求償権の行使・ダブル不倫

ダブル不倫で「妊娠・人工妊娠中絶」が発生してしまった場合の超複雑清算

大阪弁護士会所属 弁護士 井上正人 監修

【本記事の監修者】
弁護士 井上 正人(大阪弁護士会所属 / 登録番号:第43449号 / 弁護士法人 夕陽ヶ丘法律事務所 代表弁護士)
※本記事は、民法第709条(不法行為)、第719条(共同不法行為)、第770条(離婚原因)の規定および多数の不倫・浮気慰謝料請求・減額交渉の実務実績に基づきわかりやすく解説しています。

Q ダブル不倫で妊娠・人工妊娠中絶に至った場合、慰謝料相場や中絶費用、求償権の請求はどうなりますか?
A 【慰謝料相場と法的な責任】ダブル不倫における妊娠・中絶は通常の不貞慰謝料(一般相場100万〜300万円)を大きく引き上げる重大な増額事由となり、中絶手術費用や精神的苦痛に対する損害賠償も加算されます。
【弁護士による包括的な清算】中絶に関する費用負担や配偶者への慰謝料、不倫相手間での求償権の処理は複雑に絡み合うため、後々の紛争再燃を防ぐためには弁護士を代理人に立ててすべての金銭トラブルを一つの示談書で包括的に一括清算することが不可欠です。

ダブル不倫(双方に配偶者がいる不貞関係)において、最も法的解決が困難を極めるケースの一つが、「妊娠および人工妊娠中絶」という重大な事象が発生した場合です。

単なる不倫関係の慰謝料請求にとどまらず、身体的・精神的な負担、医療費、さらには互いの配偶者への影響や求償権の問題が複雑に絡み合い、当事者間での話し合いはほぼ不可能となります。

本記事では、弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所の法律ライターが、こうした最重度被害における法的な権利関係と、適切な金銭清算の道筋について実務的な視点から詳しく解説します。

ダブル不倫における妊娠・中絶がもたらす法的責任の全体像

ダブル不倫関係において妊娠が発覚し、人工妊娠中絶を選択せざるを得なくなった場合、発生する法的な責任や金銭的請求は、大きく分けて以下の3つの軸に分かれます。

  • 配偶者に対する不貞行為の慰謝料責任:平穏な婚姻生活を破壊されたことに対する精神的苦痛の賠償。
  • 不倫相手間の妊娠・中絶に関する損害賠償責任:妊娠という結果に対する身体的・精神的苦痛、および中絶手術費用等の負担。
  • 求償権の処理と一括清算の必要性:共同不法行為に基づく求償関係の整理。

これらは単独で処理することはできず、すべての要素を一つの示談書(あるいは和解契約書)の中で包括的に解決・清算する必要があります。

不貞慰謝料の増額事由としての「妊娠・中絶」

通常のダブル不倫における慰謝料相場は、夫婦関係の破綻有無や期間によって変動しますが、おおむね100万円から300万円程度とされています。

しかし、不貞行為の結果として「妊娠」や「人工妊娠中絶」という結果が生じた場合、慰謝料額は大幅に跳ね上がります

裁判実務においても、妊娠・中絶は婚姻関係の破綻を決定づける極めて悪質な要素、あるいは被害女性に対する重大な精神的・身体的加害行為として評価されます。

  • 精神的ショックの大きさ:不倫関係から予期せぬ妊娠をし、中絶という苦渋の決断を迫られたこと自体の精神的苦痛は計り知れません。
  • 夫婦関係への致命的打撃:配偶者以外の子供を妊娠した事実、あるいはそれを理由とした中絶は、修復不可能なレベルまで夫婦間の信頼を破壊します。
  • 慰謝料の増額傾向:これらの事情が認定されると、慰謝料額が数百万円単位で増額されるケースが少なくありません。

中絶費用と身体的損害の負担問題

ダブル不倫における妊娠・中絶では、慰謝料とは別に「中絶手術費用」や「通院費」、「慰謝料とは別の身体的損害に対する賠償」が問題となります。

法律上、避妊を怠った(あるいは双方が合意の上で関係を持った)場合の妊娠について、男性側にも損害賠償責任(または費用折半等の義務)が認められるのが一般的です。

ここで厄介なのが、「誰が誰に対してその費用を請求できるのか」という点です。

例えば、妊娠した女性側は、不倫相手の男性に対して中絶費用やそれに伴う慰謝料を請求する権利を持ちます。

しかし、その女性自身も既婚者であり、相手の男性の配偶者から見れば「夫を奪い、家庭を崩壊させた加害者の女性」という立場になります。

つまり、「被害者としての請求権」と「加害者としての支払義務」が同一人物の中で同時に発生するという、極めて複雑なねじれ現象が生じるのです。

求償権の放棄とトータルでの金銭清算

ダブル不倫の解決において避けて通れないのが「求償権(きゅうしょうけん)」の問題です。

求償権とは、不倫という共同不法行為によって生じた損害賠償金を、一方の当事者が全額支払った場合に、もう一人の当事者に対して「自分の負担分(通常は2分の1)を払い戻しなさい」と請求できる権利のことです。

妊娠・中絶が絡むトラブルでは、この求償権の存在が事態をさらに泥沼化させます。

例えば、以下のようなケースを考えてみてください。

  1. 夫の不倫相手(女性)が、夫の妻に対して慰謝料を支払う。
  2. 女性は、支払った慰謝料の半額を不倫相手の夫(または自分自身の元へ)に求償しようとする。
  3. 一方で、女性は不倫相手の男性に対して「中絶費用や妊娠に関する慰謝料」を請求したい。
  4. 男性の妻は、夫の不倫相手の女性に対して高額な慰謝料を請求したい。

このような複雑な金銭のキャッチボールを個別に解決しようとすると、複数の裁判や示談交渉が並行し、時間も費用も膨大にかかります。

そのため、実務の現場では、すべての金銭的請求(不貞慰謝料、中絶費用、慰謝料、求償権の有無)をすべてテーブルに載せ、最終的な「差引支給額」あるいは「一切の請求権の放棄(清算条項)」を盛り込んだ総合示談書を締結することが不可欠となります。

泥沼化を防ぐために弁護士が果たす役割

ダブル不倫における妊娠・中絶トラブルは、当事者間での直接交渉が感情的な対立を生み、自殺未遂や脅迫、職場への暴露といった二次被害に発展するリスクが非常に高い分野です。

特に、以下のような点に直面している場合は、一刻も早く弁護士に代理交渉を依頼することを強く推奨します。

  • 配偶者に内密に解決したいが、妊娠・中絶の事実がいつ発覚するか恐怖がある。
  • 不倫相手の男性(または女性)から法外な金額の中絶費用や慰謝料を請求されている。
  • 自分の配偶者から高額な慰謝料を請求されており、求償権や中絶費用とのバランスが取れない。
  • 感情的なやり取りを一切断ち切り、法的に完璧な形で関係を清算したい。

弁護士法人公的な相談窓口や弁護士会等では、数多くの複雑な男女トラブル・不倫慰謝料問題を取り扱っております。

妊娠・中絶という極めてデリケートかつ重大な要素を含む事案であっても、依頼者様のプライバシーを厳守し、法的に最も有利かつ将来に禍根を残さない解決へと導きます。

一人で抱え込まず、まずは一度、法テラスや弁護士会の無料法律相談窓口のご利用をご検討ください。

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弁護士 井上正人

この記事の監修

弁護士 井上 正人
(いのうえ まさと)

大阪弁護士会所属(登録番号:43449)
弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表

相続や遺産分割、交通事故の賠償問題をはじめ、事業者様を狙う求人広告詐欺の被害救済やオフィス・テナント等の原状回復トラブルなど、不測の事態に直面した皆様の精神的・経済的なご負担を少しでも和らげ、正当な権利の実現と円満な解決へと導くためのサポートを徹底して行っています。

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