【請求のポイントと注意点】作業歴を証明する就歴資料や、病名を確定する医療カルテなどの証拠収集が重要となります。また、提訴期限(除斥期間)が迫っている場合もあるため、少しでも不安がある方は、時効に注意しながら早めに専門の弁護士へ無料診断を相談することをおすすめします。
ビルや商業施設、高層マンションなどに欠かせないエレベーターやエスカレーターなどの昇降機。その設置や保守点検、リニューアル工事を担ってきたエレベーター設置工や昇降機エンジニアの皆様の中には、過去の作業環境が原因で健康被害に直面されている方が少なくありません。
特に、建築物の骨組みや壁面に施工された吹付アスベストの直近での作業は、極めて高いリスクを伴うものでした。ここでは、閉ざされた昇降路(シャフト)という特殊な空間における石綿ばく露の実態と、国や企業に対して請求できる法的な救済制度について詳しく解説します。
エレベーターシャフト(昇降路)における石綿ばく露の実態
エレベーターの設置や調整作業は、建物がまだ完全に完成していない、あるいは躯体工事の最終段階で行われることが多くあります。
密閉された空間と換気不足
昇降路(シャフト)は、コンクリートや鉄骨で囲まれた縦長の空間です。窓などがなく、完成前であれば十分な換気システムも稼働していないため、気流が淀みやすい構造をしています。この空間の壁面や梁、天井などに耐火・断熱目的でアスベストが吹き付けられている場合、その周囲で作業を行うだけで、空気中に漂う微細な石綿繊維を継続的に吸い込んでしまう環境にありました。粉じんを伴う過酷な作業内容
エレベーターのガイドレールや機械装置をシャフト内に固定するため、コンクリート壁や鉄骨への穴あけ(アンカー打ち)、削孔、溶接といった作業が行われます。これにより、すでに壁面に吹き付けられていたアスベストが削り取られ、周囲に大量に飛散することになりました。また、古い昇降機の撤去やリニューアル工事の際には、経年劣化したアスベスト材を直接解体・破砕する作業も伴い、非常に高濃度のばく露を余儀なくされました。エレベーター設置工が直面する健康被害と潜伏期間
アスベスト(石綿)の最大の特徴は、その非常に長い潜伏期間にあります。
- 中皮腫: 胸膜や腹膜などに発生する悪性腫瘍で、アスベストばく露から数十年の潜伏期間を経て発症することが多いのが特徴です。
- 肺がん: 石綿を吸入した肺の組織が線維化し、がん化する疾患です。喫煙歴の有無に関わらず発症リスクが高まります。
- 石綿肺(アスベスト肺): 肺が線維化する疾患で、息切れや咳などの症状を引き起こします。
- 良性石綿胸水・びまん性胸膜肥厚: 胸膜に液体が溜まったり、胸膜全体が厚く硬くなったりする病気です。
現役時代には何ともなかった方でも、数十年の時を経て突然激しい息切れや胸の痛みなどの症状が現れるケースが後を絶ちません。
国や企業に対する法的な救済・補償制度
過去に建築現場でアスベストにさらされ、健康被害を受けられた方に対しては、法的な救済制度が用意されています。
1. 国に対する建設アスベスト給付金請求
平成の終わりから令和にかけて、最高裁判所において国の責任が明確に認められたことを受け、「建設アスベスト給付金制度」が創設されました。- 対象者: 昭和40年10月1日から平成13年5月1日の間に、一定の屋内作業(建設作業)に従事し、石綿による一定の健康被害(中皮腫、肺がん、石綿肺等)を発症された方、およびそのご遺族。
- 特徴: 一定の要件を満たしていれば、国に対して直接、国から給付金を請求することができます。
エレベーター設置工事は、多くの場合は建築工事の一環として、あるいは内装・設備工事のカテゴリに含まれるため、この建設アスベスト給付金の対象となる可能性が高くなります。
2. 元請企業への損害賠償請求(和解交渉・裁判)
国からの給付金だけでなく、当時の元請企業や一次下請け企業に対して、安全配慮義務違反を理由とした損害賠償請求を行うことも可能です。- 責任追及のポイント: 元請企業には、作業現場全体の安全を管理し、労働者がアスベストを吸い込まないように防塵マスクの着用を徹底させたり、適切な防護措置や換気を行わせたりする義務がありました。
- 訴訟と和解: 企業側の責任が認められる場合、裁判や交渉を通じて適切な賠償金を獲得できるケースがあります。
給付金や損害賠償請求を進めるための重要なポイント
手続きをスムーズに進め、正当な補償を受け取るためには、いくつかの重要なポイントがあります。
就労歴や作業環境の立証
どのようなビルや現場で、いつ頃、どのような作業に従事していたかを証明することが求められます。- 雇用契約書や給与明細、源泉徴収票
- 作業日報、安全書類(施工体制台帳、作業員名簿など)
- 当時の同僚や元請け担当者による陳述書(証言)
手元に当時の資料が残っていない場合でも、所属していた会社や組合の記録、現場の施工実績などから調査・立証できる場合があります。
医療記録の確保
医師による確定診断書や、これまでの検査データ、画像診断(CTやレントゲンなど)の記録が必要です。病院に対してカルテの開示請求を行うことで、病名や病状の確実な証明が可能になります。エレベーター設置工のアスベスト被害は法律事務所にご相談ください
昇降路という特殊な空間での作業は、証拠の収集や法的因果関係の証明において専門的な知識が必要とされるケースが少なくありません。
夕陽ヶ丘法律事務所では、建設アスベスト問題や職業性ばく露に関する豊富な経験を持つ弁護士が、ご相談者様の状況を丁寧にヒアリングいたします。
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