【弁護士による対応のポイント】受け取った現金は、あくまで請求する総額の一部である「内払い(一部弁済)」として処理する必要があります。「本件の損害賠償金の一部として受領するものであり、将来の追加請求権を留保する」旨を明記した受領書をご自身で作成するか、示談書を正式に交わす前に弁護士へご相談ください。不当な減額や免責を防ぎ、適正な金額を引き出すための増額交渉を法的にサポートいたします。
不倫・浮気問題の解決に向けた交渉を進める中で、相手方から「誠意を示したい」「これを受け取って手切れ金にしてほしい」などと言われ、その場で現金を手渡されるケースがあります。
感情的になりがちな場面で突然現金を差し出されると、つい受け取ってしまいたくなるものですが、ここで相手の言いなりになって領収書を渡してしまうと、後々取り返しのつかない不利益を被ることがあります。
本記事では、不倫相手から現金を手渡された際に注意すべき領収書の取り扱いと、示談書を交わす前の法的な防衛策について、夕陽ヶ丘法律事務所の弁護士が詳しく解説します。
現金を手渡された時に相手が「領収書」を求める心理とリスク
不倫相手がその場で現金を手渡し、さらに領収書を欲しがるのには明確な理由があります。それは、後から慰謝料の未払いや追加請求をされることを防ぎたいという保身の心理が働いているためです。
相手やその代理人が用意した領収書には、しばしば以下のような危険な文言が仕込まれていることがあります。
- 「本件に関する一切の金銭の授受が完了したことを確認する」
- 「今後、双方間において一切の債権債務が存在しないことを確認する」
- 「解決金として受領し、今後は一切の請求を行わない」
このような文言が記載された領収書にサインをしてしまうと、法律上は「示談が成立し、将来の追加請求をすべて放棄した(完全免責)」とみなされてしまう可能性が極めて高くなります。たとえ受け取った現金が数十万円程度であっても、本来請求できるはずの数百万円の慰謝料を二度と請求できなくなるおそれがあるため、十分な注意が必要です。
「手切れ金」や「解決金」の法的な位置づけ
不倫トラブルにおいて相手から支払われる金銭は、名目が「手切れ金」であれ「解決金」であれ、実質的には「精神的苦痛に対する損害賠償金(慰謝料)」の一部、あるいは全部としての性質を持ちます。
裁判所において不倫の慰謝料が認められる場合、その金額は不倫期間、精神的苦痛の度合い、婚姻関係への影響など、さまざまな要素を総合して判断されます。相手が勝手に提示した「手切れ金」の金額が、本来の適正な慰謝料額を大きく下回っていることは珍しくありません。
したがって、手渡された現金をそのまま「全額に対する領収書」と引き換えてしまうことは、適正な権利行使の道を自ら閉ざす行為に等しいと言えます。
安全に現金を受け取り、領収書を発行するための実務的対応
では、相手がどうしても現金を渡そうとしてきた場合や、すでに受け取ってしまった場合はどのように対応すべきなのでしょうか。法的に安全を確保するためのポイントは以下の通りです。
1. 「内払い(一部弁済)」としての受領を明記する
現金をその場で受け取る場合でも、領収書のただし書きや受領書面には、それが全額ではなく「慰謝料の一部(内払い)」として受領したものであることを明確に記載しなければなりません。
具体的には、領収書の余白などに「本金額は、不貞行為に基づく損害賠償請求権の一部として受領したものであり、完全な示談や免責を意味するものではない」といった一文を付記し、日付と署名・押印を行います。
2. 相手が用意した書類には絶対にその場でサインしない
相手が持参した手書きのメモや、あらかじめ印刷された受領書にその場で署名することは避けてください。たとえ急かされたとしても、「弁護士に相談してから確認のうえ対応する」「正式な示談書の締結と同時に金銭の授受を行う」と告げ、その場の署名をきっぱりと拒絶することが賢明です。
3. 受け取った現金の証拠を残す
もし現金を手渡された場合は、その金額、日付、状況を正確に記録しておきましょう。可能であれば、受領した瞬間の状況をメモに残すほか、後日のトラブルを防ぐために、受領の事実に関するメールやLINEのやり取りを残しておくことも有効です。
示談書作成前の「完全免責」を絶対に避けるべき理由
不倫問題の解決において最も重要なのは、すべての合意内容を網羅した「示談書(公正証書)」を正式に作成することです。
相手のペースに合わせてその場の現金と引き換えに曖昧な領収書を渡してしまうと、以下のようなリスクが生じます。
- 追加の慰謝料請求ができなくなる
- 示談書に盛り込むべき「接触禁止条項」や「違反時の違約金条項」が設定できない
- 相手が「すでに全額支払って解決した」と主張し、裁判等で覆すのが困難になる
慰謝料の請求権を守り、二度と不倫相手から精神的苦痛を受けないための環境を整えるためには、その場の勢いで金銭の授受や領収書のやり取りを完結させないことが鉄則です。
まとめ:現金を受け取る前に弁護士へご相談ください
不倫相手から「手切れ金」「解決金」として現金を手渡された時、その誘惑や圧力に負けて安易な領収書を渡してしまうと、被害者側が泣き寝入りせざるを得ない状況に追い込まれかねません。
現金はあくまで「一部の支払い」として慎重に扱い、将来の追加請求権を留保した上で、正式な示談交渉を進めることが不可欠です。
公的な相談窓口や弁護士会等では、不倫相手との示談交渉、適正な慰謝料算定、トラブルを防ぐための示談書作成まで、数多くの男女トラブルを解決に導いてきた弁護士が親身にサポートいたします。相手とのやり取りにお困りの際は、どうぞお早めにご相談ください。