共同してあなたに精神的苦痛を与えた共同不法行為となります。
法律上、被害者であるあなたに対しては、不倫をした配偶者と不倫相手の双方が、全額の慰謝料を支払う義務(不真正連帯債務)を負っています。つまり、あなたは「配偶者だけに全額請求」することも、「不倫相手だけに全額請求」することも、あるいは「それぞれの負担割合に応じて分割請求」することも、あなたの自由裁量で選ぶことができます。
求償権とは何か
不倫相手が「自分も妻から請求されている」と主張する根拠の多くは、この求償権にあります。
求償権とは、共同不法行為者の一人が被害者に対して損害賠償金の全額を支払った場合、もう一人の加害者に対して「自分の負担分を払い戻すよう請求できる権利」のことです。
例えば、慰謝料総額が200万円と決まり、不倫相手があなたに全額の200万円を支払ったとします。このとき、不倫相手は「本来、自分の責任は半分(100万円)の分担であるはずだ」として、もう一人の加害者であるあなたの配偶者に対して100万円を請求することができます。これが求償権の仕組みです。
3. なぜ相手の言い訳を真に受けてはいけないのか?
上記の仕組みを理解すると、不倫相手の「自分も請求されているから払えない」という主張の矛盾点が見えてきます。
- あなたへの支払い義務と求償権の行使は全く別の手続きであること
- 不倫相手があなたに支払うべき義務は、あなたの配偶者がどう動いているかに関係なく独立して存在すること
- 「相手も請求されているからチャラになる」という法律の規定は一切存在しないこと
不倫相手があなたの配偶者から慰謝料を請求されている事実があったとしても、それは「不倫相手とあなたの配偶者との間の内部的な清算問題」に過ぎません。あなたが不倫相手に対して持つ「慰謝料を支払え」という権利を、不倫相手が勝手に制限したり拒絶したりすることはできないのです。
もし不倫相手が「あなたの旦那(妻)からも請求されているから、そこと相殺してくれ」などと主張してきても、応じる必要はありません。あなたの配偶者に対する請求問題はあなたの配偶者との間で解決すべきものであり、不倫相手との交渉とは切り分けて考えるべきです。
4. 不倫相手が支払いを拒む場合の具体的な対処法
では、実際に不倫相手がこの言い訳を使って支払いに応じない、あるいは減額を執拗に求めてきた場合、どのように対処すべきでしょうか。実務上有効なステップを解説します。
① 配偶者側の請求状況を深追いしない
不倫相手から「お前の夫(妻)からも〇〇万円請求されているんだ!」と言われると、配偶者が本当に支払っているのか、どれくらい請求されているのか気になってしまうかもしれません。
しかし、そこに深入りする必要はありません。「私の配偶者との関係と、あなたに対する私の請求は別問題です。あなたが私に与えた精神的苦痛に対する賠償は、あなた自身が果たさなければなりません」と、冷静に線を引きましょう。
② 内容証明郵便による正式な請求
口頭やメッセージアプリでのやり取りでは、相手がのらりくらりといい加減な言い訳を続ける原因になります。弁護士名義、あるいはご自身名義で内容証明郵便を送り、法的な根拠に基づいた慰謝料請求書を正式に送達することが効果的です。
内容証明郵便には、以下の事項を明確に記載します。
- 不貞行為の事実と、それによって受けた精神的苦痛の重大性
- 請求する慰謝料の金額と、その支払期限
- 期限内に支払われない場合、法的措置(裁判上の請求など)に移行する旨
- 相手からの身勝手な言い訳や拒絶を認めない旨の意思表示
③ 示談書における求償権の放棄の取り扱い
実務上、慰謝料の示談交渉を進める中で、不倫相手から「求償権を放棄してほしい(あるいは、こちらの配偶者へ求償しないと約束してほしい)」と条件を出されることがあります。
これに応じるか否かは、あなたの離婚意思や今後の生活設計によって慎重に判断する必要があります。
- 離婚する場合: 不倫相手から一括で高額な慰謝料を受け取る代わりに、配偶者に対する求償権の放棄(または配偶者と不倫相手の間での求償権の行使を禁止する合意)を盛り込むケースが多くあります。これにより、離婚後の二人の間に新たな金銭トラブルを持ち越さないようにします。
- 離婚しない場合: 配偶者と婚姻関係を継続するのであれば、不倫相手に全額を支払わせた上で、不倫相手があなたの配偶者に対して求償権を行使すると、最終的に家庭内の家計からお金が出ていくことになり、本末転倒になる恐れがあります。そのため、求償権の放棄を条件としたり、支払額のバランスを緻密に調整したりする高度な交渉テクニックが求められます。
5. 迷ったら弁護士にご相談ください
不倫相手が「自分も請求されている」と言い訳してくるケースは、法的知識がない状態で個人間交渉を行っていると、相手のペースに巻き込まれて不当な減額に応じてしまったり、精神的に疲弊してしまったりするリスクが非常に高くなります。
特にダブル不倫の場合や、お互いの配偶者が入り乱れて複雑な請求合戦になっている場合は、ご自身だけで解決しようとせず、男女トラブルや慰謝料請求に強い弁護士に代理交渉を依頼することをおすすめします。
公的な相談窓口や弁護士会等では、依頼者さまの利益を最大限に守り、不倫相手からの言い訳や不当な減額要求を断固として排撃しながら、迅速かつ確実な慰謝料回収をサポートいたします。お一人で悩まず、まずは一度ご相談ください。