【適切な対処法と弁護士相談のメリット】和解案は強制ではないものの、拒否すれば相手の思う通りになるわけではありません。相手が感情的になって和解を拒んでいる場合、弁護士を代理人に立てて法的根拠に基づいた説得や、判決リスクの冷静な提示を行うことで、早期かつ妥当な解決へと導くことが可能です。
不倫・浮気の慰謝料請求において、裁判(訴訟)の手続きが進むと、裁判官から双方に対して「和解案」が提示されることがよくあります。このとき、請求する側または請求された側(不倫相手)が「裁判所からの和解案に納得がいかない」として拒否するケースが存在します。
和解はあくまで双方が合意して初めて成立するものであるため、一方が拒否すれば強制することはできません。しかし、和解を拒否したからといって、そのまま裁判が自然消滅したり、自分の思い通りの結果になったりするわけではありません。
本記事では、裁判所から提示された和解案に不倫相手が納得せず拒否した場合に何が起こるのか、その後の手続きや判決への移行リスク、そしてどのように対応すべきかについて詳しく解説します。
裁判所が提示する「和解案」とは何か
裁判の途中で、裁判官がこれまでの主張や証拠を踏まえて「このあたりで和解してはどうか」と落とし所を示すことを、和解勧試(わかいかんし)と呼びます。
裁判官は、客観的な証拠やこれまでの裁判実務の傾向を考慮し、双方にとって妥当だと思われる金額や条件を和解案として提示します。この和解案には、以下のようなメリットがあります。
- 判決よりも早期に紛争を解決できる
- 一括払いではなく分割払いの条件を盛り込みやすい
- 双方が譲歩するため、精神的な負担を軽減できる
- 判決のような勝ち負けの明確な優劣をつけずに終わらせることができる
しかし、請求された側の不倫相手からすれば「提示された金額が高すぎる」「そもそも不倫の責任をそんなに負いたくない」といった理由から、この和解案に納得できないと感じることが少なくありません。
和解案を拒否するとどうなるのか
不倫相手が「和解案に納得がいかない」として拒否した場合、手続きはどのように進むのでしょうか。結論から言うと、和解が不成立になった場合、裁判は「判決」に向けて進行することになります。
具体的には、以下のようなプロセスをたどります。
- 審理の終結(結審): これ以上双方の主張や新しい証拠が出尽くしたと裁判官が判断した場合、裁判の審理が締め切られます。
- 判決の言い渡し: 裁判官がこれまでのすべての証拠と主張に基づき、最終的な法的判断を下します。これが「判決」です。
- 判決内容の確定: 裁判所が命じた慰謝料の金額や支払期限が正式に決定され、双方はこれに従う義務が生じます。
つまり、和解案を拒否したからといって、慰謝料の支払義務が免除されたり、請求額が自動的に下がったりすることはありません。むしろ、和解案の段階よりも厳しい結果を招くリスクが高まります。
裁判官による「判決」に進むリスクとは
和解案に納得いかずに判決へと進む場合、以下のような重大なリスクが生じます。
1. 和解案よりも高額な支払いを命じられるリスク
裁判官が提示する和解案は、お互いの歩み寄り(減額など)を期待して調整された数字であることが少なくありません。しかし、判決となれば裁判官は法律と証拠に基づいて厳格に金額を算定します。そのため、和解案で提示されていた金額よりも、最終的な判決での認容額(命じられる金額)の方が高くなるケースは十分にあり得ます。
2. 遅延損害金や訴訟費用の負担が発生する
判決では、慰謝料の元本に加えて、不倫発生時(または請求時など)からの遅延損害金の支払いが命じられるのが一般的です。さらに、裁判にかかった費用(訴訟費用)についても、原則として敗訴した側(または勝訴割合に応じた割合)が負担することになります。これにより、総支払額がさらに膨れ上がる可能性が高くなります。
3. 分割払いが認められにくい
裁判上の和解であれば、双方の合意のもとで「毎月3万円ずつの分割払い」といった柔軟な条件を設定することが可能です。しかし、裁判所の判決では、原則として「一括払い」が言い渡されます。分割払いを希望しても、判決主文にそれが強制的に盛り込まれることは基本的にないため、一括で支払えない場合は別途差し押さえのリスクに怯えることになります。
4. 判決確定後の強制執行リスク
判決が出て確定したにもかかわらず不倫相手が支払いに応じない場合、原告側は強制執行(差押え)の手続きに移行することができます。給与の差し押さえや銀行口座の凍結、預貯金や不動産の差押えなどにより、社会的信用を失うリスクが一気に高まります。
納得いかない相手に対してどう対応すべきか
もしご自身が請求する側であり、相手が和解案に納得いかずに拒否している場合、あるいはご自身が不倫相手の立場で和解案に納得がいかず拒否を考えている場合、どのような姿勢が求められるでしょうか。
請求する側の視点
相手が和解案に納得せず、どうしても判決を望むのであれば、無理に和解に応じる必要はありません。そのまま裁判官による判決を下してもらうよう手続きを進めることになります。ただし、判決で勝訴するためには、不倫の事実や精神的苦痛を裏付ける確実な証拠(LINEのやり取り、写真、音声など)が不可欠です。しっかりと証拠が揃っている自信があるのであれば、判決によって正当な権利を認めてもらうことが有効です。
請求された側(不倫相手)の視点
もしあなたが不倫相手の立場で「裁判所の和解案に納得がいかない」と考えているなら、感情的に拒否する前に、なぜ納得がいかないのかを法的根拠に基づいて主張できているかを見直す必要があります。
- 請求された慰謝料の金額が、過去の裁判例に比べて法外に高額ではないか
- 不倫関係の期間や婚姻関係への影響度について、誤った事実が認定されていないか
- すでに対象の配偶者から十分な慰謝料が支払われている(または求償権の問題)点について主張できているか
単に「払いたくない」「高すぎる気がする」という感情論だけでは、裁判官は和解案からさらに金額を下げることはありません。減額を勝ち取るためには、専門的な法律知識と説得力のある主張が不可欠です。
弁護士に相談・依頼するメリット
裁判所での和解や判決をめぐる問題は、個人の判断だけで進めると非常に大きなリスクを伴います。法的な妥当性を見極め、望む結果に近づけるためには、法律の専門家である弁護士のサポートが極めて有効です。
- 和解案の妥当性判断: 提示された和解案が相場通りなのか、拒否して判決に持ち込むべきかを客観的にアドバイスできます。
- 法的主張の組み立て: 減額を求める場合や、逆に請求額を正当に認めさせるために、裁判所に響く書面作成や主張を行います。
- 代理交渉による負担軽減: 相手や裁判所との煩雑なやり取りをすべて弁護士が代行するため、精神的なストレスを大幅に軽減できます。
裁判所からの和解案に納得がいかずにお悩みの方、または相手が和解を拒否して裁判が長期化しそうな方は、一人で抱え込まず、早めに法テラスや弁護士会等の公的相談窓口へご相談ください。ご状況に合わせた最適な解決策をご提案いたします。