【弁護士による確実な示談成立のサポート】相手が身分を隠すリスクを防ぎ、法的な効力と強制力を持つ示談書(執行受諾文言付き公正証書など)を確実に作成するためには、弁護士への相談・依頼が最も有効です。弁護士が代理人として交渉や身元確認を行うことで、相手の逃亡や虚偽申告を防ぎ、適正な慰謝料の回収を実現できます。
不倫や浮気のトラブルにおいて、相手方と話し合いの末に示談書(合意書)を交わす段階に至ったとき、多くの人は「これでようやく解決に向かう」と安堵されることでしょう。しかし、示談の現場では、巧妙に仕組まれた偽装工作によって、後から重大なトラブルに発展するケースが後を絶ちません。
その代表例が、相手が偽名や架空の住所を使って示談書に署名・捺印をするという手口です。このリスクを防ぐために絶対に欠かせないのが、示談書調印前の身分証(特に運転免許証原本)の確認とコピーの保管です。
本記事では、なぜ身分証の確認が必要不可欠なのか、偽装された場合にどのようなリスクが生じるのか、そして実務上どのように身分確認を行うべきかについて、夕陽ヶ丘法律事務所の弁護士が詳しく解説します。
なぜ示談書調印前に身分証の確認が必要なのか
不倫の慰謝料請求では、当事者間での話し合い(示談)によって解決を図ることが多くあります。弁護士を介さずに直接交渉したり、相手が身元を隠そうとしたりする状況下では、相手から提示された名前や住所をそのまま信じてしまう危険性があります。
1. 偽名や虚偽の住所による「行方不明」リスク
相手にとって、不倫の事実や高額な慰謝料の支払いは、周囲に知られたくない、あるいは金銭的負担を逃れたい現実です。そのため、悪質なケースでは、以下のような偽装が行われます。
- 全くの他人になりすまして署名する(偽名)
- すでに引っ越した古い住所や、存在しない架空の住所を記載する
- 連絡先として使い捨ての携帯電話番号(プレジペイドや格安SIM)のみを教える
2. 強制執行(差し押さえ)の前提条件としての正確な情報
示談書に「慰謝料を分割で支払う」「一括で支払わない場合は直ちに給与や預貯金を差し押さえる」といった条項を盛り込むことがよくあります。 しかし、裁判所を通じて給与の差し押さえなどの強制執行を行うためには、相手の「正確な氏名」と「住民票上の現住所」が特定されていなければなりません。架空の氏名や住所が記載された示談書では、法的手段に移行したくても、裁判所から相手を特定できず、手続きが進められないという致命的な事態に陥ってしまいます。
対面での調印における身分証確認の実務手順
示談書を安全に交わすためには、メールや郵送だけのやり取りではなく、できれば対面(または信頼できる代理人同士の場)で調印を行うことが理想です。その際、以下の手順を必ず踏むようにしてください。
1. 運転免許証などの「原本」を提示させる
示談書にサインをもらう直前、またはその場に同席したタイミングで、相手に身分証明書の提示を求めます。
- 最優先:運転免許証(原本):写真付きであり、現住所の裏書変更なども確認しやすいため最も確実です。
- 代替手段:マイナンバーカード、パスポート、住民基本台帳カードなど:顔写真付きの公的証明書を求めましょう。健康保険証単体は顔写真がなく、偽造・なりすましのリスクがあるため注意が必要です。
2. 身分証の記載事項を細かくチェックする
提示された身分証を受け取り、以下のポイントをご自身の目でしっかりと確認します。
- 氏名:示談書に記載されている氏名と一字一句一致しているか
- 住所:示談書の前文や署名欄に記載されている住所と完全一致しているか(裏面に変更記載がある場合はそこも確認する)
- 有効期限:期限切れの身分証ではないか
- 外観の不自然さ:写真の貼り替え跡や不自然な加工がないか
3. 身分証の両面をコピー(または撮影)して保管する
確認ができたら、その場で身分証のコピーを取らせてもらうか、スマートフォン等で鮮明に撮影させてもらいます。
- 表面だけでなく、住所変更の記載がある場合は裏面も必ず撮影・コピーします。
- 取得した画像やコピーは、示談書本体とともに厳重に保管してください。万が一のトラブルの際に、相手の法的責任を追及するための貴重な証拠となります。
相手が身分証の提示を拒んだ場合の対応と注意点
もし、あなたが「身分証を確認させてほしい」と求めた際、相手が様々な理由をつけて拒む場合は、非常に警戒すべき状況です。
拒否される主な言い訳とリスク
- 「今日は財布を忘れてしまったので、免許証がない」 ⇒ その日の調印は見送り、後日改めて身分証を持参して再会する日に延期すべきです。
- 「プライバシーだから見せられない」 ⇒ 慰謝料を支払う当事者同士において、お互いの身元を確認することは最低限の権利であり義務です。これを拒むのは不自然です。
- 「信用していないのかと言われた」 ⇒ 感情論に流されてはなりません。契約や示談において「信用」ではなく「客観的な証拠」がすべてです。
ここで相手の勢いに押されて身分証の確認を怠ってしまうと、後々大きな不利益を被るのはあなた自身です。「身分証を確認できないのであれば、本日の示談書への調印は見送ります」とはっきりと断る勇気を持ちましょう。
公正証書を作成する場合のメリット
確実かつ安全に慰謝料を回収するための方法として、公証役場で「公正証書」を作成するという選択肢もあります。
公正証書を作成する際には、公証人が厳格に当事者の本人確認(印鑑登録証明書や顔写真付き身分証明書の持参が必須)を行います。そのため、偽名や虚偽の住所で書類が作成されるリスクを完全に排除することができます。 さらに、金銭債権に関する公正証書には「強制執行認諾文言」を付けることができ、万が一相手が支払いを怠った際、裁判を起こさずに即座に給与や財産の差し押さえ手続きに入る強烈な法的効力を持ちます。
示談書の作成に不安がある場合や、相手の身元に少しでも不審な点がある場合は、初めから弁護士に代理人を依頼するか、公正証書の作成を視野に入れた交渉を行うことを強くお勧めします。
まとめ
不倫・浮気の慰謝料請求における示談書調印は、トラブルを円満に解決するための最終関門です。しかし、どれほど有利な条件で示談書に合意したとしても、そこに記載された相手の情報が偽りであれば、絵に描した餅となってしまいます。
調印前のわずかな手間に見える「運転免許証原本の確認とコピーの保管」こそが、あなたの権利と回収の安全を守るための最大の防御策です。相手のペースに流されず、冷静かつ毅然とした態度で身分確認を徹底してください。
もし、相手が身分を明かさない、交渉が平行線である、あるいは確実に回収できる示談書を作成したいとお悩みの場合は、一人で抱え込まず、男女トラブルや慰謝料請求に精通した弁護士へお気軽にご相談ください。公的な相談窓口や弁護士会等では、依頼者様の平穏な日常を取り戻すため、示談交渉から法的実行力の確保までトータルでサポートいたします。