【弁護士を通じた適切な対処と法的措置】本人との直接交渉が困難な場合でも、弁護士を代理人に立てて書面による冷静な交渉を継続することが最も効果的です。相手が不当に連絡を拒絶し続ける状況では、示談交渉から訴訟提起などの法的措置へ移行することで、法的責任を正当に追及し泣き寝入りを防ぐことが可能です。
不倫や浮気の慰謝料を請求した際、相手から突然「現在精神科に通院しており、ショックで病んでいるので交渉には応じられない」「これ以上連絡をすると体調が悪化する、自殺する」などと言われ、連絡を絶たれてしまうケースがあります。
被害者側としては、相手の体調を気遣う一方で、「本当に病気なのだろうか」「このまま逃げられてしまうのではないか」と強い不安やフラストレーションを感じることでしょう。
結論から申し上げますと、精神科に通院しているという事実だけで、不貞行為(不倫)によって生じた損害賠償責任が免除されるわけではありません。
本記事では、精神疾患を盾に交渉から逃れようとする相手への正しい法的対処法や、実務上における注意点を夕陽ヶ丘法律事務所の弁護士が詳しく解説します。
精神科通院を理由にした交渉拒否の法的実態
不倫の慰謝料請求を受けた側が、過度なストレスから一時的にメンタル不調に陥るケースは少なくありません。しかし、法的な観点から見ると、いくつかの重要なポイントが存在します。
- 責任能力の有無: 精神疾患を理由に慰謝料の支払い義務が免除されるのは、ごく一部の「重度かつ責任無能力と認められる精神障害」がある場合のみです。日常会話や社会生活が送れている一般的なうつ病や適応障害などの診断では、責任能力が否定されることはまずありません。
- 「交渉に応じない」と「責任がない」は別問題: 仮に本当に精神的な負担から一時的に連絡が取れない状態であったとしても、「不貞行為を行ったという事実」や「慰謝料を支払うべき法的義務」そのものが消滅するわけではありません。
- 同情を引くための口実の可能性: 実務上、「精神的に病んでいる」「これ以上追い詰めるとどうなるか分からない」という言葉は、プレッシャーを和らげたり、支払いを免れたりするための心理的駆け引き(いわゆる逃避戦術)として使われるケースが非常に多く見られます。
相手が精神疾患を主張して逃げたときの具体的な対処法
相手が通院を理由に直接の話し合いを拒んできた場合、感情的に何度も連絡を入れたり、自宅や職場へ押しかけたりするのは避けるべきです。かえって「ストーカー行為だ」「脅迫された」などと逆手に取られ、形勢が不利になる恐れがあります。
以下のような冷静かつ法的に正しいアプローチに切り替えることが重要です。
1. 弁護士を代理人として立てる
被害者本人が直接連絡を取ろうとすると、相手は「怖い」「病気が悪化する」といった理由をつけて徹底的に拒絶し続けます。しかし、弁護士が代理人として通知書や書面を送付することで、相手の態度は一変することが多々あります。
弁護士からの正式な書面には、感情的なやり取りではなく、法的な根拠に基づく請求が記載されています。相手も「弁護士が出てきた以上、無視し続けることはできない」と現実を受け入れざるを得なくなるケースがほとんどです。また、相手に家族や配偶者がいる場合、その代理人(弁護士など)を通じて交渉窓口を一本化することも可能になります。
2. 書面(内容証明郵便など)による冷静な交渉の継続
電話やSNSのメッセージでのやり取りが困難であるならば、記録が確実に残る「内容証明郵便」を活用した書面交渉に移行します。
- 精神科に通院中であるという主張をいったん受け止める姿勢を見せつつ、法的責任が免除されるわけではない点を冷静に伝える
- 相手本人が直接対応できないのであれば、親族や弁護士などの代理人を通じて回答するよう求める
- 回答期限を明確に設定し、期限内に連絡がない場合は法的手段(訴訟提起)へ移行する旨を予告する
このように、感情を排したビジネスライクな書面を送付することで、相手の逃げ道を徐々に塞いでいくことができます。
3. 状況に応じて裁判(訴訟)の手続きへ移行する
何度書面を送っても、精神科への通院や体調不良を口実に一切の話し合いに応じようとしない場合は、これ以上任意での交渉を続ける実益が薄れます。その段階に至れば、裁判所を通じて慰謝料請求訴訟を提起するのが最も確実な解決手段となります。
裁判になれば、相手がどのような主張をしようとも、原告側(被害者側)が不貞の証拠(LINEのやり取り、写真、ホテルに出入りする記録など)を提出し、裁判所が法的な判断を下します。たとえ相手が裁判に出頭しなかったり、医師の診断書を出してきたりしたとしても、裁判所が正当な理由と認めない限り、欠席裁判のまま原告の請求が認められる可能性が高くなります。
相手が「自殺をほのめかす」場合の重大な注意点
精神科通院の主張の中でも、特に注意が必要なのが「これ以上追うなら死んでやる」「自殺する」といった自傷・他害の予告を伴うケースです。
このような言動をされた場合、請求者側としては非常に心理的プレッシャーを感じ、「自分が追い詰めたのではないか」と罪悪感を覚えてしまうことがあります。しかし、これらは多くの場合、慰謝料の支払いを逃れるための心理的脅迫(モラハラ的アプローチ)として使われる常套手段でもあります。
もし本当に自殺の危険性が切迫していると感じた場合は、ご自身で対応しようとせず、以下の対応をとってください。
- 警察や救急への通報: 自殺をほのめかすメッセージや連絡があった場合は、直ちに最寄りの警察署や救急に通報し、相手の安全確保を公的機関に委ねてください。
- 個人的な接触の完全遮断: 脅迫まがいの言動をする相手と個人的に連絡を取り合うことは、精神的にも非常に危険です。連絡はすべて弁護士を介して行う体制を徹底してください。
- 脅しに屈して権利を放棄しない: 「死ぬ」と言われたからといって、正当な慰謝料請求権を諦める必要は一切ありません。法律のプロである弁護士にすべてを委ね、安全かつ毅然とした対応をとりましょう。
まとめ:精神科通院を言い訳にさせないために
不倫・浮気の慰謝料請求において、相手が「精神科に通院中である」と主張して交渉を拒む行為は、責任逃れのための時間稼ぎであることが少なくありません。
どれほどメンタル不調を訴えようとも、他人に精神的苦痛を与えたという不法行為の事実は消えません。ご自身一人で悩み、相手の言葉に翻弄されて泣き寝入りしてしまう前に、まずは豊富な解決実績を持つ弁護士にご相談ください。
公的な相談窓口や弁護士会等では、相手がどのような言い訳をして交渉を拒んできた場合でも、法的な手続きと適切な代理交渉を通じて、依頼者様の正当な権利と平穏な日常を取り戻すサポートを全力で行っております。お一人で抱え込まず、どうぞお気軽にご相談ください。