【法廷での対応と事前対策】事前に提出した陳述書の内容をベースに、不貞行為の経緯や婚姻関係の破綻有無について厳しく追及されるため、感情的にならず冷静かつ一貫性のある回答が不可欠であり、裁判官に与える印象や慰謝料の増減額を左右するため事前に弁護士と綿密なリハーサルを行うことが極めて重要です。
不倫の慰謝料請求訴訟において、双方の主張が食い違っている場合や、より詳細な事実確認が必要と判断されたとき、裁判の終盤に「証人尋問(しょうにんじんもん)」が実施されます。
相手の奥さん(原告)側から証人尋問の申し立てがなされると、ご自身も法廷に立ち、裁判官や双方の弁護士からの質問に直接答えなければなりません。
初めて裁判を経験される方にとって、法廷という独特の緊張感の中での尋問は非常に不安なものです。
そこで本記事では、証人尋問が行われる際の当日の具体的な流れや、法廷での振る舞い方、そして事前に準備すべきポイントについて詳しく解説します。
証人尋問とはどのような手続か
証人尋問とは、裁判官が当事者や関係者から直接話を聞き、事件の真相を解明するための法廷手続です。
書面(準備書面や証拠書類)のやり取りだけでは見えてこない、当時の状況、不倫関係の深さ、精神的苦痛の程度、あるいは婚姻関係がすでに破綻していたか否かなどを、直接の質疑応答を通じて明らかにしていきます。
不倫裁判においては、主に以下の人物が証人として法廷に立ちます。
- 原告(不倫された妻):受けた精神的苦痛や家庭内の状況について述べる
- 被告(あなた):不倫に至った経緯、不貞行為の回数、相手の婚姻関係の認識について述べる
- 不倫相手の男性(夫):夫婦関係の実態やあなたとの関係性について述べる(※ケースによる)
証人尋問当日を迎えるまでの準備
証人尋問の当日、いきなりぶっつけ本番で質問されるわけではありません。通常、期日の数週間から1ヶ月ほど前に、当事者や証人は「陳述書(しんじゅしょ)」という自身の主張をまとめた書面を裁判所に提出しています。
当日は、この陳述書の内容に沿って尋問が進められます。
また、弁護士がついている場合は、事前に事務所などで「擬似尋問(リハーサル)」を行います。
本番で想定される質問や、相手方弁護士からの意地悪な質問(誘導尋問など)に対してどのように受け答えすべきかをトレーニングし、冷静に対応できるように準備を整えて臨みます。
証人尋問当日の具体的な流れ
証人尋問が実施される期日の当日は、おおむね次のようなタイムスケジュールと流れで進行します。
1. 法廷への集合と待機
指定された裁判所の法廷、または控室に時間までに到着します。
証人尋問を行う際は、他の事件の関係者が傍聴席に座っている公開の法廷で行われるのが原則です。
自分の番が来るまでは、別室や廊下などで待機するように指示されることが一般的です。
他の人の尋問を聞くことで緊張が増してしまうのを防ぐため、当事者は基本的に「他の人の尋問中は入室できない(隔離される)」ルールになっています。
2. 宣誓と着席
自分の順番が来ると呼名され、法廷内に入り、証言台の前に立ちます。
最初に、良心に従って真実を述べ、もし虚偽を述べた場合には偽証罪に問われる旨が記載された「宣誓書」を朗読し、署名・押印します。その後、証言台の椅子に座ります。
3. 主尋問(しゅじんもん)
まずは、あなたを尋問する側の弁護士(またはあなた自身の代理人弁護士)から質問が行われます。これを「主尋問」と呼びます。
主尋問では、事前に提出した陳述書の内容を確認しつつ、あなたが自分の言葉でしっかりと事実を説明できるように、比較的答えやすい質問から順番になされます。
弁護士との事前の打ち合わせ通りに、落ち着いてハッキリと回答することが大切です。
4. 反対尋問(はんたいじんもん)
主尋問が終わると、今度は相手方(奥さん側)の弁護士からの質問である「反対尋問」が行われます。
反対尋問の目的は、あなたの証言の矛盾点をつくことや、相手に有利な証言を引き出すことです。
時にはプレッシャーを感じるような厳しい口調や、答えにくい質問が飛んでくることもありますが、感情的になって怒り出したり、嘘をついたりしてはいけません。
冷静に、事実だけを端的に答えることが何よりも重要です。
5. 裁判官からの質問(補充尋問)
主尋問と反対尋問が一通り終わると、裁判官(裁判長および陪席裁判官)から直接質問を受けることがあります。
裁判官の質問は、事件の核心や、判決を下す上で判断に迷っている部分をクリアにするために行われます。
裁判官は中立的な立場で疑問点を解消しようとしているため、誠実に、正直に回答するようにしてください。
6. 尋問の終了と退廷
すべての質問が終了すると、「お疲れ様でした。これで退廷して結構です」と裁判長から告げられます。
頭を下げて法廷から退出します。
すべての当事者・証人の尋問が終わった時点でその日の期日は終了となり、その後、判決期日や最終弁論期日へと進んでいきます。
法廷で証言する際の重要な心構え
証人尋問の成否は、慰謝料の金額や裁判の結論に少なからず影響を与えます。法廷で失敗しないために、以下のポイントをしっかりと心に留めておきましょう。
- 感情的にならない:相手方弁護士から挑発的な質問をされても、怒鳴ったり泣き出したりせず、ポーカーフェイスを保ちましょう。感情的になると裁判官からの心証が悪くなります。
- 分からないことは「分からない」と答える:記憶にないことや、曖昧な事項について適当に答えると、後で嘘をついたと指摘されて信用を失います。「記憶にございません」「覚えていません」と正直に答えることも大切です。
- 質問を遮らず、最後まで聞いてから答える:弁護士が質問している途中で被せるように話し始めると、正確な記録が残せません。質問が完全に終わってから、一呼吸置いて話し始めましょう。
- 結論から簡潔に話す:ダラダラと長い言い訳をするよりも、「はい」「いいえ」または結論から端的に述べた上で、必要に応じて理由を付け加える方が説得力が増します。
弁護士のサポートが不可欠な理由
証人尋問は、法律知識だけでなく、法廷特有の空気感への慣れや、的確な受け答えの技術が求められる非常に高度な手続です。
相手方弁護士の鋭い反対尋問に対し、一人で丸腰で立ち向かうのは極めて大きな負担となりますし、不用意な発言をしてしまい、結果的に不利な状況を招くリスクもあります。
公的な相談窓口や弁護士会等では、訴訟代理人としてご依頼者様を徹底的にサポートいたします。
事前の綿密な陳述書の作成から、本番を想定した実践的なリハーサル、そして当日の法廷での同席・フォローに至るまで、ご依頼者様が精神的なプレッシャーを最小限に抑えて臨めるよう全力を尽くします。
相手の奥さんから裁判を起こされ、証人尋問を控えて不安を感じている方は、一人で悩まずに、早い段階で当事務所の弁護士までご相談ください。